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一日一転 =日替わり転生生活=  作者: 青依 瑞雨
一日一転 =日替わり転生生活= 本編
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エパールの商人

「さぁ~!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!全品30%OFFだよ~!!早い者勝ちだ!!!」

「ハニークルトン、1つ300SUZすずだ!安いよ、安いよー!!」

「買うごとにおまけがつくよ!!さぁ、らっしゃいらっしゃい!!」

 活気溢れる市場のみで構成されている街【ガーネッド】。

 ここは、宝石の国【エパール】の首都である。

 【エパール】の住民のほとんどが商人だと言われている。

 この国に無い物など存在しないと言われるほど、様々な品物が流通する国で、他の国から買い付けやら観光客が訪れ、その収入で大きくなった国だ。

 今回、私はこの国にある商品を買い付けに来ていた。

 しかし、その当初の目的を忘れてしまいそうなほど、私の心は穏やかでは無かった。

 それもこれも、前回の転生時にヌメっちに心無いことを言われたからだ。

「な~にが、『いつも同じような服やな!』よ!!」

 泣くだけ泣いて顔を上げた開口一番がそれだった。

 いや、分かっているのよ、あれはヌメっちの優しさだって……。

 敢えて、私が号泣した理由にも、抱き着いた理由にもツッコまなかったんだから。

 でもね、それは無いでしょ!

 私だって、オシャレしたいと思ったりはする。

 だけど、結局戦いやら修行なんかですぐに服がボロボロになってしまう。

 なので、最終的にどうしても機能美に溢れるいつもの服に落ち着いてしまうのだ。

 いつもの少女形態へ変身した時の服は、通称【魔女の服】と呼ばれているものである。

 木草界に存在する全ての魔女が着ている物で、木草界一の礼装と言われている。

 ぶっちゃけると、1着100万は下らない品物だ。

 この服は魔女としての卒業を受けた者のみが着る事を許され、その作り方を師匠に教わるのだ。

 初代の開発者は、もちろん鈴ちゃん。

 なんでも、【ガラッパ】に生えていた植物を加工して作ったらしい。

 そして、私はこの素晴らしい性能の服に一目ぼれし、競売にかけられる度に購入していた。

 魔女とは言え、同じ服をずっと着ているわけでは無い。

 もう着古した物だったり、制作に失敗した物などは、当然のように捨てられるのだ。

 それを何処からか商人たちが見つけてきて、競売にかけられる。

 そんな状態の物でも、一流の魔法使いが制作した礼装よりもずっと効果が高いのだ。

 私は、それらを回収して自分で補修して着ていた。

 別荘には、もう何十着も同じものがタンスに閉まってある。

 今回もその礼装が競売にかけられると聞いて【エパール】にやってきたのだが、さっきからどうにもヌメっちの言葉が頭から離れなかった。

「……」

 私は、ちらりと自分の服装を見る。

 一見すると可愛らしいだけの服だが、見る者が見れば驚き戸惑うであろう【魔女の服】だ。

 だけど、機能美が優先されてオシャレと言う感じではない。

「たまには、少しオシャレしてみようかな?」

 別にヌメっちに可愛く見られたいわけではない。

 あんな事を言ったのを後悔させてやりたいからで、決して褒めてもらいたいとかそう言った気持ちは……少ししかないもん……。

 ちらっと色々な衣服が並ぶ市場の方へ目を向けた。

 そこには、キラキラとした可愛い服だったり、美しい服が所狭しと並んでいた。

「うわ~……」

 私だって女の子なのだ。

 可愛いものやキラキラした物には、人並みの興味がある。

 私は、いつもの競売所へ行く前に寄り道することに決めた。

 幸いにも、お金には十分なほどの余裕があった。

「ふんふんふ~ん♪」

 煌びやかな服が並ぶ中を、ゆっくりと歩いていく。

 どれもこれも可愛らしく、似合う女の子が着れば、魅力がUPするようなものばかりだった。

 正直言うと、私は自分の容姿に自信が持てない。

 人並みに可愛いとは思うのだが、結局は変身で作った偽物の顔なのだ。

 だからなのか、イマイチ容姿という点においては少し気後れするくらい自信が無い。

 そんな中、かなり大胆な衣装が目に留まった。

「うわ……、なにコレ?」

 値札には、踊り子の服と書かれていた。

「え?こんなの着て踊るの?色々見えちゃうんじゃないの……」

 ほぼ紐とスケスケの生地で作られたその服は、とても煽情的な服だった。

「うわぁ……、これはちょっと……エッチ過ぎないかなぁ?」

「いえいえ、そんなことありませんよ!」

 突然掛けられた声に顔を上げると、そこには店員さんが居た。

「実にお客様にぴったりだと思います!」

「え!?いやいや、さすがにそれは無いでしょう……」

 どう見ても、身長も胸のサイズも違い過ぎる服だ。

 私が着られるはずがない。

「サイズの事を気にしていらっしゃるのならば、御心配なく!当社では、全てのサイズを揃えております!お嬢様は、本日服を買いにいらしたのですか?」

「ええ、まぁ……」

「いかがですか、この服は!最新の流行の踊り子の服ですよ」

「いや、私は踊り子では無いですし……」

「そんなの関係ございません!今では、職業に縛られた服装なんて古いと、様々な特殊な職業の服を普通に着ておられる方が多いんですよ!!」

「はぇ~、そうなんですか?」

「ええ、ええ、そりゃあもう!!お嬢様くらいの子にも、本日だけで10着は販売させていただきました!!」

「10着も!?」

 息もつかせぬほどのスピードで店員の口が回る。

 正直言って、私はこう言った人が苦手だ。

 早口のように話す彼女の言葉は、どうにも軽く感じられるからだ……。

「ええ、ええ、残りも少なくなっております!いかがでしょうか?」

「はぁ、でも……」

 残り少ないと聞いて、何故か生まれる焦燥感。

 あれ?私は、この服そんなに欲しかったんだったっけ?

「きっと、お嬢様を好きな殿方もお喜びになられますよ!」

 ピクッ

 私の肩が一瞬だけ反応したのを、店員は見逃さなかった。

「きっときっと、彼氏さんも大喜びですよ~。残り在庫は、3着となっております。決めるのなら、お早めにお願いします~」

「え、でも……でも……」

「今なら、特別に30%OFFで構いませんよ!」

 その言葉に近くにいた私と同じくらいの女の子が、母親を連れてやってきた。

「あの、ここに飾ってある踊り子の服、30%OFFなんですか?じゃあ、一着ください!」

「はい、毎度ありがとうございます!」

 なんだ、この親子は……、まだ、私が話していたのに!!

 店員さんは、他の店員に声を掛けて親子を奥へ案内させた。

「さてさて、残り2着となってしまいました……。いかがいたします?これで売り切れたら、しばらく在庫の保証は出来ませんよ~?」

「あ、あの……」

 ぐるぐると頭の中で踊り子の服が回っている。

 ヌメっちが喜んでくれる?

 今なら、30%OFF?

 残り2着?

 ぐずぐずしていたら、売り切れになってしまうかもしれない……。

 そんなに欲しいはずもなかったエッチな踊り子の服が、どうしても欲しい気持ちになってきた。

「さぁ、いかがされます?」

「すみませ~ん、あの、この服なんですがー!」

 ちょうど、その時に私の後ろから声が聞こえてきた。

 その声に押される様に、私はつい言ってしまった。

「あ、その、か、買います!」

 その言葉を聞いた店員の顔がにんまりと歪んだ。

「お買い上げありがとうございます、こちらで着ていかれますか?」

「い、いえ、それは恥ずかしいので……」

「まぁ、では彼氏さんに見せるために!?それは、きっと喜ばれますよー!」

 顔が真っ赤になっていくのが自分でも分かった。

 そっか、ヌメっち喜んでくれるのか……。

 ふふん、これで同じ服装とか言われないでしょ!!

 服は、店員さんが綺麗に包装してくれた。

 

 その後、上機嫌で【魔女の服】を落札すると、別荘へそれを届けた。

 補修は家にいる他の卵に任せておいて、一刻も早くオシャレした私をヌメっちに見せたかった。

 私は、踊り子の服に着替えると【サルト】へ転送した。

 【サルト】に着くと、都合よくヌメっちとファンちゃんと向日葵ひまわりがいた。

「あれ?向日葵じゃない、久しぶり!今日は、紫陽花あじさいはいないの?」

「なんだ、卵やない……!?」

「卵さん、お久し……!?」

 私が手を振りながら近寄っていくと、ヌメっちとファンちゃんの表情が凍り付いた。

 向日葵だけが、ニコニコしながらこちらの問いに答えたのだった。

「はい、母様かあさま。紫陽花は、南の守護をやっております。本日は、私がお暇をいただいたのです」

 私は、向日葵の頭を撫でながら、二人に視線を向けた。

「なっ、なによ……二人とも……固まっちゃって……」

 私が声を掛けても、2人は私の恰好を意識して見ていた。

「ははは、きっと母様の服装が魅力的過ぎて、声も出ないのでしょう。私には、よく理解できませんが……」

 まぁ、植物から転身した向日葵には、確かにこの服装の良さは分からないかもしれない。

「これねー、巷じゃ流行のファッションなんだって!ちょっと際どいかなーって思ったけど、どうかな?」

 私がヌメっちに視線を向ける。


 ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコ!!!!!!!!!!!!


 その途端、ものすごい勢いでヌメっちの頬が音を奏で始めた。

「やっっ、やだ、先輩!!……そんな必死に!……恥ずかしい!!」

 ファンちゃんは、ヌメっちの鳴き声に耳を塞いでうずくまった。

 顔は信じられないほど真っ赤だった。

「ら、らん!一旦、落ち着こ!はよ、いつもの服に着替えてきぃや!」

 頬を抑えても鳴き声は止まらない。

「ちょっとー、ヌメっち!少しは、私の服を褒めると色々あるんじゃない!」

「いや、似合っとるから、鳴いちゃってるわけで……。とりあえず、はよ着替えぇ!!」

「もー、先輩!!早くその鳴き声、止めてください!!私も発情しちゃいますから~!!」

 蛙の鳴き声が響く中、いつもの喧騒にようやく私は戻ってきたことを実感した。

 横で、向日葵がニコニコとそのやりとりを見ていた。


 アダモゼウスが回収に来るまで、残り30年。


 <今回の転生で手に入れたもの>

 ・踊り子の服

 ・日常

 ・古ぼけた魔女の服

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