5.ムラザメはぶん殴る
今話の主人公の行動、拒否感凄い人が多そうです。
(翌日、源徳 村雨視点)
「……結局、ログインしちまったよ……」
「ふぅ……恥も外聞もかなぐり捨ててゴネた甲斐がありマッシた!」
……〘厄災のアルケニカ〙プレイ2日目。
俺ことムラザメと縁ことエンムスビは、またもやこのゲームにログインしていた。
「にしたって、どうすんだ?……行って確かめるか?」
「う~ん……それしかないデッスよね……」
3ヶ月経ってインフレが進んでるかと思えば、そうでもなかった件。
……その余波を俺達が受けなきゃいけない理由までは分からねぇが、何とかして欲しいものだ。
という訳で、またあの穴ぼこエリアに行こうとしていたのだが……
「ハァ!?……東門前の平原にオンリーワン・ユニークモンスターが3体も居座ってて初心者お断りな状態って本当なのかよ!?」
「ああ、本当だよ。……後、ユニーククエストを受注して事態を引き起こした張本人は今日もその3体相手に喧嘩を売って死にまくってるとか……」
「マジかよ……じゃあ、他の3方向でやるしかないって感じか?」
「そうは言うが北は小型竜、南は古代のロボット、西はアンデットモンスターの巣窟ってな感じで、何だかんだ東が1番難易度が低かったんだぞ?……下手に他の3方向なんて行ったら死ぬだけだ」
……えっと、何だって?
「東は未だにあの3体が居座ってて、他の3方向は東よりも難易度が高い……いくら今の東門付近がイレギュラーだとしても、他の3方向には行かない方が良さそうか……」
「……じゃあ、どうするんデッスか?」
「どうしようかねぇ……」
「……案はナシ、デッスか……」
いやはや、どうしたもんか……
東門は昨日の通り、だけど他の3方向は東より難易度が高めと来た……
正直に言えば、レベル2の俺達にとれる選択肢なんてないに等しかった。
「よしっ……迷ってたところで何も始まらねぇし、東門に行くとするか!」
「えっ!?……勝てる算段でもあるんデッスか!?」
勝てる算段だと?
「んなもん、ある訳ねぇだろ!」
ーガクッ!
「な、ないんデッスか!?」
エンムスビ……ズッコケるのは好きにすりゃ良いが、目的を見失うな。
「あのなぁ、これはゲームだぞ?……んで、初心者エリアがいつまで経っても進行不能になってたら当然の如くプレイヤーの不満が募る」
「そ、そうデッスね……」
「そうなりゃ、運営が直接動くなり高レベルプレイヤーが事態の解決を図るなり、何かしらのアクションが起こってもおかしくはねぇ……別に、俺達自身が事態を解決する必要なんてねぇんだからな!」
「……ん?……なら、何で今日の時点で東門に行こうとしてるんデッスか?」
おっと、それは気になるよな……
つっても、理由は単純だ。
「さっきの奴等も言ってたろ?……クエストを受注した張本人が、今日も喧嘩を売って死にまくってるって……」
「……っ!?……ま、まさか……」
「そのまさかだ。……流石に触れたりダメージ与えたりしたらペナルティが発生するかもしれねぇが、どうせ今の俺が操作するこのアバターに失うもんなんてねぇ……つう訳で、1発ぶちかましに行くんだよ!」
昨日はぶちかませなかったが、今日はやってやらぁ!
……どうせ失うもんなんてねぇしな!
「さ、最低なのデッス……」
「最低だ?……俺達は巻き添え食らわされてんだから、正当な報復だ!」
ータッタッタッ!
「む、向こうには心当たりないデッスよ~!」
ータッタッタッ!
心当たりがないからって許してやるか!
そう心に決めた俺は、ひたすら東門へと走り出そうとして……
「……あ、ワープ使えるんだった」
「……ほんとデッスね……」
ワープ機能の事を思い出し、一瞬で東門までワープするのだった……
で、ワープ後の東門前平原にて……
「ハァ……ハァ……今日こそはボク様が勝ってやる☆!」
「ギュイィィィィィィィィィ!」
「ブルモォォォォォォォォォ!」
「カァァァァァァァァァァァ!」
……そこには、岩の様な外殻を身に纏った兎、牛、烏を前に、満身創痍ながら勝利宣言を告げるプレイヤーが居た。
彼女は灰色のボーイッシュヘアーが特徴的な高校生程度っぽい見た目の少女で、黒い衣装と魔女っぽい帽子を着用していた。
……後、この手の中二病プレイヤーがしがちな眼帯は意外にもしていなかった。
ただまあ、そんな事はどうでも良い。
「なあ、あれ……多分負ける直前だよな?」
「多分、そうデッス……」
俺が見る限り、あのプレイヤー……破滅ヶ原☆グロサリーヌはもう限界寸前だ。
……現に、もう彼女は今にも倒れそうで……
「ははは……ハ~ッハッハッハ☆!……ボク様はまた不死鳥の如く蘇る☆……だからって、ボク様は無駄死にをする気は毛頭ない☆!」
「ギュイ?」
「ブルモ?」
「カァァ?」
……グロサリーヌの言葉に、3体のオンリーワン・ユニークモンスターは首を傾げる。
多分、何を言ってるかまでは伝わってねぇんだろうが、それが逆に不気味に感じたんだろう。
いくらゲームの世界でも、死を前にすれば焦りや恐怖が滲み出る。
なのに、グロサリーヌは死を前にしてもなお焦りや恐怖を滲ませていなかったんだからな。
と、俺がグロサリーヌに感心していると……
「すぅ……だから、ボク様の死で道連れだ☆……【クラスターボムズ】☆!」
ーキラン……
「「へ?」」
……グロサリーヌが、何かしらの魔法を発動した。
そして、その名前は……
ードッカァァァァァァァァァァァァン!
「ひぶっ!?」
「ごぱっ!?」
……案の定、爆発系の魔法だった。
「いや死なねぇよ!?」
「だ……誰に言ってるん……デッス……か?」
……流石に俺達だって馬鹿じゃない。
魔法発動の時点で逃げ出したからか、何とか体力をミリで残せた……
けど、それで終わりじゃなかった。
「……ギュイッ!」
「ブルモッ!」
「カァァァァァァァァ!」
……やはり、先程の自爆魔法でも3体のオンリーワン・ユニークモンスターは死んでいなかった。
「……エンムスビ、走れるよな?」
「が、頑張りマッス……」
そうして、俺達は東門まで全速力で走った。
一応、最初の時点で距離を離していたのが功を奏したのか、奴等が俺達を積極的に追跡する事はなかった。
それはそうと……
「ハ~ッハッハッハ☆!……よし、今度こそボク様がぶち倒して……」
……東門に入る寸前、俺の前にグロサリーヌが現れた。
どうも、東門の近くをリスポーン先に指定してたらしい。
うん、ここで会ったが1日目。
「テメェはいい加減に学習しやがれぇぇぇぇ!」
「へ☆?」
「昨日の恨みぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
ーゴンッ!
「ひぶらっ☆!?」
ギリギリ門の外に出ていたグロサリーヌの顔面に、俺は綺麗なストレートをお見舞いした。
やり過ぎ?
VRゲームじゃ痛みは軽い電気ショック程度になってるんで気にする程じゃねぇ!
「あ、ムラザメさんマジでぶん殴っちゃったんデッスか!?」
「痛みは軽い電気ショック程度だから大丈夫だろ!」
「いやいや、女の子殴るとか最低デッスよ!?」
「うっ……そりゃ、いくら何でも出会い頭にぶん殴るのは悪かったと思ってるが……」
……と、後から走って来たエンムスビと口論になりつつ、俺達はふと気付く。
「あれ?……そういやムラザメさん、グロサリーヌさんって何処デッスか?」
「は?……いやさっき殴って……居ない?」
俺は、確かに殴ったし手応えもあった。
なのに、今はその姿が見当たらねぇ。
……まさか…………………
「ハ~ッハッハッハ☆!何故か殴られたけど、それもボク様が罪作りな女だからかな☆?……じゃ、続きと洒落込もうか☆!」
「あいつっ……殴られてもそのまんま進み続けやがったのか!?」
「駄目デッス!……あれは私達には救えぬ者、早急にこの場を立ち去るのが最善デッス!」
「ぐぬぬ……まあ宣言通りぶん殴ったし、後の事は知らねぇ!」
「殴った事には抗議しマッスが、後の事については私も同感デッス!」
意味不明にぶん殴られてもなお、グロサリーヌはメテオ三連星?へと無謀な勝負を続けていた。
……そんな狂人には付き合ってられねぇ俺達は、彼女を背にして走り続けるのだった……
ご読了ありがとうございます。
念のため再度言っておきますが、主人公は別に善人じゃありません。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




