30.村雨は卑下する
ちょっとリアル側を描写。
(源徳 村雨視点)
「あっ……ちょっとヤバめデッスね……」
「ん?……んぐんぐ……ごくん……何かあったか?」
俺達が夕食のカレーライスを食べ始めてしばらく経った頃、突然縁がスマートウォッチから表示される画面を覗き込んで眉間に皺を寄せ始めた。
……ってか、縁は食事中にスマートウォッチを見るなって親とかに教わらなかったのか?
「あ~、その……ちょっと影鰐について情報の更新がありマッシて……」
「影鰐?……まさかあの暗殺竜、ガチで誰かに殺られちまったのか!?」
「いいや、それは違うと言いマッスか……確かに、坊っちゃんがログアウトしたであろう時間の直後、アーサードさんに並ぶレベルの激強プレイヤーが影鰐の所に来てるんデッスけど……そのプレイヤーも一撃で倒されちゃってマッスね……」
「何だ、激強プレイヤーって言われてるクセに負けやがったのか……そいつ、本当に激強プレイヤーなのか?」
俺や他プレイヤーならまだしも、アーサードさんに並ぶレベルが一撃で負けるって……
あり得ねぇだろ、どう考えても……
「えっと、その……ただそのプレイヤー、リスポーンする直前に【偽装開示】ってユニークスキルを使ってて……それで、影鰐にかかってた名称偽装なんかが解けたみたいなんデッス!」
「…………………は?」
え、影鰐に偽装?
何だそりゃ……
「そうして明かされた"隠密の暗殺竜 影鰐"の正体は、"隻影の分霊竜 影寄"というワールドエンド・ユニークモンスターだったみたいなんデッス!」
「………………………………ハァ!?」
「しかも、"悪逆の暴君竜 窮奇"が魂を分け与えた影そのものだって情報まで出回ってマッス!」
「………………………………マジで?」
え、暗殺竜が分霊竜で暴君竜の影でワールドエンド・ユニークモンスター?
……俺、ちょっと何言ってルカワカラナイ……
ヤサシクコロシテクレヨ?
「は~い、戻って来てくださいデッス!」
「はっ!……あ~っと……要は、それが理由でネットは大騒ぎって感じになってるんだな?」
「そういう事デッス!」
「……………よくもまあ、こんなクソゲーの新情報でそこまで騒げるもんだ……」
俺にとっちゃ、〘厄災のアルケニカ〙ってゲームはネタに出来ねぇクソゲーだ。
……だってのに、俺は何故か辞められずに居る。
まあ、それはそれとしてクソゲーである事実はどうしようもねぇので、そんなゲームの新情報で騒いでるネットにはドン引きしてるが。
「だからまあ、坊っちゃんはワールドエンド・ユニークモンスター相手にしてはよくやった方だと思いマッスよ?」
「あ?……慰めは要らねぇよ……」
「慰めって……これでも本心デッスよ?」
「……余計なお世話だ」
縁はここぞとばかりに俺を慰めようとして来たが、事実と結果は変わらねぇ。
いくら相手が規格外だったからって、囮を果たし切れずに何度も殺されたのは本当だからな……
……………どうせ、無能の俺には相応しい末路だよ。
「むぅ~……強情デッスね!」
「悪ぃな……だが、俺はそれを言い訳にするつもりはねぇぞ?」
「ぐぬぬ……本当に坊っちゃんは……」
その後、少し言い合いをしながらカレーライスを食べ終え、皿とスプーンを流し台へと運んだ。
そして……
「んじゃ、俺は自分の部屋に戻るわ」
「分かりマッシた!」
……俺は縁から逃げるかの如く、足早に自室へと戻ったのだった……
それから数分後、自室のベッドの上にて……
「うおっ……本当に騒ぎになってらぁ……」
俺は自身のスマートウォッチで現時点におけるネットの状況を覗き、その騒ぎの様子に軽く驚いていた。
……ま、そんな事はこの際どうでも良い。
「……いくら相手が悪かったとはいえ、何も出来なかった事実は変わらねぇ……無能の俺じゃ、何の役にも立てねぇんだ……」
クソが……
分かってる。
分かってるんだ……
俺ごときが何やったって、どうにもならねぇ事ぐらい。
何せ、今世も前世も俺は何1つ自力で成し遂げる事が出来なかったんだからな……
「今世こそ何かしら成し遂げてやる……とか幼少期は思ってたよ、クソがっ!」
前世は高校卒業と同時にニート街道まっしぐら、からの日頃の不摂生が響いて若くして病死……
今世は高校卒業と同時に人里離れた別荘に押し込まれ、世話係のメイドと2人暮らしの種馬確定コース……
……これなら、転生なんてしない方がマシだった。
「……ほんと、転生する時の記憶が朧気にさえなってなきゃ、神か何かへ恨みも持てたんだが……」
俺は、転生時の記憶が曖昧だ。
転生時で唯一覚えているのは、俺を転生させた神が俺を選んだ理由は、完全ランダムな上に暇潰しの観察目的でしかなかったという事だけだ。
……神からのお詫びでなければ、何かしら特別な理由があった訳でもねぇ。
所詮俺は、神の玩具でしかなかったってこった……
「それで送り込むのが科学の発展度以外これといって元の世界と変わらねぇ世界とか、本気で俺を観察する気あんのか?……って、暇潰しだっけか……」
そもそも本気じゃなかったな。
けど、普通はこれファンタジー世界とかゲームを舞台にした世界とかダンジョンが存在する現代風世界とか男女比の狂った貞操観念逆転世界とか……
もっと色々あっただろ!?
どうしてただただ科学が発展しただけの世界にしたんだよ!
……つっても、今挙げた世界への転生だったらすぐに死んでる自信はあるが……
「……どうせ前世のラノベに出て来る様なVRMMOが存在する世界なら、デスゲームと化したVRMMOにでも誘導すりゃ良かったろうに……よりにもよって〘厄災のアルケニカ〙を開発した霞とかいう奴は超が付く程のデスゲーム嫌いだぞ?」
現に霞はかつて……
『ゲームとは何回も繰り返し死にまくってナンボ、だからこそ1回こっきりのデスゲームなんてナンセンスで大嫌いなのだよこのカスがっ!』
……と、取材陣からのインタビューに残しているらしいしな。
ま、そんな霞から〘厄災のアルケニカ〙が出力される辺り、他にも色々と面倒な思想を抱えてる可能性が極めて高ぇけどな。
っと、そろそろ潮時か……
「ふぁ~……さてと、妄想もこのぐらいにして少し仮眠でもとるか……」
……俺は欠伸をしながら、今までの独り言を妄想だと言い切った。
何せ、ここは源徳一族が用意した別荘だ。
監視カメラや盗聴器が仕掛けられててもおかしくはねぇ。
……仕掛ける動機なんて、山程思い付くんでな……
とはいっても、俺がいくら考えたところで真相なんて分からねぇんだけどな?
「……ったく、俺は恵まれてんだか、それとも不幸なんだか……」
今の俺が送る生活は、まさしく理想的なニートそのものだ。
……無能に厳しい筈の源徳一族がやる事とは、到底思えねぇ。
何が目的だ?
俺をここまで丁重に扱う理由が必ずある筈……
……もう縁すら信じられねぇ。
あいつ、左遷されたメイドのフリした一族の回し者なんじゃねぇか?
なんて、思った直後だった。
ーコンコン♪
「坊っちゃん、少し良いデッスか?」
「あ?……何か用か?」
「いや~、用って程じゃないんデッスが……少し、腹を割って話しマッセんか?」
「……入れ、話はそれからだ……」
縁が動いた?
腹を割るって事は、何か思惑があるのは確定……
……どうせ俺に逃げ道なんてねぇんだし、ここは敢えて飛び込んでやるのも一興か……
「……じゃあ、入りマッスね?」
ーガチャッ……
「……ああ」
ドアノブが下がり、扉が開かれる。
そうして、縁は俺の部屋へと足を踏み入れた。
……何故か、黄緑色のランジェリーを身に着けて……
ご読了ありがとうございます。
村雨は所詮、中途半端な無能です。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




