31.縁は思案する
前話に続いてリアル側。
(時は少し遡り、朝川 縁視点)
「んじゃ、俺は自分の部屋に戻るわ」
「分かりマッシた!」
……さて、坊っちゃんは自室へと戻りましたか。
これは当分戻って来なさそうですかね?
と、そんなタイミングでした。
ーピコン♪
「ん?……ふぅ、休む暇もないデッスね……」
私のスマートウォッチに入った、1件の通知。
それは私の唯一の主人であり、同時に源徳一族の現当主にして坊っちゃんの曾祖父にあたる御方……源徳 陽吉様からのメールでした。
「さて、拝見しマッスか……」
今となっては嘘偽りのない自身の口調と化した変な言葉遣いで話しながら、私はメールの文面を開きました。
そこに書かれていたのは……
《ふぉっふぉっふぉっ♪……記録に目を通したが、縁ちゃんは相変わらずじゃのう♪》
……余計なお世話だとしか言えない始まりの文章でした。
「……余計なお世話デッス……って、気にせず続きを読みマッス……」
《あ、今読むの辞めようとしたじゃろ?……これじゃから最近の若い奴等は……んま、儂も若い頃は似た様なもんじゃったが……》
「……あの、本当に何なんデッスか?」
……身も蓋もない事を言えば、基本的に陽吉様のノリはとてもウザいです。
どれだけウザいかと言えば、マトモに対応してたら胃薬を常用しかねないって程には……
……本人は大真面目に若者のノリへ合わせようとしてる分、だいぶタチが悪いんですけどね……
《大方、これを読んでる縁ちゃんは呆れとるんじゃろうな~♪……それはそうと、そろそろ本題に移るかのう♪》
「……やっと本題デッスか……」
《というのも、さっき秘蔵の部下達から報告が上がって来てのう♪……例の3人、ゲーム外での身元をようやっと突き止められたのじゃ♪》
「へぇ~?……思ったより早かったデッスね?」
あの3人……グロサリーヌさん、乱打羽さん、賽子丁子さんのリアルでの身元を突き止めるのなんて源徳一族にかかれば朝飯前とはいえ、予想以上に早かったですね。
……じゃ、結果を聞こうじゃありませんか。
《まず、破滅ヶ原☆グロサリーヌとか名乗っとる狂人の本名は滅本 黒佐 (19歳) で、職業はたいして売れてない駆け出し芸術家じゃな♪》
「芸術家……まあ、らしいと言えばらしいデッスね」
グロサリーヌさんのリアル職業は芸術家ですか……
加えて、肝心の芸術は売れてないと……
……先行き不安、ですね……
《次に、乱打羽とか名乗っとる腕っぷしが強そうな女子の本名は鋼村 乱波 (21歳) で、職業はアマチュアの女子ボクサーじゃ♪……それも既に幾つかの大会で優勝という結果を残しとる有望株で、かなり期待が持てそうじゃわい♪》
「……うおぉ……本当に強かったんデッスね」
グロサリーヌさんとは違って、乱打羽さんは将来有望ですか。
……う~ん、差が激しいですね……
《最後に、賽子丁子とか名乗っとるギャンブラーの本名は神捨 博未 (21歳) で、職業は無職……時折公営ギャンブルで荒稼ぎしておる様じゃが、社会人としては終わっとるのう……》
「……うん、方針の練り直しを検討しマッス……」
売れない芸術家、アマチュアの女子ボクサー、時折荒稼ぎするギャンブラー……
……乱打羽さん以外が致命的過ぎますよ!
《ううむ……縁ちゃん、本当に村雨坊の相手はこの3人で良いのか?……しっっっっっっかりと考え抜いて答えを出すんじゃぞ?》
「……だ~か~ら~、余計なお世話デッス!」
……いやまあ、陽吉様がこんな反応をされる理由も分かりますけど!
主に芸術家とギャンブラーが原因ですよね!?
……ただ、最終的には坊っちゃんとこの3人で子作りをして貰う事になるのであって……
しかも、3人の回答次第では無理矢理にでも坊っちゃんと子作りを……
……ええ、これ以上坊っちゃんに隠し通すのは無理がありますね。
《追伸、縁ちゃんもその気があるなら村雨坊の嫁になったって良いんじゃぞ?》
「本っ当に余計なお世話デッス!」
陽吉様はもう90歳を越えているというのに、未だに元気でいらっしゃいます。
……が、デリカシーは無いに等しいという地獄!
ぶっちゃけ、仕事でもなきゃ関わりたくありませんよ!
……ただまあ、この提案自体には一考の余地がありますね。
「私の優れた観察眼と、源徳一族最高の遺伝子……あまりにも掛け合わせ甲斐のある要素デッス!」
何処までも合理的感情から、私は最適解を導き出します。
……なんちゃって、実際は割と坊っちゃんを気に入ってるという点も大きいのですが。
「んじゃ、取り敢えずランジェリーでも着て誘惑してみマッスか……勿論すぐにヤるつもりは毛頭ありマッセんが、ちゃんと女性に性的興奮をするかは確認しないとなので……」
今更確認しないといけないのは億劫ですが、如何せんここまで怪しまれる行動は避けたかったので……
……それも、今日で終わりですが。
「全部話した後も、坊っちゃんとはこれまで通りの関係を維持出来ると良いのデッスが……流石に難しいデッスよね……」
多分、私に何かしらの裏がある程度の疑いは持たれていたでしょうが、果たしてどうなるやら……
「んま、なる様になれデッス!」
時にはノリと勢いが大切な時だってありますし、今がそうだと思って挑戦しましょうか。
……何か、これすら陽吉様の掌の上っぽくて嫌になりますねぇ……
考え過ぎですかね?
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(俯瞰視点)
とある豪邸、その奥座敷にて……
「ふぉっふぉっふぉっ♪……今頃、縁ちゃんは大胆な手に出ておるんじゃろうな~♪」
白く長い髭を生やした好々爺といった風貌の老人が、安楽椅子に座ってそう呟いていた。
「しっかし、縁ちゃんは何を思って霞ちゃんがラビリンスを使って作り上げたゲームなんぞを作戦実行の場に選んだんじゃ?……未知の技術で誤魔化しとるだけで、クソゲーなのは変わらんというのに……」
その老人……源徳 陽吉は疑問を口にしたが、それに答えられる者はこの場に居ない。
ただただ陽吉の独り言だけが、奥座敷に響くだけだった。
「……とはいえ、ラビリンスを使えば霞ちゃんの作るクソゲーですらパッと見はあそこまで神ゲーっぽいガワになるとはのう……儂も一般プレイヤーとしてログインした時は驚いたもんじゃよ♪……やはり、ラビリンスは上手く使いさえすれば全世界すらも手中に……っと、過ぎたる欲は身を滅ぼすと言うし、これ以上踏み込むのはちと早いかもしれんのう?……くわばらくわばら……」
誰に聞かせるでもなく、頭に浮かんだ言葉を淡々と言い続ける陽吉。
……が、急に眼光が鋭くなり……
「……となると、今は一族を更に繁栄させる方が先決じゃのう♪……村雨坊を筆頭に、一族の優秀な子種で孕ませ産ませ育てさせるのじゃ……増えた一族の制御は今よりも大変になるかもしれんが、儂の後継者なら難なく乗り越えられるじゃろうて♪」
そう、己の野望?を口にする陽吉。
それは無責任かつ大雑把な筋書きではあったが、彼自身は頭に浮かんだ言葉を淡々と独り言として喋ってるだけなので気にしていなかった。
「源徳一族次期当主にしてヤマト国内閣総理大臣を務める源徳 大地、ヤマト国経団連会長を務める源徳 星次郎、数多くのテレビ局や芸能事務所において筆頭株主を務める源徳 海遠、ヤマト国総合科学技術研究所の所長を務める源徳 雷光、ゲントクコーポレーションのCEOを務める源徳 霜助……あちこちに割り振った一族の精鋭とも言える息子達のお陰で、源徳一族はかつてない規模となっておる……こういう場面で選択を誤るのは、フィクションの中だけにして欲しいものなんじゃがのう……」
陽吉は、一族の精鋭とも言える自身の息子達の名を上げ連ねる。
その行為自体に、意味はなかった。
「せっかく儂がギリギリ生きとる代で一族最高の遺伝子と未知のオーパーツが手に入ったんじゃ♪……それこそ儂が上手く使わねば一族に失礼というもんじゃろ♪」
ーカチッ……
挙げ句の果てにそう呟いた陽吉は、頭にVRゴーグルを付けて安楽椅子にもたれかかった。
そして……
「さてと……そんな計画をいつ死ぬかも分からぬ身で悠長に進めとる場合でもないが、今は気晴らしに霞ちゃんの最新クソゲーでも楽しむとするかのう……」
……こう言い残し、陽吉の意識は〘厄災のアルケニカ〙の中へと旅立って行ったのだった……
ご読了ありがとうございます。
源徳一族、だいぶ国の中枢に入り込んでいます。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




