65.ZENOは舐め腐る
はい、ZENOの戦闘に関する話です。
(ZENO視点)
それは、突然の遭遇だった。
「ふっふっふ……まさかZENO氏と同じブロックだったとは幸運でしたぞ!」
「ん?……貴様は確か……猫田森の強火ファンの1人だったか?」
小生の目前に立ったそのプレイヤーは、猫田森のクランに居た奴の1人だった。
……容姿は肥満体型に丸眼鏡の男で、真っ赤な鎧を着用して大きな盾も担いでいた。
「"さん"を付け忘れていますぞ!……っと、今更それを言ったところで無意味ですかな?」
「そんなどうでも良い事を小生に聞くな!……それより貴様、名を名乗れ」
「ふっふっふ……当方のプレイヤーネームが気になりますかな?……まあ教えますが、当方はこの仮想空間においてオタク戦士と呼ばれる者ですぞ!」
「オタク戦士……その名は確か、あのヘビイチゴに次ぐ会員番号2番の持ち主のプレイヤーネームだったと小生は記憶しているが?」
オタク戦士、それは四大クランの一角である[猫田森さんファンクラブ]の3番手の名……
……プレイヤーネームが分かる形で本人に会った事がなかったとはいえ、これが[猫田森さんファンクラブ]の3番手と思うと何だかなぁ……
「当方が[猫田森さんファンクラブ]の3番手で、何かご不満な点でもありますかな?」
「……いや、何でもない」
「そうですかな?……ではZENO氏、胸を借りさせて貰いますぞ!」
ーダンッ!
「何て直線的な動きだ」
ーひょい……スカッ……
胸を借りると言いつつ、オタク戦士は小生に勝つ気満々であった。
……が、小生はそんな直線的な突進で勝てる程に甘くはない。
軽く横に避けて終わりだ。
……なんて、舐め腐ってたのが悪かったのか。
「ZENO氏、油断大敵【シールドバッシュ】ですぞ!」
ーキキィィィィィィ!ブンッ!ドォォォォォン!
「ぐふっ!?」
ーダンッ!ダンッ!ドシィィィィィン!
小生の回避行動は完璧だった。
だというのに、オタク戦士は小生の横を通り過ぎる瞬間に急ブレーキをかけ、小生へ盾職の基本スキルである【シールドバッシュ】を叩き付けて来たのだ。
……結果、無防備な状態で攻撃を受けた小生は何回かバウンドしながら後方へと吹っ飛ばされた。
「まだまだですぞ!」
ーダンッ!
「くっ……」
ぬ、抜かった……
そもそもあの猫田森の所の3番手が、ただの雑魚な訳ないというのに……
「他プレイヤーの皆さん、ここに体勢を崩したZENO氏が居ますぞ~!」
「チッ、増援でも呼ぶつもりか……しかし、小生がそんな真似を許す訳ないだろ?……【千本剣舞】!」
ーチャキチャキチャキチャキチャキチャキチャキ!
増援?
数の暴力?
そんなもの、小生には通用せん!
「「「「「ん?」」」」」
「全員、小生の剣の錆となれ!」
ーブンッ!ザシュザシュザシュッ!
オタク戦士の声を聞いた者も聞かなかった者も、皆等しく斬り捨てる!
「ふぎゃぁっ!?」
「ごぺあっ!?」
「団ちょっ!?」
「そりゃなぶっ!?」
この【千本剣舞】というスキルは文字通り、浮遊する千本の剣を生成して操作するスキルだ。
加えて、このスキルを他スキルの固定砲台扱いしているアーサードとは違い、小生は1本1本正確かつ精密に操作する事も可能。
……故に、その辺に居る様な雑魚や中堅プレイヤーでは小生の敵たり得ない!
「おやおや、今ZENO氏が斬り捨てた中には[黒塗旅団]の者も居たというのに……容赦ないですな?」
ーガンッ!ガンッ!
「ふん、これがゲームでバトルロイヤルな以上は仕方のない事だろう?」
「それもそうですな。……しかし、当方を斬り捨てるには至らないご様子」
ーガンッ!ガンッ!
「……貴様、硬過ぎるのではないか?……まさか小生の剣が通らぬとは思わなかったぞ……」
ぐぬぬ……
オタク戦士の無駄話は無視するとして、この防御力は確実におかしい。
ほぼ確実にユニークスキルか[神秘の呪宝]絡みと見て間違いないか……
「ふっふっふ……こう見えて当方も少なからずダメージは受けていますぞ?……まだまだ倒れるには早過ぎるというだけで……」
「その口を閉じろ!……そもそも、よく考えれば会員番号が強さの指標になる筈もない!……今まで猫田森やヘビイチゴの金魚の糞でしかなかった貴様が、小生を倒そうとは片腹痛いわ!」
……そう口では言いつつ、小生はオタク戦士を舐めてかかる真似はしない。
こんなのでも[猫田森さんファンクラブ]で3番手に位置するプレイヤー、必ず何か小生用の秘策がある。
「隙ありじゃぁぁぁぁぁ!」
「漁夫の利わっしょ~い!」
「恨むんじゃないよ!」
「特攻ばんざぁぁぁぁぁい!」
……チッ、また邪魔者か。
「小生の戦いに水を差すな!」
ーヒュンヒュンヒュン!……ブスブスブスッ!
「「「「ぐへっ!?」」」」
ーキラン……
小生は軽く周囲の剣を操作し、漁夫の利狙いのプレイヤーを串刺しにした。
それにしても、いよいよ苛立って来た……
「……いちいち邪魔者を片付けるのも面倒臭い、いっそ小生が全員血祭りに上げてやるか……」
「「「「「「「っ!?」」」」」」」
「今更驚いても遅い。……【千本剣舞・剣嵐吹雪】!」
ーチャキチャキチャキ!……ヒュンヒュンヒュン!
「「「「「「「「「「あっ」」」」」」」」」」
ーザシュザシュザシュザシュザシュザシュッ!
今の小生が放て得る最強の技、それこそが【千本剣舞・剣嵐吹雪】だ。
……とはいっても、やる事は千本の剣を猛吹雪の如く操作するだけだ。
これだけで周囲はおろか、このCブロック全体のプレイヤーを一掃出来る……
……筈だったんだがな。
「貴様、まだ生き残るか……流石に小生でも怖くなって来たが?」
「ハァ……ハァ……そのまま降伏してくれるとありがたいんですがな……ま、当方はまだまだ気長にやれますぞ?」
オタク戦士は、千本の剣による猛吹雪すら耐え凌いでみせた。
……何が、こいつをそこまで突き動かす?
と、そんな考えが浮かんだ直後……
ーカンカンカ~ン!
『お~っと、早くもCブロックは残り2人!……流石に今のは容赦がなさ過ぎたヨ!』
「む?……一掃し過ぎたか……」
「ようやく、ここまで耐え抜きましたぞ……」
実況のラビリーにより、このCブロックの人数も残り2人になった事が告げられた。
「ふっ、まあ良い。……パッと見たところ貴様は満身創痍、残りHPもそう多くはあるまい……ならば、小生が直々に手を下してやろう!」
ーチャキ!
「……いよいよ、ですかな?」
小生は自前の剣を2本、鞘から抜いた。
その上でオタク戦士を真っ直ぐに見据え……
「貴様に最後の足掻きを許してやる」
「あまり当方を舐めない方が良いですぞ?」
「舐めてはいない。……何が来ようと、小生は叩き斬るというだけだ!」
「……となると、当方が逆転するチャンスはここしかありませんな……」
「まだ貴様は逆転を夢見るのか……」
……これはきっと、何かあるな……
そんな直感が働きつつも、小生とオタク戦士の会話は終わりを迎えた。
何せ、次の瞬間には……
「やはり突進!……突進が全てを解決しますぞ!」
ーダンッ!
「チッ、馬鹿の一つ覚えが!」
ーチャキ!
……オタク戦士が、こちらへ突進して来たのだ。
が、これを馬鹿正直に受けてはいけない気がする。
ならどうするか、と言われたら……
「馬鹿で結構ですぞ!」
ーガシャッ!ガシャッ!ガシャッ!
「ここはギリギリまで引き付けて……ふんっ!」
ータンッ!
小生はギリギリまでオタク戦士を引き付け、丁度すぐ前まで来た辺りで高く跳躍した。
「うおっ!」
「ふっ……これで勝負ありだ!」
小生は跳躍の最中に頭を下、足を空へ向ける形で落下体勢に入り、剣をオタク戦士の頭部めがけて突き出した。
「【ーーーー】!」
その際、オタク戦士が何かを小声で呟いた気もしたが……ここからどうにか出来る手段などありはしない!
現に、小生の剣は2振りともオタク戦士の頭へと振り下ろされ……
ーパキン!
……呆気なく、剣が折れた。
「は?」
何が起きた?
小生の剣が折れただと?
あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得な……
……否、冷静になれ!
「確かに、勝負ありですな……【シールドバッシュ】!」
あっ……
いつの間にか、宙で逆立ち状態となった小生の顔面めがけて大盾が迫っていた。
言わずもがな、オタク戦士の攻撃だ。
加えて直感的に、今のオタク戦士の攻撃を顔面で受けると、HPに余裕があっても死ぬという確信があった。
……何故だろうな?
小生の剣があまりにもあっさりと折れたからか?
……ああ、もう当たるな。
「見事だったぞべあっ!?」
ードゴォォォォォォォォォン!
小生の顔面にオタク戦士の大盾がぶつけられ、小生のHPはたった一撃で尽きた。
……最後の最後まで、小生は相手を侮っていたのだろう。
今更それに気付いたところで、後の祭りでしかなかったが……
ご読了ありがとうございます。
誤解しないで欲しいのですが、単純な実力ではZENOの方が上です……今回の勝利は、あくまでもオタク戦士が自身の能力について秘匿し切ったが故のものなので。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




