回想 【守護者交代戦】
私が持って帰った斧は、紫陽花にとても馴染んだ。
あの僧が言っていた「武器が使い手を選ぶ」とはこの事だったんだと、目の前で起こった現象に驚いた。
紫陽花は、私が【自己強化再生】を使用しても武器としては重すぎた斧を、片手で持ち上げたのだ。
そして、まるで自分の手足のように軽々と器用に振り回し始めた。
「……うん。母様、ありがとうございます。とても、良い物です」
2対の斧を両手に持ち、にこりと笑顔をこちらに向ける紫陽花。
「ふむ……、どうやら【葉切の斧】が紫陽花を使い手に選んだみたいねぇ……」
きっと、実際に紫陽花は、斧の重さを感じていないのだろう。
武器とは、使い手によって力が引き出されるものだ。
侍が拳銃を持ってもただの鉄の塊でしかないように、見事に合致して武器も使い手もその性能を高めていくことが出来るのだ。
【葉切の斧】は、紫陽花をマスターと認めて力を与えている。
「ふむ、どうやら武器は無事に決まったようやなぁ~。んじゃ、次は修行あるのみやな!……つーわけや、卵!お前が、教えぇ!」
「は?」
ヌメっちの言葉に頭が?マークで埋め尽くされた。
「何言ってんのよ!木草樹に頼まれたのってあんたでしょ?あんたが修行つけてあげればいいじゃない!!」
「アホ!儂やって武器持っとらんかったら、いくらでもつけたるわい!だけど、儂は残念ながら素手でしか戦ったことがあらへん。せやから、教えられんのや……」
「あー……」
そう言えば、そうだった。
ヌメっちの師と言えば、私と庭鳥さんになる。
その2人とも、基本の戦闘スタイルで武器は使用しない。
私は【能力拳法】、庭鳥さんはよく分からないけど恐らく【魔法】だろう。
ヌメっちは自らの舌や毒を武器として扱うことはあっても、剣や槍などの誰かが作った武器を使用したことは無かった。
「そっか、じゃあ仕方ないわね……。とは言っても、私も武器を使用した武術はあまり得意じゃないから、そこらへんは勘弁してね!」
「はい!よろしくお願いします、母様!!」
深く頭を下げた紫陽花は、とてもいい笑顔で顔を上げたのだった。
そして、私とヌメっちによる紫陽花の修行が始まった。
私がいない時は、ヌメっちが基本的な特訓と武術を教えた。
そして、私が来たときは、斧を使った武術を教えた。
私自身、本当に武器の扱いよりも、素手の方が得意なのだ。
しかし、どうやらそれはあくまで強者とのやり取りにおいてだという事が最近分かった。
私自身の使用できる能力拳法に【器転自武】というものがある。
これは、どんな物でも武器として扱うことが出来、武具の扱いが達人になる能力拳法だ。
私は、これを紫陽花に教え込んだ。
そうしたら、みるみるうちに紫陽花の斧の精度が上昇したのだ。
常に武器を持って戦っている戦闘上級者から見れば、私は武器を扱うのが得意ではないと判断されるレベルだろう。
しかし、そんじょそこらで達人と言われているレベルの武器の使い手ならば、決して引けを取らないくらい私の武器の扱いは上手いようなのだ。
これは、正直意外だった。
自分自身が、そこまでの境地に達していた事にも驚いたが、【蒼翼】をもっと上手く使いたいと考えていた私には、嬉しい誤算だったのだ。
ここで、私自身も【器転自武】を鍛えることに決めたのだった。
そして、時が流れて、遂に守護者交代戦の日が訪れたのだ。




