回想 【切断】
「ゲホッ!ゲホゲホ!!」
咽るように咳き込む紫陽花に大蟹のハサミが迫った。
「!?」
それを間一髪で横へ躱すが、その躱した先にいた小蟹のハサミが紫陽花を斬りつける。
「いたっ!……痛いです!!」
斧を翻し小蟹を叩き割る。
しかし……。
「ううっ……」
ワラワラと紫陽花へと群がっていく小蟹達。
小蟹と言っても大蟹に比べれば小さいと言うだけで、大きさは1mほどあるのだ。
本命の大蟹を助けるため、紫陽花の邪魔をするために小蟹は動き始める。
「はぁ……はぁ……」
紫陽花の肌が紫を帯びた色に変わり、口の端に泡が溜まる。
「木草樹、あんたの【木縁樹草風華】って単純にステータス10倍よね?」
「……そうだ。残念ながら、解毒の効果は無い」
ギリリと音が聞こえそうなほど歯を噛みしめ、斧を振り回す紫陽花。
なんとか【木縁樹草風華】のおかげで戦えているが、ふらつく足元に不安になる。
毒の状態異常の中、無理やり力でねじ伏せながら戦っているようなものだ。
「毒はHPを徐々に削り、確率で体が硬直する。長引けば、長引くほど不利になる」
毒の泡の中で、蟹達は平気で進軍を続ける。
彼らには、きっと耐性があるのだろう。
それにしても彼らを斧で斬り割るたびに、体液や泡が宙を舞っていた。
「まずいで……、少しずつやけど、確実に毒を摂取し続けとる。基準値を上回ったら、毒はあかん!致死量や……!」
「はぁはぁはぁ……ごはっ!」
動き回っていた紫陽花の口から、緑色の体液が吐き出された。
あれは、樹液。
彼女にとっての血液のようなものだ。
「まずい!!」
単純な戦闘力ならば、蟹よりも彼女の方が上だろう。
しかし、毒と仲間による数の暴力が勝敗を分けた。
「もらったああああああ!!!!!!」
大きな声を上げた大蟹がハサミを振り下ろし、そのハサミは確実に紫陽花の体を捉えていた。
ザシュ!!
紫陽花の体が上下に綺麗に分かれた。
皆が絶句する中、師である私だけがはぁ~と深い溜息を吐いたのだった。




