表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一日一転 =日替わり転生生活=  作者: 青依 瑞雨
一日一転 =日替わり転生生活= 本編
227/253

ガラッパの医師

 無念。

 私が目覚めた時には、その感情で気持ちが覆いつくされていた。

 今まで転生してきた中でも、これほどの無念を残して死んでいった人はなかなかいなかった。

「せっ先生?大丈夫ですか?」

 ベッドから起き上がって見ると、そこには看護士が私を驚いた表情で見ていた。

 驚いた表情で私を見てくる人というのは珍しくない。

 それも私が転生してきた時に生じる爆音と稲光で驚く人が多いからである。

「ふむ」

 私は、状況を把握して【歩み】を確認した。

 いや~、さすがに慣れたものだと自分で感心する。

 ま、伊達に何万回と転生してきてないわけですよ。

「カテキア君、私は生前の私では無くギフトだ。ただ、一日しか体は持たないが、なんとかして完成させるぞ!実験の準備をしてくれたまえ!」

「っ!?は、はい!!分かりました、先生!!」

 褐色の可愛らしい看護士さんが準備の為に部屋を飛び出していった。


 さて、今回の転生先は医者のようだ。

 このガラッパにて流行となっている病【ヌーブル病】の治療の為に、この国を訪れた。

 ウイルス性の伝染病である【ヌーブル病】は、非常に感染しやすく、感染時の死亡率も高い悪魔の病気と言われていた。

 あっという間に【ガラッパ】全土へと広がった【ヌーブル病】を治すために、この医師は奮闘した。

 残念ながら【ガラッパ】には、未だに医療設備などが充実してはいない。

 そんな中で、手探りでウイルスの存在を発見して、なんとか薬を作りだそうと努力してきた。

 しかし、当然のように医師は【ヌーブル病】に感染してしまう。

 朦朧とする意識の中、自分自身をも実験台として挑戦してきたが、志半ばで力尽きてしまう。

 そんな彼の無念は、誰一人救えなかった事だった。

 ただの一人でも【ヌーブル病】から救えたのならば、医者として貢献して死ねたと納得も出来ただろう。

 しかし、彼はこの悪魔の病気を治療できずに亡くなったことが、無念で無念で堪らなかったようだ。

 そうだろうなぁ……。

「この私も、あの時、無念で無念で堪らなかったんだからなぁ~……」

 大昔の出来事を思い出す。

 まだまだヒヨっこだった頃、私は【ヌーブル病】に感染した少女へと転生したことがある。

 その時は、ただ両親に挟まれて再び死ぬことしかできなかった。

 私は未だにあの時の事を鮮明に覚えている。

 無力で何にも出来なかった自分を覚えている。

 だけど!!

「今度は、!!」

 私は、ベッドから飛び起きてかったるい肉体へ【自己免疫強化】の魔法を掛けた。

 私自身が編み出した2つ目の新魔法。

 これは自分の持つ免疫機能を強化させる魔法で、言ってしまえば病気版【自己強化再生】みたいなものだ。

 みるみるうちに体の調子が良くなる。

 私はそのまま実験室へ行き、完治した自分の血液を調べて抗体を見つけた。

「ええ!?すごい、すごいですよ、先生!!今までの停滞が嘘だったかのように、順調に前に進んでいます!!」

「当然だ、いったい何人もの医者や博士に転生してきたと思ってるんだ」

「へ?」

「いや、すまん。……こちらの話だ」

 実験室の規模は大きくなかったが、私には十分なものだった。

 今までの転生の経験を生かして、私は全身全霊をもって【ヌーブル病】治療の為のワクチンを作りあげていったのだ。

 そして、それは14時間という時間を掛けてようやく完成したのだった。

「すごいです……、先生……」

 はぁはぁと息が荒い看護士【カテキア】を抱きかかえ、ベッドへ寝かせた。

 生前の彼も知っていたのだが、彼女も既に感染していたのだ。

 彼は自身だけではなく、彼に誠意でついてきてくれた彼女を病にしてしまったことを悔やんでもいた。

 だから、転生してきた私は決めたのだ。

 この薬の功績と名誉、そして健康な体を彼女にプレゼントしようと……。

「せっ、先生、何を!?」

「カテキア君、私はね、君が病に侵されているのを知っていた。そして、死ぬ前に君に健康をプレゼントしたかった。だから、一日だけ、神様が生きることを許してくださったんだよ……。さぁ、腕を出しなさい。私の最後の贈り物だ……」

 もしも、見ず知らずの医者に出来立てのワクチンを注射されるとしたら恐怖しかないだろう。

 しかし、彼の【歩み】を視た私は知っている。

 彼らの間にどれほどの信頼があるのかを……。

「はい、ありがとうございます……、先生」

 彼女はベッドに横たわったまま、私に腕を出してきた。

 私はその腕に注射を差そうと手を伸ばした。

 その時!!

「っ!!」


 ゴゴゴゴ!!!!!


 まるで遠くから何かの大軍が押し寄せてくるような音が聞こえた。

 その音は、凄まじい速さでこちらに向かってきていた。

 嫌な予感に私はすぐに【歩み】で、この時代を探った。

「ぐっ!?」

「先生……」

 不安そうな表情で私を見つめる助手に、私は目を閉じて首を横へ振った。

 

「早すぎるよ、せめて一晩待ってよ……。鈴ちゃん……、紅那ちゃん……」

 その次の瞬間に、音と共に全てが暗闇に飲み込まれた。

 たった今、【ガラッパ】は終わりを迎えたのだ。


 アダモゼウスが回収に来るまで、残り23年。


 <今回の転生で得た物>

 ・【ヌーブル病】の治療法

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ