58.土骨は追い込まれる
重ね重ね言いますが、〘厄災のアルケニカ〙は作中世界だと仮想空間としては満点でもゲームとしては割とクソって扱いです。
(源徳 村雨視点)
……さて、戦況を整理しよう。
「ガッシャァァァァァァァァァァァン!」
ーギュイン!……ドォォォォォォォォォン!
「怯むな、進め!……あのレイドイベントを経た僕達にとって、土骨なんて雑魚同然だ!」
土骨は相変わらず光線を吐き、対するアーサードさんは他プレイヤー達を鼓舞して士気を維持していた。
……うん、土骨のHPがどれだけかは不明だが、何とかなりそうって感触はあるな……
それに加えて、だ。
「ハ~ッハッハッハ☆!……皆、ボク様ごとやっていいから虫達を利用し尽くすんだ☆!」
「キチキチィィィィィィ!」
ーチョンチョンチョンギィィィッチョン!
グロサリーヌが敢えて土骨の周囲を飛ぶ事で、虫型モンスター達の攻撃すら土骨討伐に利用してやがった。
……幸運な事に、ヒプシノスキリギリスはグロサリーヌと土骨への報復にしか興味がねぇらしい。
だからこそ、グロサリーヌ以外のプレイヤーへ虫型モンスター達の攻撃が向かう事もなかった。
……聞けば聞く程、こちら側に勝利の天秤は傾いているとしか思えなかった。
「うんうん、今のところは順調かな……あ、太陽ジジイさん、例の技で土骨の逃走防止も頼むよ」
「ふぉっふぉっふぉっ♪……んじゃ、【貪夫徇財】を土骨にかけるとするかのう♪」
ーフワワ~ン♪
「たんぷじゅんざい?……何だそりゃ?」
太陽ジジイさんが発動した……恐らくユニークスキルの名は、まるで聞き覚えのない言葉の羅列だった。
「貪夫徇財……欲深い人間が金銭のために命を捨てるという意味の四字熟語じゃな。……んで、その名を冠する儂のユニークスキルは、相手が最も望むものを幻覚として見せる事が出来るのじゃ♪」
なるほどなぁ……
自身が欲するものを手に入れようとしたら、それが敵の見せた幻覚ってスキルか……
確かに欲望に動かされて命は捨ててるかもしれねぇけど、何か違う気が……
…………………って、待て待て。
相手が最も望むものを幻覚として見せる?
そりゃまさか……
「なぁ、土骨が望んでるのって自分達を殺した奴等への報復だったよな?……だから、相手が関係ねぇって分かった途端に逃げる訳だし……」
「そうだね。……つまりまあ……」
「ガ……ガ……ガッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!」
ードンッ!ドンッ!ギュイン!……ドォォォォォン!
「こんな感じにブチ切れるってか!?」
太陽ジジイさんのユニークスキルで俺達が自分達を殺した仇に見えているらしく、土骨はいきなりブチ切れたかの様に暴れ始めた。
……けどなぁ、ブチ切れてぇのは俺達の方なんだよ!
「ふぅ……俺様も行くとすっか!」
「ムラザメ殿へ勇姿を見せるチャンスでござる!」
「あのド頭かち割るでごわす!」
「ハァ……ったく、べらぼうめぇ……」
ほれ見ろ。
この状況下でも、プレイヤー側の士気も充分。
……俺だって、負けてられねぇな。
「おい賽子丁子さん、今回もアレ頼んだぞ!」
「も~、ムラザメはんはしょうがないお人やで……ちゅう訳で、【丁半勝負】4人前や!」
俺は賽子丁子さんが【丁半勝負】を発動したのを確認すると、結果も見ずに土骨の方へと進んだ。
すると……
「あれ、ムラザメさん結果は見て行かないんデッスか?」
「賽子丁子さん、もしツキが悪いってんなら即座に断る筈だろ?……承諾した時点でツキはあるって事だ!」
「お、結構あいつを分かって来たじゃねぇかァ!」
「ま、伊達に一緒に居ねぇよ」
……エンムスビと乱打羽さんが俺と合流し、ちょっとした雑談に花を咲かせていた。
当然、こうしている間にも最前線では土骨へ攻撃が撃ち込まれ続けていたが。
「それ、チェストォォォォォォォォォォ!」
ーブンッ!……ドゴォォォォォォォォン!ベキッ!
「まずは【黒洞天斧】で小手調べ……ってか、俺様でもいきなり王手はかけねぇぜ!」
ーキュルキュルキュル……ドゴォォォォォン!ゴシャッ!
「【一子相伝・神切一刀流】を受けるでござる!」
ーブンッ!スパ~ン……
権座右衛門さん、ヴァルメリドさん、ヘビイチゴさん……
各々の攻撃が、次々と土骨をHP的にも物理的にも削って行く。
しかも、これで終わりな訳もねぇ。
「【爆笑花火】を食らえってんだ、ば~ろちくしょう!」
ーヒュ~……ドォォォォォン!
「死に晒せですわ、【羅貫螺旋】!」
ーギュルギュルギュルルル!
「おぉ……どいつもこいつも殺気立ってやがる……」
これが因果応報……
あちこちで土骨がプレイヤーを襲ったからこそ、ここまで様々な恨みを買った。
自分達を殺した仇を恨み、憤怒に燃えたがしゃどくろの末路がこれとか、本当に笑えねぇな。
……ま、俺だってやり返すつもりだがな!
「影奇、俺達も続くぞ!」
「ん……了解でございます!」
「よっしゃ行くかァ!」
「行きマッスよ!」
ってな感じで俺達も参戦しようとした、まさにその瞬間だった。
「プワァァァァァ!」
「ん?……ありゃ、確かバットセンチピードとかいうモンスターだったよな?」
土骨の周囲を飛び回るグロサリーヌと恐悦に向かって、バットセンチピードが突撃して行ったのだ。
……ただ、あの軌道はマズいな……
「ガシャ?……ガッシャァァァァァン!」
ーガシッ!……ブチブチブチ!
「プギャッ!?」
ーブシャッ!
「あ~あ、言わんこっちゃねぇ……」
バットセンチピードは当然の如く土骨に見つかり、無惨にも引きちぎられて体液が辺りにぶちまけられた。
その一部始終を見た俺も所詮は虫か、としか思わなかったんだが……
「ガ、ガッシャァァァァァ!?」
ーシュゥ~……ドロドロドロ……
「へ?……土骨を構成する骨が、溶けてやがる!?」
突然、土骨を構成する骨……それもバットセンチピードの体液を浴びた部分が溶け始めたのだ。
「ああ、あのキリギリスも考えたものだね。……バットセンチピードは体液が強酸性だとプレイヤー間でもよく知られているレアモンスター……でも、土骨はそれを知らない……」
「え、アーサードさん?……俺は知らなかったんだが?」
最前線に立つアーサードさんが語ったところによると、バットセンチピードの体液は強酸性らしい。
……ヒプシノスキリギリス、それすら見越して土骨へけしかけたのかよ!
んで、その仮説を証明する様に……
「キシャァァァァァ!」
ーブンッ!スパパパパッ!
「「「チッチッチ……」」」
ーブンッ!ブンッ!ブンッ!ガラガラガラ!
……キラーマンティスやらハンマードラゴンフライやらが土骨の溶けた部分を執拗に攻撃し始めた。
うん、やっぱヒプシノスキリギリスってズルいわ。
「こ、こほん……俺達も行くぞ!」
「仕切り直したなァ」
「仕切り直しマッシたね?」
「う、煩ぇ!」
どうせ土骨はあのレイドイベントのドラゴン共に比べりゃ雑魚同然だ!
……さっさと片付けて、祝杯でも上げようぜ!
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(??視点)
ピポパポ……
当機を呼ぶに相応しい音色アリ……
該当モンスター名:ヒプシノスキリギリス……
音色はお世辞にも美しいとは言えないピポが……
その執念だけでも、称賛に値するピポ……
『……これは仕方ないピポ、あの者にもう少し力を分け与えてあげるパポ……』
これは当機の行き当たりばったりな思いつき……
合理性の欠片もない、愚行そのものピポ……
それでも、パポ……
『無視は出来ないピポね……』
あのキリギリスに祝福を。
……同時に、全てを滅ぼせる新たな厄災としての力を発現させてあげるパポ……
ご読了ありがとうございます。
大厄災?、割と好き勝手しています。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




