32.縁は迫る
そろそろリアル側もひとまずですが終わります。
(源徳 村雨視点)
「……ってな訳で、私は坊っちゃんのお相手を見繕うために派遣された者なのデッス……」
「そうか……」
俺は今、ランジェリー姿の縁からその正体について聞かされていた。
……まあ、俺だって本当に縁が左遷されただけのメイドだとは思ってなかったが……
それにしたって、現当主が直々にか……
「……思ったより、驚いてマッセんね?」
「そりゃ、ただ左遷されただけのメイドだなんて思っちゃなかったからな……ただ、俺の価値が予想以上に高かったのには驚きだが」
俺はてっきり、縁が何かやらかした末に左遷されて俺ごときの監視に任命された可哀想な奴だとばかり思ってたんだよな……
……うん、マジか……
「坊っちゃん、自分の価値を知って思うところはありマッスか?」
「今更思う事もねぇよ。……やけに丁寧に扱われてる理由が分かった程度でしかねぇ」
「そ、そうデッスか……」
「……んな事より、その格好は何なんだ?……ランジェリー姿とか、俺を誘ってんのか?」
この際、俺の種馬としての価値だとか縁の正体だとかはどうでも良い。
……それより、縁がランジェリー姿で居る事の方が気になるんだが!?
「ん~……これはあくまでも、坊っちゃんが女性に反応するかどうかを確かめるためデッスので、他意はないのデッス!」
「……女性に反応するか?」
「ええ、その……EDや同性愛者だって報告は上がって来てないとはいえ、確かめてみない事には確定は出来マッセんから……」
えぇ……
その確認をするためだけに、わざわざランジェリー姿になったのか?
「ちなみに、もしそこでその……正常に反応しなかったらどうなってたんだ?」
「え?……即座に今の暮らしとオサラバ、お先真っ暗な搾精部屋行きデッシたけど?」
「……あ、やっぱりこの待遇って俺が持ってる最高の遺伝子のお陰だったんだな……」
「そりゃそうデッス!……源徳一族が、何も成せない無能にこんな良い生活を許すと思いマッスか?」
「お、思えねぇか……」
し、知りたくなかった……
となると多分、俺以外の蟄居生活者達はほぼほぼ監禁されてるに等しい状態なんだろうな……
……源徳一族、身内だろうと無能に容赦がねぇ……
「というか、最高の遺伝子を持ってるからこそ蟄居生活中なのにネット上では自由っていう丁重な扱いを受けられて、尚かつ相手の女性だって選べてチョメチョメ出来るんデッスよ?……普通の無能がこんな生活を送れると考えてたとか、やっぱり坊っちゃんは馬鹿なんデッスか?」
「……否定は出来ねぇ……」
そうだよなぁ……
普通に考えたら、蟄居生活中なのにネット上での自由は保証されてて、種馬の筈なのに無理矢理あそこを搾り取られねぇとか、絶対何かあると思うべきだよな……
……後、あっさりスルーしたがこの世界にもチョメチョメって言葉は存在してんだな……
「あ、それと現時点で花嫁候補になってるお三方の情報をスマートウォッチに送信しとくんで、ご確認宜しくお願いしマッスね?」
「……確か、今一緒にレイドイベントに挑んでる3人の女性だったか?……腕っぷしはともかく、狂気と運の強さなんて遺伝子でどうこうなる要素じゃねぇと思うんだが?」
「……遺伝子の可能性は無限なのデッス!」
「お、おう……そういう事にしといてやる……」
グロサリーヌ、乱打羽さん、賽子丁子さんが俺の花嫁候補とか、失礼を承知で言えるなら複雑な心境になるな……
加えて、現当主様は縁まで花嫁候補に指名してるとか……
「ま、花嫁候補に関する詳細はおいおい話すとして……こんなところデッスかね?……じゃ、私はこれで失礼しマッス!」
「ああ、分かった。……ったく、現当主様も回りくどい事をするもんだ……」
無能には厳しいが、少しでも光るものがあれば厚遇する……
無能な俺ですら、最高の遺伝子を持ってるだけでこれ程の待遇になるんだからな……
ほんと、1歩間違えれば搾精部屋行きとか笑えねぇよ!
……とか何とか、話が終わった前提で色々と考えてたんだが……
「……本当に失礼しちゃいマッスよ?」
「ん?……まだ居たのか?」
縁は未だに部屋から出ず、こちらを見ていた。
……あれ?
縁が何故か不機嫌そうな表情をしてるんだが……
「……ハァ~……本っ当に坊っちゃんは……"据え膳食わぬは男の恥"って言葉知りマッセんか?」
「え?……でも、俺の反応見るだけなんだろ?」
「っ……ちょっと風呂入って来るんで、それまでに覚悟を決めとくと良いデッス!」
ーガチャッ……バタン!
「……………………は?」
何だこの理不尽……
いや、そもそも俺やあの3人に何の事前承諾もとってない辺り、源徳一族とその忠臣ってのはそういう奴等なんだろうな……
……さて、現実逃避はこの辺にして。
「……どうしたもんか……」
このまま行けば、俺は1時間もしない内に童貞を卒業する羽目になる。
縁はその相手として考えたら全く嫌じゃねぇんだが、源徳一族現当主の差し金とかいう最大にして唯一の不安要素がなぁ……
……どうしよう、マジで……
そんな事を考えながら、俺は呆然とするしかなかった。
そうして時が経つこと10分後……
ーガチャッ……
「……坊っちゃん、覚悟は決まりマッシたか?」
「チッ……本当に源徳一族とその忠臣ってのは強引な奴等だな……」
「まあ、坊っちゃんの気持ちだって分かりマッスけど……私にとって坊っちゃんは、気楽に付き合える上に結婚すれば余計な責任も負わずに済む良物件なんデッスよ!……ってな訳で、諦めて天井のシミ……は無いので素数でも数えてて欲しいのデッス!」
「……どうしてこうなった?」
「そんなの知りマッセんよ」
果たして、俺はどうするべきだったんだ?
逃げるのは無理、抵抗するのも後が怖い、まさに八方塞がりだ……
……いいや、諦めるのはまだ早い!
「ご、ゴムが無……」
「完備されてマッス!」
「お、俺も風呂に……」
「そう言うなら入って来てくれマッスよね?」
「……………………………………はい」
お、終わった……
もう逃げ道は存在しねぇ……
……うん。
「さ、風呂はマッハでお願いしマッスよ?」
「……優しく頼む」
「生憎、私も初めてなんで保証は出来マッセん!」
「…………………………」
こうして、俺は風呂場に直行した。
……これ以上は、何も考えねぇでおこう。
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(朝川 縁視点)
「……あ~あ、やっちゃいマッシた……」
即座にヤるつもりなんてなかった筈なのに……
何なら、坊っちゃんが無理矢理迫って来た時に備えて抵抗する気すら満々だった筈なのに……
……どうしてか、坊っちゃんを見てたら反応してるクセに襲って来ない事にイライラして……
「……何だか、陽吉様の掌の上でタップダンスしてる気分になりマッスね……」
あの人、絶対こうなるって分かってましたよね?
私は分かりますよ?
「本当に、私は何をやってるんデッスかね……坊っちゃんのお相手を見繕い、最高の遺伝子を次世代へ受け継がせるのが私の役目……そこから逸脱した訳ではなく、何なら役目に沿った褒められる行いの筈なのに……どうしてか、やらかした気しかしないんデッスよね……」
ま、こういう時は下手に考えても答えは出ませんし、ノリと勢いで乗り切りましょう。
「……乗り切れマッスよね?」
……うん、やっぱりやらかしたかもしれません。
そんな後悔を抱きつつも、私はその時を待つのでした……
ご読了ありがとうございます。
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