62.最強決定戦は開幕する
今回と次回の話、時系列が割と前後します。
(源徳 村雨視点)
〘厄災のアルケニカ〙にログイン制限が敷かれてから、早くも1週間。
ードタドタバタバタ!
「坊っちゃん坊っちゃん!大ニュース到来デッス!」
「ん?……って縁、取り敢えず落ち着け!」
「ふむ、見るからに大興奮だね☆」
いきなり縁が興奮して走って来たので、俺は何とかして縁を落ち着かせようとした。
なお、これは完全に余談ではあるが黒佐はソファーに座る俺の膝を枕にして寝転んでいた。
……ったく、本当に短期間で馴染んだなこいつ……
「で、どうしてそうも慌ててるんだ?」
「どうしたもこうしたも、ようやく〘厄災のアルケニカ〙へログイン出来る様になったんデッス!」
「へぇ、遂にか」
「遂にデッス!」
あの土骨やらキリギエルやらの騒動が起きてから数時間後、俺達はゲームから強制ログアウトさせられた。
何でも、あのキリギエルや彼が眷属となった大厄災について、運営チームすら想定外の事が起きていたらしいのだ。
……つうか、謎のコンピューターウイルスらしき存在にラスボスの座を乗っ取られたとか。
普通なら訴訟もんの話なのだが、そこは源徳一族。
あっという間に問題を矮小化させ、1週間も時間を稼いでみせた。
……とはいえ、だ。
「本当に大丈夫なんだよな?」
「まあ、元凶に情報を漏洩させるつもりはないらしいデッスし……何とか協力関係も築けたらしいので、多分問題ない筈デッス!」
「……本当か?」
ただでさえ、あの運営チームには信用がない。
……この調子じゃ、ログイン制限を食らったプレイヤーが律儀に戻って来るとは限らねぇぞ?
「本当デッスよ!……いやまあ、実際のところは既にプレイヤーだった陽吉様が無駄なログイン制限に耐え切れなくなったってのが正解デッスけど……」
「ん?……陽吉って、源徳一族の現当主で俺の曾祖父だったよな?……え、プレイヤーなのか?」
え、マジで言ってるのか?
あの天下の源徳一族の当主様が、〘厄災のアルケニカ〙とかいうクソゲーのプレイヤーやってるとか初耳だぞ?
「……というか、坊っちゃんも会ってマッスよ?」
「は?」
「ほう☆?」
……俺が会ってる?
本当に?
「ま、かく言う私も初めてゲーム内で会った時は頭が真っ白になりマッシたからね……太陽ジジイ、それが陽吉様のプレイヤーネームだそうデッス!」
「ぶふぉっ!?」
いや、源徳一族の当主ってあの爺さんかよ!
……何してんだよ、ガチで……
「って、こんな事はどうでも良いんデッス!……遂にログイン制限が終わった事の方が……」
「そ、そうか……まあ、影奇にまた会えるって思えば俺も嬉しいぞ?」
「ぼ、ボク様も同感だね☆!」
ぶっちゃけ、俺はそこまでこのゲームに思い入れねぇからなぁ……
何がそんなに嬉しいんだか。
「も~、反応薄いデッスね……私としては、これで四六時中坊っちゃんと黒佐さんのあ……ごほん……な声を聞かずに済むんデッスが?」
「っ!……そ、それはだな……」
「ふむふむ、煩くしたなら謝ろう☆!……けれど、良ければ縁君が一緒でも良かったんだぞ☆?」
「3●は普通に恥ずかしいデッスよ!」
「……うん、俺もそれには同感だ」
「そういうものかい☆?」
あ~、うん、まぁ……
実際、この1週間は本気でアレだった。
……世話係としての仕事がある縁はともかく、暇を持て余していた俺と黒佐は毎日ヤる事ヤりまくってたからな……
ほんと、爛れに爛れた1週間だった。
……ちなみに、俺は種馬なんで避妊はしてねぇ。
ってか、させて貰えねぇ。
……黒佐、よくこれOKしたなぁ?
「黒佐、嫌なら嫌って言えよ?」
「いきなり何の話だい☆!?……それに、村雨君とのアレコレが嫌な訳が……」
「子供を孕んでもか?」
「うっ☆……と、時には割り切りも必要なのさ☆」
あ、流石に平気じゃないんだな。
……そりゃそうか。
いくら好きな相手だったとしても、最初から子供を作る前提はなぁ……
「……と、とにかく!……これで私達もようやくアルケニカ生活に戻れマッス!」
「本当にな。……だが、俺達はともかく大衆が受け入れるか?」
「一応、1週間も待たせた事に対するサプライズは用意してると予告されてマッシたけど……あの霞様が用意したサプライズとか、今から嫌な予感しかしマッセんよ!」
……サプライズねぇ……
悪ぃが、既にキリギエルや七怨将で腹いっぱいだ。
「ま……どうせ、俺達にゃ関係ねぇ話だろうしな」
「それ、フラグにならないと良いけどね☆?」
「ははは、不吉な事を言うなよ……」
……フラグ、立っちまったかな……
いや、その時はその時でやってやるよ……
うん、きっと、メイビー……
で、それから3日後……
『あ~、テステス……ふぅ……レディィィィス&ジェントルメェェェン!……今日は〘厄災のアルケニカ〙ログイン制限解除記念に新設したコロシアムを使った突発イベント、〘第1回アルケニカ最強決定戦〙への参加感謝するのだよぉぉぉぉぉ!』
ーキィィィィィン!
「「「「「「「うおぉぉぉぉぉ!」」」」」」」
マイクの音が響き、歓声が上がる。
俺はどうしてここに居るのか……
いいや、分かってる。
今回ばかりは、分かって参加した。
「坊っちゃん、今更逃げるのは許しマッセんよ?」
「ハ~ッハッハッハ☆!」
「腕が鳴るなァ!」
「あ、ムラザメさんも居る……これは僕達も負けてられないよ!」
「ええ、そうですわね」
「全員、俺様の斧の錆びにしてやらぁ!」
「ヴァルメリド、煩くするなら小生から離れろ!」
「おじさん、張り切っちゃおうかな?」
「ニャニャニャ……どいつもこいつも一筋縄じゃ行かなさそうニャ……」
「あ、ムラザメ殿も居るでござる♥️」
「生き残れる気が皆無でい、ば~ろちくしょう!」
「出来るだけの事をするでごわす!」
ふと周りを見れば、実力者らしき者達がわんさか。
……けれど、居ないプレイヤーも何人か。
そういった奴等は、観客席かリモートで観戦してるらしい。
現に……
「【討竜雑技団】、頑張るんやで~!」
「ふぉっふぉっふぉっ♪」
……観客席の方から、聞き覚えのある声だってしてやがる。
ま、あの辺は戦闘専門じゃなさそうだしな。
……って待て、あの2人はユニークスキル持ちだったよな?
戦闘が出来ねぇのに、どうやって……
『さあ場も温まって来たところで、じゃんじゃんイベント詳細を紹介して行くのだよ!』
「チッ、こっちを聞き逃したら元も子もねぇ!」
……なんて、考えてる余裕もねぇ。
今はこの突発イベントについて聞く時間だ。
『プレイヤー諸君にはこれより、A~Hまでの8つのブロックに分かれてバトルロイヤル形式で1人が生き残るまで戦って貰うのだよ!……あ、ちなみにその際のバトルフィールドは別空間になるが、これもコロシアムの付随システムで便宜上はコロシアム内部って扱いになるから覚えておくのだよ?』
「……まずはバトルロイヤルを勝ち残れ、か……」
まずはバトルロイヤルで人を減らす。
この手のパターンでは王道だな。
『それに加え、消耗品系のアイテムは基本的に使用禁止だから注意が必要なのだよ!』
「うげェ、こりゃオレ負けたかァ?」
消耗品系のアイテムってなると、ポーションを始めとした回復系アイテムだったりか?
逆に何度でも使える[召喚書]とかは使用してもOKっぽいな。
『とまあ、これで勝ち残った8人がトーナメントで優勝を争う訳なのだが……ここまでで質問はあるかい?』
ーシ~ン……
「……ま、ルール自体は分かりやすいしな……」
バトルロイヤルからのトーナメント。
これも王道だ。
……実を言うと、俺は安心していた。
このクソゲーにしては、割と堅実なやり方だったからだ。
……が、ここからどんどんおかしくなる。
『ふむ……それでは司会は吾輩こと源徳 霞、実況は元管理AIことラビリー、解説は"電子の歌姫"こと暫定ラスボスの大厄災が務めるのだよ!』
「……やっぱりそこはおかしいんだよな……」
おかしいポイントその1~その3。
司会、実況、解説の人員がどう考えてもヤバい。
もっとも、全員が半透明のアバターで容姿も分かりづらくされているが……だからってなぁ……
……特に暫定ラスボスの大厄災は何なんだよ、としか言えねぇし。
『そしてここで特別ゲスト!……この8ブロックの内の1つに、今から呼ぶプレイヤーでない特別ゲストが参加するのだよ!……あ、当然であるが特別ゲストがブロックで勝ち残った場合はその者がトーナメントに参加する事になるのだよ』
「……プレイヤーじゃねぇ特別ゲストって……俺、そういうタイプのNPCには会ってねぇから、出て来られても分からねぇぞ?」
何せ俺達はずっと始まりの街に留まってるからな。
……そろそろ進むべきか?
なんて呑気に思ってたら……
『それでは来るのだよ!……"腐竜将軍 火臓"!』
ードシッ……ドシッ……
「……ウ~ガァァ~……」
「「「「「……………はい?」」」」」
おかしいポイントその4。
特別ゲストとして現れたのは、腐りかけの大きな体が特徴的な七怨将のドラゴンゾンビ……"腐竜将軍 火臓"だった。
……本当に、どうしてこうなったのか?
現実逃避をしたくなった俺は、すぐさま自分の記憶を遡るのだった……
ご読了ありがとうございます。
参加までの詳しい経緯?は次回。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




