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わたしのしあわせ  作者: mikataka
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わたしのしあわせ 50

土曜日の部活は朝から。せっかくだからこうちゃんを隣に乗せて、道を教えてもらいながら行ったの。その日は、上がオレンジのポロシャツに下がスウェットのロングスカート。道場に行くとまず神棚にお辞儀。もう何人か来てて、この前の加藤君もいたの。みんな大きな声で「おはようございます!」って挨拶してくれたの。

こうちゃんがみんなに「いつもより早くない?」

加藤君「だって美佳さんが来るんだから、いつもよりキレイにしなきゃ」

お姉さん照れるよ。

遅れて先生が来て「おはようございます、今日はありがとうございます」

私「いえいえ、こちらこそお招き頂いて、ありがとうございます」

先生「今日はみんながいつもどんな稽古してるか見てあげて下さい、激しくて引くかもしれませんけど」

私「わかりました、覚悟して拝見します」

みんな道着に着替えて防具付けて、準備体操。

部長「アキレス腱しっかり伸ばせよー」

そのあと素振り、準備体操だからそれほど多くはなかったけど、みんな軽く汗が出る程度は動いてた。

そのあと整列して正座、列と向かい合って先生も正座、黙想の後部長の号令で正面、先生、お互いの順番で床に手をついて礼。

先生「今日はお客様も見学に来て下さってます。だからといってりきむ事なく、ケガに気をつけて、気合い入れるように。今日の特別メニューは『円陣』です、以上」

みんな声を揃えて

「はい!」


部長の「面付け」の号令でみんな面を付けて立ち上がる。

さすが、緊張感が有るね。最初の内は先生が隣で解説してくれたの。

しばらくして先生が「そろそろ私も」っていいながら、軽く素振りして面を付けて列の先頭に。

部長が大きな声で「かかりげいこー、10秒10回」って号令かけたんだけど「10秒なの?」って思ったの、この時は。

マネージャーが笛を吹いて開始、これが激しかったの。

打つ側と受ける側に分かれてるのは同じだけど、打つ方は全く止まらずに打ち続けてる、受ける側は打たせるだけじゃなくて、駆け抜ける打ち側の背中を叩きながら「遅い!」とか「もっと早く!」とかやってる、10秒たって笛が鳴ると今度は交代、後ろからたたくのも怒鳴るのも交代、次の笛で1人分づつ横に動いて繰り返し、先生にあたると悲惨、先生は交代せずに20秒間打ちっぱなしで、その間先生は怒鳴りっぱなし、こうちゃんが怖いって言うわけだ、それが10回続いて笛が3回鳴ると終わりになるんだけど、今度は「あいがかりー」。

今度は何だろうと思ってると、さっきと同じ打ちっぱなしなんだけど、今度はお互いに打ち合ってる、つまり受け側にならないから、ずっと大声出しながらの全力疾走、10回終わる頃にはみんなヘロヘロなんだけど、膝に手をついて前かがみになると「体を起こせ!!」って先生が怒鳴る。

ここで休憩でもしないとって思ったけどすぐに号令。

「えんじん!」今度は何?って思ってると、みんなで輪になって並んだの。その輪の中には先生と部長。部長がマネージャーに「10秒!」、笛が鳴るとさっきのかかり稽古なんだけど、駆け抜けた先に人の壁、抜けて向きを変えた部長を後ろから叩こうとするの、部長は叩かれる前に打ち込んで行くんだけど、それでも叩かれてた、それを全員が交代でやってた。こうちゃんの番になると後ろから叩かれまくってた、同じ初心者の佐藤さんもバシバシ叩かれてた、こんなに激しい物なんだ。

全員が終わるとまた号令「着衣直し、水分補給」みんな一斉に面を外して水分補給、防具のヒモを結び直してすぐに面を付けたの。「えっ、休憩は?」って思ったけど休憩無し、全員並んだと同時に号令「じげいこー」。

今度は試合みたいな稽古だった。やっぱり先生は強くて、部長含め全員ボッコボコ。それがしばらく続いた後に「うちかえしー」、それが終わると「せいれつー」。

部長の号令で座って面を取って、今度も順番に礼をして、部長が「お願いします」って言って、それに合わせてみんな先生に礼。

先生「今日はお客様に見学して頂いて、みんなもいつも以上に気合いが入ってました。井上さんは、なぜここまでと感じたかもしれません、私が顧問になった今年から内容を変えました。今日はこのくらいにしましょう、以上」

部長の号令で礼、解散。こうちゃん、すごい部に入ってしまったのね。


稽古が終わるとみんな防具を外して、道着袴で床の掃除、そこで先生に声をかけられてお話したの。

先生「今日は驚かれたんじゃないですか?」

私「はい、驚きました。いつもこんなに激しい稽古をしてるんですか?」

先生「途中の円陣は土曜日の特別メニューです。他にもいくつか有って、週によって変わります。それ以外はいつも通りですよ」

私「剣道って激しいんですね」

先生「私の考えでは剣道はスポーツでは有りません、武道です。武道と言うのは殺し合いの技術です、だからこそ、相手に対する礼儀は大切だし、安全には細心の注意をしています。今日は井上さんが見てくれた事で、いつも以上に気合の入った稽古になりました。この子達はまだ子供です、中学からの流れで続けてるだけの子もいます、県内有数の進学校ですからなおさらです。」

先生の熱い思いが伝わってくる、やっぱりこの先生はすごい人なんだ。

私「先生もこんなに激しい稽古をしてきたんですか?」

先生「私が経験してきたのは、これの何割か増しでしたね」

私「そうなんですか?!」

先生「この子達を大学の剣道部に連れて行ったら、完全に幼児扱いですよ」

私「こうちゃん、森田君はどうですか?先生から見て」

先生「初心者ですからまだまだですけど、体格に恵まれて筋力も有る、それもかなり、何よりも戦うという剣道の本質を求めている感じがしますね。今年からの赴任なので、最初全員になぜ剣道をやるのかという質問をしたんですけど、中学からやっていて好きだからというのが多かったですね、中にはカッコイイからという子もいました。その中で森田君は変わってましたね、守りたい人を守れるように強くなりたいと言ったんです。先日の審査の時にあなたにお会いして、守りたいのはこの人なんだなって思いました、このモチベーションは強力です、彼は強くなりますよ。」

こういうのを感激って言うのかな、嬉しいじゃ足りない感じ。

先生「お時間が有れば時々見に来てあげて下さい、今後この子達がどう変わっていくか、成長を見てあげて下さい。今後父兄の方々にも見て頂きたいと思っています、かれらの努力を見て欲しいですね」

ほんとにすごい先生だ。私にもこんな先生がいたら、だいぶ違う人生になったかもしれない。



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