38.ラビリーは提案する
キャプテン・ラビリーは分類上NPCに該当します。
(鋼村 浅斗視点)
「キャプテン・ラビリー……だって?」
ラビリーらしき声から聞かされた、彼女の今の立場。
それは南の厄災である[ワールドエンド・ユニークモンスター]、"終末複合戦艦 渾沌"の艦長というものだった。
「おいおい、そりゃマジかよ……俺様、南の対厄災戦にも参加するつもりだったってのに……」
「えぇ……貴方、いくら何でも[黒塗旅団]全体の意向に反し過ぎではありませんの?」
「知るか!……そもそも、俺様は俺様のやりたい様にやるだけなんだよ!」
「……[黒塗旅団]の団長及び団員の皆様には、心から同情しますわ……」
あぁ……
同じ四大クランのNo.2だというのに、どうしてここまでの差が出来ているのか……
……どうか、僕が団長として頼りないから希人がしっかりしたとかじゃない事を祈るよ……
『んまぁ、アテシの近況はこんな感じだヨ。……で、わざわざそっちに声を送ってる理由だけど……』
「あ、そうだ。……どうして、渾沌が構えている場所から遠く離れたここへ声を届けて来たかを聞かないと……」
『……もし、アテシが渾沌サンの主砲を使って支援してあげるって言ったら、その提案呑んでくれるかヨ?』
「……………………え?」
何だって?
渾沌の主砲を使っての支援?
それをして、ラビリー側に何のメリットが……
『ちなみに、こっちのメリットはないヨ。……強いて言えば、アテシが霞サンを制御し切れなかった事への罪滅ぼしだヨ……』
「罪滅ぼし……それで、僕達の支援を?」
『あ、届くかどうかの心配は要らないヨ!……渾沌サンの主砲から放たれる"大陸間弾道光線"なら、このぐらいの距離なんて何の問題もないからヨ!』
「……いや、それはそれで別の問題がありますわよね?」
"大陸間弾道光線"……
それで、南の厄災から北の厄災へ攻撃も可能と……
つまり、その間にある街なんかは普通に攻撃が届くと?
そんなの、例え僕じゃなくても普通に考えたら危険としか思えないんだけど……
『で、どうするヨ?……この提案、呑んだ方がお得ヨ?』
「……誰に聞いてるのかな?」
『そんなの、そっちのリーダー格……アーサードサンに決まってるヨ!』
「……やっぱりか……いやまあ、薄々そんな気はしてたけどさ……」
……要は、僕に決めさせたいのか。
提案を呑んで渾沌に窮奇を攻撃させるか、提案を拒否して地獄を継続させるか……
……けど残念、僕の中で既に答えは決まってるんだ。
『さあ、どうするヨ?』
「ふむ……提案には感謝するけど、今回はお断りさせて貰うよ」
『…………………は?』
僕は、ラビリーの提案を断った。
勿論、提案を呑んだ方が楽なんだろうけど……
「ごめんね?……ただ、僕としてはプレイヤーだけの力でこの勝負に勝ちたいんだ……」
『ぷ、プレイヤーの力だけって……アレ相手に勝てるビジョンが見えてるとでも言うつもりかヨ!?』
「ううん、見えてはいない。……このままじゃ、時間を浪費するだけで終わるだろう……」
『だったら、どうして……』
……ラビリーはきっと、本当に罪悪感から今回の提案をしたのだろう。
でも、レイドイベントでそれは野暮だ。
「元メンバーとはいえ、運営の介入でクリアするレイドイベントとか冷めるだけなんだ。……どうしても介入するなら、せめてシラを切らないと駄目だよ?」
『……ざ、残念だヨ……』
「本当に、善意を無駄にしてごめんね?」
『別に良いヨ。……だとしても、せめてヒントぐらい残したってバチは当たらないかヨ?』
ヒント……ヒントか……
それなら、まあ?
「分かった。……ただし、あくまでもヒントだけだからね?」
『感謝感謝だヨ。……ごほん……窮奇はどうしようもない暴君だけど、こいつにだってかつて精神面で弱い部分はあったんだヨ。……だけど、今の窮奇はそういった要素を持ってないヨ。……あれれ?……それ等はいったい、何処に行ったんだヨ?』
ープツン……
「……通信はこれで終わり、か……」
ふむふむ……
窮奇がかつて持っていた精神面で弱い部分が、今の窮奇には存在しない……
つまり、窮奇は弱さを克服したか、喪失したか、はたまた切り分けたか……
ん?
切り分けた?
「い、意味の分からないヒントでしたわね……」
「んな事より、こっからどうすんだ?……ぶっちゃけ、俺様はあのステージギミックみてぇな窮奇に挑むのもやぶさかじゃねぇんだが……」
「そうだね……僕も最初はそのつもりだったんだけど、作戦変更だ。……まずは、影奇の戦場が一段落するまで窮奇の足止めに専念するよ」
「……分かりましたわ」
「チッ、日和りやがって……」
そう言われても、今のままじゃ窮奇に勝てない可能性が高いからね……
……本当に、僕は駄目だ。
あんなに時間だけはあったのに、結局窮奇への対策は何も出来なかったんだから……
「……ムラザメさん、そちらは頼むよ……」
僕は静かに、そう呟いた。
……平凡なプレイヤーに過ぎない彼へ期待する事に、僅かな罪悪感を抱きながら……
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(源徳 村雨視点)
「シュゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
ーフッ……ブンッ!ブンッ!
「はははははははは!……遅いんだよノロマが!」
「隙ありでござる!」
ーブンッ!……ザシュッ!
「シュギャッ!?」
ははははははははははは!
何でだろうなぁ!
縁とヤってから、全てが遅く見えてアバターの肉体も早く動く!
行ける!
これなら行けるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
「影奇だったか?……お前の速さもまだまだだなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ーひょいっ!……ひょいっ!……ひょいっ!
「シュゥゥゥゥ……」
ははは!
影奇も俊敏に逃げ回る俺を見て怒って……ん?
怒ってる様には見えねぇな?
……というかまず、感情自体が読み取れねぇぞ?
どうなってんだ、こりゃ。
「再び隙ありでござる!」
ーブンッ!……ザシュッ!
「シュギャブッ!?」
……それはそうと、さっきから攻撃してる白無垢姿のプレイヤーは確かヘビイチゴだったか?
俺の記憶が正しければ、[猫田森さんファンクラブ]の主力プレイヤーだった筈だ。
……そんなビッグネームの割に、さっきから浅い攻撃しか出来てねぇけど大丈夫か?
なんて思ってたが、それは間違いだった。
「さて、そろそろでござるかな?」
「は?……お前、何を言って……」
「ガフッ!?……シュゥゥゥゥ……」
ーポタポタポタ……
「っ!?……影奇が吐血しやがった!?」
突然、影奇が吐血したのだ。
……さてはヘビイチゴ、お前が何かしやがったな?
「でゅふっふっふ……此度は特別にネタバラシしてあげるでござるが、拙者の刀はあの[神秘の呪宝]の1つ……[妖刀毒桃桜]という逸品でござってな?……特殊効果として、斬った相手に致死性の猛毒状態を付与するというものがあるんでござる!」
「うおっ、凄いしえげつねぇな……」
「そ~でござろ~?……でゅふふふ……それより、ここまで拙者と息のあった連携をとれるとは……もしや、ムラザメ殿こそが運命の……」
「うげぇ……結構ヤバい奴じゃねぇか!」
ヘビイチゴ、戦法も性格もヤバい奴だな……
出来る限りは関わりたくねぇかも……
あ、そんな事より影奇から目を離したらアウトだ。
しっかり見とかねぇと……
「シュゥゥゥゥ……ガフッ!……シュゥゥ……」
ーポタポタポタ……
「なあ、ヘビイチゴ?……致死性って割に死んでねぇんだが?」
「そりゃまあ、相手は北の厄災の片割れ……そう簡単には死なぬでござろうよ」
……俺が視線を戻すと、影奇は未だに吐血しているだけだった。
しかし動く余力はねぇのか、その場に鎮座したままで……
「うおぉぉぉ!影奇が動きを止めやがった!」
「今なら行ける!」
「あの2人には感謝だな!」
「漁夫の利サイコォォォォォォォォ!」
……当然、他のプレイヤー共がそんな一世一代のチャンスを見逃す筈がなかった。
「あ、おい待て……そいつを舐めてると痛い目に……」
「ムラザメ殿、無駄でござる」
「そうは言うが……あ、ヤバそうだ跳べ!」
「承知してるでござる!」
ーダンッ!
プレイヤーが影奇へ殺到する中、俺とヘビイチゴは上へと跳んだ。
その直後……
「シュゥゥゥゥ……シュシュ!」
ーブンッ!ぐにょ~ん……スパパパパッ!
「「「「「「は?」」」」」」
……影奇が腕を伸ばしながら振り回し、殺到していたプレイヤーを全て真っ二つにしてしまったのだ。
「ははは!……お前は何処ぞのゴム人間か!」
「ムラザメ殿、何言ってるんでござる!?」
ーシュタッ……
俺とヘビイチゴは高く跳んでいて難を逃れたが、こりゃマズい。
相手のリーチは想像以上だ。
「シュゥゥゥゥ……」
「ああ、せっかく動けなくしたというのに、相手はリーチを伸ばせるんでござるか……」
……さて、ここからどうするか……
敵は動けなくなった代わりに、腕を伸ばした。
……そんで、その瞳は相変わらず虚無で感情が読み取れねぇ……
「……な~んか、俺はどっかであの目を見た事があんだよな~……」
あの全てを諦め、投げやりになった様な虚無な目……
俺は何処で、あれを……
………あっ。
「ん?……ムラザメ殿?」
「そうか……そういう事か……」
見えたぜ、影奇の攻略法!
……そうと決まれば、行動あるのみだな!
俺はそんな事を心の中で思いながら、影奇へと足を踏み出した……
ご読了ありがとうございます。
今のムラザメはハイ状態であらゆる潜在能力が覚醒しています。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




