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一日一転 =日替わり転生生活=  作者: 青依 瑞雨
一日一転 =日替わり転生生活= 本編
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お別れ

 早朝、私達は隠れ家の前に集まっていた。

 私とZEROと一葉ちゃんと双葉ちゃんと詩ちゃん、そして、若い私。

 それぞれが立派な服を着ていた。

 但し、若い卵だけ男性物の服だった。

「ははぁ……、私が最後まで残った理由ってそういう事だったのね……」

「悪いわねぇ……、って言っても私も経験したんだけどね。頼まれてくれる?」

「もちろん!私は、これからも道のりが長いけど、貴方を目指して頑張るわ!そして、お疲れさま、わたし!」

 若い卵はそう言うと、大総統であるみのるへと姿を変えた。

 本来、連合帝国の最高責任者であり、大総統である実が処刑されて、この戦争の幕引きとなる。

 敵の総大将を倒して、初めての勝利となり、それを見せつけることによって、敵軍にこちらの勝ちを納得させるためだ。

 そのためには、最低でも実が死んだ証となる首か遺体が必要となる。

 しかし、ZEROの奥義によって粉微塵になった実の体を復元させることは、どうあっても不可能だった。

 なので、若い卵には申し訳ないけど、その遺体役をやってもらうこととなったのだ。

 ZERO達は必要ないと反対したが、これは必要な事なのだ。

 だって、そうしなければ国民が納得しないだろう。

 口で言っただけでは、納得しない者がいる。

 そういった輩には、事実を突きつけてやらなくてはならない!

 そうしなければ、大総統は何処かで生きていると勘違いして、崇拝する者が出てきてしまう。

 そうなれば、勝手に妄想して反乱軍やら革命軍やらを作り、いもしない英雄を称えてZERO達に牙を剥くだろう。

 そんな面倒なことを増やすわけにはいかない。

 ここで、確実に終わらすのだ。

 きっちりと、この時代を終わらすのだ!

「じゃあ、そろそろいいかしら?」

「はいよー」

 さすがに、奥さんの前で偽物の旦那を処刑するのは忍びないという若い卵の提案で、ここで首だけ落とすこととなった。

 若い卵は、右手の【蒼翼ブルーウイング】でスパッと首を落とした。

 私はそれを袋に入れた後に、体を焼却処分した。

「さて、それじゃあ行きましょうか」

 実の首が入った袋をZEROに手渡し、私は皆に確認を取る。

 全員が黙って頷くのを確認した後、私達は【転送】で古城へと向かったのだった。

 

 古城に着くと、既にそこには華凛と御堂、そして2人の男女がいた。

「ZEROから話を聞いてすぐに駆け付けたが……、今度からはもうちっと早く連絡してくれ……俺らは、あんたらみたいに便利な移動方法とかねーんだからよぉ」

 包帯だらけの体の御堂は、男性の背中におぶられていた。

「そんなことより、御堂。とっとと、俺達の事を紹介してくれ……。いぶかしげな視線が不快でたまらん」

「おっと、そうだったな……。ZERO、こっちの男が【神楽かぐら じん】、この女性が【華吹かぶき 文香ふみか】。二人とも俺の信頼できる仲間だ。まぁ、新たな国を造る際にあんたの手足となる優秀な人材とでも思ってくれ!」

 御堂の言葉の後に、2人とも丁寧にZEROへお辞儀をした。

「そう、分かったわ。詳しくは、後で話すとして、今はやるべきことをやらないとね……」

 ZEROがゆっくり華凛の前に歩み寄る。

「大丈夫?ゆっくり眠れた?」

「……いいえ、無理でした」

 目の下にクマを作り、手に抱いた赤ん坊を愛おしそうに見つめるその姿は、非常に儚く痛々しかった。

「そう……。じゃあ、赤ん坊を預かるわ……」

 淡々と告げるZEROの方を一瞬だけ向いてから、彼女は赤ん坊へキスをした。

 そして、赤ん坊をZEROへ手渡した。


 おぎゃーおぎゃーおぎゃー!!!


 母親の手から離れた赤ん坊が突然泣き始めた。

 まるで、最後の別れを嫌がるように……。

 ZEROは少し悲しそうに眉を伏せた後、その赤ん坊を文香へと手渡した。

「一葉、双葉、準備なさい……」

「「はい!」」

 双子の声が重なり、魔法陣が展開される。

 様々な国に、今この風景の映像が映し出された。

 後のTVのようなものが、魔法によって【アダモグランディス】中に放送されていた。

 時代の終わりと始まりの生放送だ。

 ZEROは思いっきり息を吸い込むと、大きな声で全国民に向けて告げた。

「初めまして、私はZERO。今の【アダモグランディス】の制度に嫌気が差し、この度、戦闘を仕掛けた者のリーダーよ。今、私は不思議な力を使って世界中にこの映像を流している」

 神楽坂姉妹もZEROも、この映像を帝国中に流すのに力を使っていた。

 この魔法は、見ている向こう側の様子が分からない。

 なので、私と詩ちゃんは、【千里眼】を使って、一部の地域の様子を確認する役目をしていた。

「私達は、全ての帝国の参謀長と総統、そして大総統を処刑した!これによって、私は新たな国をここに造ることを宣言する!」

 映像を見ていた国民からはどよめきが起きた。

 そして、戦いに参加したであろう兵士達からは、絶望の声が上がっていた。

「最後に、大総統の妻であり、帝国【アダモグラン】の参謀長をこの場で処刑し、連合帝国【アダモグランディス】に終止符を打つことにする!【芭蕉ばしょう 華凛かりん】をここへ!」

 ZEROの言葉に、文香が後ろを向いて走り出した。

 恐らくは、赤ん坊に母親の最後を見せないための配慮だろう……。

 さすがは、華吹家。

 良い判断だ。

「……」

「最後に言いたいことはあるか?」

「いいえ、何を言っても全ていいわけですもの。私は、恨まれるだけの事をしてきた。その結果がこれよ……。だから、仕方ないわね……。最後に気がつけて良かった……。悪い夢が覚めてよかった……」

「そう……」

 膝をつき、神に祈るような仕草をしている華凛の首に刀が当てられた。

 詩ちゃんから借りた【時雨しぐれ】だ。

 その刀を見た時、一瞬だけ幽霊のように生気が無かった顔に笑顔が戻った。

「いい刀ね……。とても……よく斬れそう」

「ええ、苦しみは与えないわ!」

「私が使ってた刀が城にあるわ……、それもよろしくお願いします」

 それが、【芭蕉 華凛】の最後の言葉だった。

 ZEROは続いて足元に置いてあった袋から、実(に変身した若い卵)の生首を取りだした。

 そして、それを華凛の隣に並べると声高く宣言した。

「大総統も参謀長も死んだ!!これで、連合帝国【アダモグランディス】は、終わりを迎えた!!これから、私が新たな国を造っていく!!それは、全ての人々が平等で、笑顔になれるような国だ!!私に同意する者は【アダモグランディス】に関する全ての物を処分しろ!!同意出来ぬものは、思い出と共にこの国より消えよ!!古きを捨てて、新しきを受け入れよ!!私は、皆を幸せにしたい……。不満があるものは、歯向かってもらって構わない。私自身が、引導を渡してやろう!!」

 私は、頭をポリポリと掻いた。

 ゴミ捨て場では、歓声が上がっていた。

 一部の馬鹿が、武装を準備してこちらを目指す準備をしていた。

 しかし、ほとんどの兵士がZEROを諦め受け入れるような感じだった。

 そのほとんどが、2つの並んだ生首を見て心が折れたのだ。

 大総統と参謀長が負けて殺された。

 ならば、どうあがいても私達に勝ち目は無いと……。

「卵さん、手の甲を見てください!」

 詩ちゃんの声に、私は手の甲に視線を向けた。

 すると、刺青がみるみると薄くなっていき、やがて消えてしまった。

「これで、呪いも解除かぁ……。長かったなぁ……」

「はは、私は短かったですけど、非常に濃い時間を経験させてもらいましたよ……」

 チャキっと刀を抜くと、詩ちゃんはペコリと皆に頭を下げた。

「さて、私は一部の馬鹿を全員始末したら、元の時代へ帰りますね!……では、機会があったらまた会いましょう!……それでは、ZEROさん、後はお願いしますね!!」

「あっ、おい!詩!!」

「ちょっと、まだお礼が……」

「はい、二人とも黙りなさい!!」

 パンと鈴ちゃんが手を叩いた瞬間に、神楽坂姉妹の表情がボーッとしたものになった。

「……ほえ?」

「ああ、詩ちゃんに頼まれたのよ。全ての出来事が終わったら、あの姉妹から詩ちゃんと卵ちゃんの記憶を消してくれって……」

 私は、驚いて詩ちゃんの方を見た。

「へへ、寂しいですけど、仕方がないですね……。卵さん、先生……庭鳥さんからの伝言です。『あまり未来に影響を与えるなでしゅ。さぁ、お疲れしゃま。後は、ZEROに任せて帰ってくるでしゅよ』だそうです……。では、卵さんも機会があったら、またお会いしましょう!お疲れ様でした!!」

 そう言って、詩ちゃんは姿を消した。

 いや、【千里眼】で姿の確認だけは出来ていた。

 【転移】、【転送】、【斬追】などを駆使して、暴動を起こそうとした連中を片っ端から殺していた。

 容赦ないなぁとも感じたけど、鈴ちゃんも彼らを許すようなことはしないだろう。

 遅かれ早かれ死ぬ運命だったら、同じことだ。

 あちらの処理は、詩ちゃんに任せよう。

 ありがとう、そして嬉しかったよ、詩ちゃん。

「さて、じゃあ私もそろそろかな……」

 まだまだ転生までの時間はあったけど、いつまでも神楽坂姉妹の意識を飛ばしておくわけにもいかないだろう……。

 左手の呪いは、見た目も効力も完全に消えていた。

 これで死ねば、勝手に転生生活が再開するだろう。

「一応、二人の記憶は封印しておくけど、もしも未来で解除したいことがあったら言ってね!すぐに解除してあげるから!!」

「……うん、その時はよろしくね!」

「さて、私もあいつらと弟子達と一緒に国を造る準備をしなくちゃ……忙しくなるわよぉ~!」

 鈴ちゃんが指差す方には、御堂と神楽、そして離れたところに華吹と赤ん坊がいた。

 御堂家と芭蕉家は、子孫たちがZEROの側近として今後活躍していくことになる。

 未来で知っていたけど、こんな縁があったんだ。

「……じゃあ、またね」

「また会おうね、約束だよ、卵ちゃん!」

 そう言って鈴ちゃんが小指を出した。

「うん!」

 私は、小指に自分の小指を絡ませた。

 約束をするときの決まり仕草。

 そして、私は【転送】した。

 別れは、もう昨日の夜に散々済ませていたから、今日は必要最低限の言葉だけ重ねた。

 私は、元【アダモグランディス】から遙か彼方の後に【メフィスト】と呼ばれる島に来ていた。

「ほっ、ほんどうぅにぃ……でられだぁ……」

 次から次へと涙が止まってくれない。

 最後に鈴ちゃんが見せたくしゃっとした表情が忘れられない。

 あーぁ、駄目だな、鈴ちゃんは泣き虫で……誰に似たのかな?

 ……私かなぁ。

「うぇええ……また、絶対に会いに行くがらねぇえええ……」

 無人島で大きな声を上げて泣いた。

 別れがこんなにも辛いものとは思わなかった。

 一日ごとの短い別れしか経験していなかった私にとって、こんなにも長い時間を共有した人との別れは初めてだったのだ。

 しかも、もう会える保証が無い。

 ああ、だからこそ人は一回一回の出会いを大切にしているのか……。

 私は、思いっきり声を上げて泣いた。

 ここで全ての悲しみを置いて行くことにした。

 さぁ、これから新しい日々が待っている。

 また、新たに歩き出そうじゃないか。

 【アダモゼウス】に少しでも抗う為に……。

 泣いてうじうじしているうちに、眠気が来た。

 ああ、もうそんなに時間が経っちゃってたんだ……。

 私は、身を横たえると目を閉じた。

 少しドキドキした……。

 本当に【アダモグランディス】から出ての転生生活に戻れる自信が無かったからだ。

 意識が徐々に重くなっていく。

 そして、完全に意識が落ちた瞬間に目が覚めた。



「おお、エドワード。起きて、エドワード!!」

 ぱちりと目を覚ますと、舞台の上だった。

「え?……え??」

「ほら、セリフだよ……セリフ……」

 こそっと私を抱きかかえていた女性がこそっと私に耳打ちした。

 急いで私は【歩み】を確認した。

 ふむ、どうやら私、【エパール】の演劇役者に転生したみたいだった。

「ああ、どうやら、あの野郎、私の酒に毒を入れたみたいだ……。ぐぐ、苦しい……」

 私は、慌てて演技の続きをやった。

 【歩み】を見る限り、この役者を恨んでいるやつが本当に飲み物に毒物を入れたみたいだ。

 そして、本当に死んでしまったと……。

 まぁ、恐らく舞台袖で目を丸くしてこちらを見ているあの若い男が犯人だろうけどね……。

「おお、エドワード、愛しのエドワード」

「カトリーヌ、俺の最愛のカトリーヌ!」

 ……それにしても笑えてくる。

 あれほどの死闘を繰り広げた戦争生活の後が、まさか舞台俳優とはね……。

 懐かしい感じに涙が滲んだ。

 これが私の日常だったんだ。

 ま、とりあえずは、観客が注目しているんだ。

 思いっきり演技を続けようじゃないか。

 私が転生してくる時に発した轟音も稲光も、舞台の特殊演出くらいにしか思っていないようだった。

 魔法が日常化しているからこそ、驚かない世界。

 私は、未来への転生に成功していた。


 <【アダモグランディス】への転生で得たもの>

 ・鈴ちゃんとの思い出

 ・一葉ちゃんとの思い出

 ・双葉ちゃんとの思い出

 ・詩ちゃんとの思い出

 ・異世界の知識

 ・紀元前の知識

 これにて、長いZERO編が終了となります。

 引き続き、卵ちゃんの残り30年にお付き合いくだされば幸いです。

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