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『弟・異聞 』〜素に戻った五郎様と、時空を越えた共犯者たち〜  作者: 滝丸


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【コメディ回:天下一「五郎」愛好家決定戦 —— 譲れない想い、壊れた算盤、そして聖母】

場所:浜松城・秘密の会議室(という名のカオス空間)

数正:「ええい、控えよ! 五郎殿をあの泥の中から拾い上げ、一流の『家康』へと育て上げたのはこの私だ! 五郎殿の癖から、右足の親指の角度まで知り尽くしているのは、私を置いて他におらぬ!」

忠勝:「甘いな、数正殿。戦場で五郎殿の震える背中を支え、三方ヶ原の泥の中で共に死を覚悟したのはこの俺だ! 泥にまみれた五郎殿の『生』の匂いを知る者こそ、真の理解者ではないか!」

阿茶:「お黙りなさい、むさ苦しい男たちは。私は五郎殿の『ヘタレな瞬間』をすべて動画……ではなく、この目に焼き付けているの。真っ赤になって照れる五郎殿、カボチャに目を輝かせる五郎殿。そのギャップを愛でる権利は私にこそあるわ!」

正信:「ふふふ、皆さん熱いですな。ですが、五郎殿という『史上最大の嘘』を維持するための計算式を組み立てているのはこの私。五郎殿の価値を、一文の狂いもなく弾き出せるのは私の算盤だけ……(パチパチ)」

天海(三成):「……非合理的ですな。そもそも五郎殿に『アイデンティティ』を肯定し、友情という名の論理的裏付けを与えたのは私だ。私の愛(?)を、過小評価してもらっては困る」

「なんだと!?」「私の方が!」「いや、俺が!」

部屋の空気は一触即発。忠勝が槍に手をかけ、数正が説教の準備を始めた、その時だった。

部屋の隅から、ふわりと白檀の香りが漂い、お愛が静かに立ち上がった。

騒いでいた一同が、その圧倒的な「透明感」に思わず口をつぐむ。

お愛は、困った子供を見るような優しい微笑みを浮かべ、鈴を転がすような声で言い放った。

「皆様、お熱心ですこと。……ですが、残念ながら優勝はわたくしにございます。だって……わたくしは出会ったあの日から、この世の誰一人として見ていなかった『五郎様』だけを、ずっとお慕いしておりますもの」

「…………っ!!」

一同、沈黙。

「家康として」愛でる者、「影武者として」評価する者、「親友として」肯定する者。そのすべてを、「最初から一人の男として見ていた」というお愛の純度100%の愛が、一瞬で粉砕した。

正信は算盤を落とし、数正は説教を忘れ、忠勝は膝をつき、天海は「……論理的に、勝てん」とタブレットを閉じた。

そこへ、廊下からガチャリと音がして、何も知らない五郎がひょっこりと顔を出した。

手には何やら、泥のついた得体の知れない草を握りしめている。

「おーい、みんな。何をそんなに暗い顔で集まっているんだ? 数正、そんなことより見てくれ! 城の裏手で、『根っこが二股に分かれた珍しい大根』を見つけたんだ! これを煎じれば、兄上の温泉好きが治るかもしれんぞ!」

「………………。」

部屋に満ちていた「愛の重低音」が、五郎の「野菜トーク」によって一瞬でスカスカの無音に変わる。

お愛はクスクスと笑いながら歩み寄り、五郎の泥の手を優しく取った。

「まあ、素敵ですね五郎様。……皆様、五郎様の愛するものは、歴史でも天下でもなく、どうやら『根っこの二股の大根』だったようですわ」

「え? なんだ、お愛。大根、嫌いだったか?」

五郎のポカンとした顔を眺めながら、共犯者たちは一斉に溜息をつき、「……やっぱり、この男(五郎)のことは、お愛様にしか任せられん」と、心の中で白旗を上げたのであった。

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