回想 【最強魔法:木草砲】
【木草砲】。
木草界に存在する誰でも使用可能な攻撃手段という技の中において最強の必殺技である。
先祖から子孫へ代々引き継がれる技や能力など、【能力拳法】や【魔法】や【特殊能力】に関しては、血縁が必要であったり門外不出であったり守秘義務があったりと、誰でも覚えられる技術では無い。
【能力拳法】発祥の国【マールド】でさえ、師から教わるまでに最低3年、修行を付けてもらって5年、師に認めてもらって2年という、10年もの年月を重ねてようやく奥義を教わることが出来るのだ。
その途中で逃げ出したり、素質が無いと見なされれば、破門にされて奥義を教わることなく終わるなんてこともザラにある。
国が認めている一番ポピュラーな能力拳法である【重罪心疲】でさえ、奥義の習得が許されるのは、【聖心】のリーダーと次期リーダー候補のみである。
もちろん、【能力拳法】や【特殊能力】の中には、【木草砲】を超える技が山ほどある。
しかし、それをまともに見たことのある者など、ほとんどいない。
使用できる者が少ないうえに、奥義は技の中で頂点に立つ存在だ。
おいそれと使用していいものではないし、使用されたのならば受けた側は、大抵重症以上のダメージを負うからだ。
死人に口無し。
そんな環境において武を極める者達は、最強の技を【木草砲】に定めたのだ。
【魔法】の知識と【信仰心】さえあれば、誰でも使用可能な技。
木草樹に忠誠を誓い、全世界に根を張る木草樹の霊道を介して木草樹から力を借り、その力を光線として変換して放つ遠距離攻撃魔法。
分かりやすく言うのならば、【木縁樹草風華】を光線へ変換する魔法。
それが、【木草砲】の原理だ。
私は、大昔に宗教の国【イブール】の【木草教】の教祖へと転生した時に、この技を覚えた。
【木草教】は、木草樹とそれに仕える木草の民達を崇める宗教だ。
教祖の知識では、熱心な信者、教祖、木草の民は全員が【木草砲】を扱えるらしい。
但し、【木草砲】は、木草樹よりほぼ無限に送られてくる【木縁樹草風華】を光線エネルギーへ変換するのに膨大なMPを消費する。
その為、使用可能でもMPが足りなくて発動できなかったり、ほんの一瞬だけしか使用できなかったりする。
この【木草砲】がMPを使用すれば使用するほど威力が上がると言われているのには、そう言った理由があるのだ。
ビギギギジュドーン!!!!
衝撃波と【木草砲】がぶつかり合う激しい音に観客が耳を塞ぐ。
光線と衝撃波の塊は、ほぼ互角の威力を持っていた。
「うぐおっ!マジに【木草砲】だ!やるじゃねーか、嬢ちゃん!!」
「貴方も、本当に優秀な戦士よ……。ただ、相手が悪かった。それだけよ!!!」
「なんだと!?」
壱場が思いっきり前へ突き出した拳圧から生まれた衝撃波は、それこそ私の【木草砲】と同じほどの破壊力があった。
もしも、彼女の選択した技が【大衝撃】で無かったのならば、勝負はまだ分からなかっただろう。
しかし、今回選択してしまったのは、【大衝撃】という衝撃波の技だ。
一瞬で衝撃を生み出す技と継続して光線を放て続けられる技。
技を放ち終わった壱場が悪態をつこうとしている間にも、私は技を放ち続けていた。
威力が弱まった衝撃波は一瞬で消し去ってしまい、【木草砲】が威力を変えずに壱場へ突き進む。
それに気が付いた壱場が慌てて腰を落として右拳を後ろへ構え直したが、もう遅かった。
次の【大衝撃】を放つ前に、彼女は【木草砲】に呑まれたのだった。
「ぐぎゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
私は、その瞬間に【木草砲】を止めて、更に観客へと光線がいかないように、上空へと光線を捻じ曲げた。
「それまで!勝者、ギフト殿!!」
僧侶のお爺ちゃんの掛け声が上がって、試合が終わった。
「よし!」
ガッツポーズを取る私の周りでは、止まない歓声がこの試合を称えてくれていた。




