28.エンムスビは哀れむ
このレイドイベント編に登場するプレイヤーは、モブも含めて上澄みばかりです。
(朝川 縁視点)
「それにしても……おいどんのパッシブ型ユニークスキル、【気炎万丈】が発動していながらこれ程の時間がかかるとは……運営が本来想定していた攻略方法はどうなってたんでごわすかね……」
「知らないデッス!」
……将軍竜 底岩の外皮、その一部を破壊した私達は、底岩へと群がるプレイヤー達を見ながらそんな会話を交わしていました。
なお、会話に出て来た【気炎万丈】というユニークスキルは、常時発動型のスキルで攻撃力を10万倍に上げて尚且つその時点で装備している武器・防具・アクセサリー等に[破壊不能]を付与するものだと権座右衛門さんからは聞いていたのですが……それでもこんなにかかるとなると、運営が本来していた想定がいかにクソかを思い知らされます。
とはいえ、そんな事はこの際どうでも良いとして。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「もう怖くねぇぞ!」
「弱点になった場所を狙え!」
「素材を落としやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
……底岩へと群がるプレイヤー達の目が完全にイッちゃってます。
まあ、さっきまで無敵の防御を誇っていた相手に弱点が出来たと考えれば、然もありなんといった感じではありますが……
「グォォォォォ!」
ーブンッ!バシィィィィィィン!
「「「「「「「ぐへっ!?」」」」」」」
「ま、そう簡単には行きマッセんよ……」
そのさっきまでが特異だっただけ。
……私が囮役に撤し、権座右衛門さんがその隙を狙う。
この役割分担だからこそ出来た話なのであって、大人数で押し寄せれば当然ながら底岩の尻尾ブンブンで吹き飛ばされます。
……しかし、そこは彼等も上澄みのプレイヤー。
「ビビるなぁぁぁぁぁぁぁ!」
「囲めぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「数の力を見やがれぇぇぇぇぇぇ!」
「グ……グォォ……」
彼等はまるでスズメバチへ群がって蒸し焼きにするというミツバチの如く、どんどんと底岩にしがみ付き始めたのです。
さっきまでと違ってダメージを与えられると分かった瞬間にこれとは……流石はこのゲームを未だにプレイしている猛者達です。
「いや~、流石の将軍竜もあの数に群がられると攻撃が追い付かないみたいでごわすね~!」
「……取り敢えず、私達も行きマッスか!」
んじゃ、私達も素材が欲しいので行きますか。
「ふぅ……チェストォォォォォォォォォ!」
ーブンッ!……ドゴォォォォォォォォォォン!
「食らえデッス!」
ーブンッ!……ドンッ!
「あ、ズリィぞてめぇ等!」
ーブンッ!……ザシュッ!
「私達だって!」
ーブンッ!……ボンッ!
次々に群がるプレイヤー (※私を含む) により、どんどんと外皮が割れた部位……底岩の腰辺りへと攻撃が加えられていました。
……打撃、斬撃、魔法……
ありとあらゆる攻撃が、弱点と化した腰へと投入され続けました。
「グォォォォォォォォォォォ!」
ーブンブンッ!ごろごろごろ……
「「「「「うんぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」
勿論、その最中で尻尾ブンブンや寝転がりからの押し潰しなんかによるリスポーンだって何度も経験しましたが……イベントエリアではデスペナによる持ち物ロストが免除となっているので気にする必要もなく。
リスポーンしても即座に舞い戻って底岩へと群がる一連の行動をひたすら繰り返していました。
やがて……
ーピロリン♪
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[レイドボスの体力減少を確認しました]
個体名:猛攻の将軍竜 底岩
総HP:600億
残りHP:450億
残りHP割合:75%
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「……ん?」
「うむ、意外と早いでごわすな?」
……底岩の体力が25%も減った通知が入りました。
いやまあ、堅牢な外皮と違って内皮は脆いみたいですからね……
そこを集団でリンチされたらすぐに減るというものでしょう。
とか呑気に思っていると……
「グォォ……グォォォォォォォォォォォ!」
ーピキピキピキ……ピキッ!
「「「「「「「「「ん?」」」」」」」」」
何故か、弱点となった腰からヒビが広がり始めたのです。
……っ!
これはマズいです!
「皆さん、今すぐ離れ」
「グォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
ーパリィィィィィィィン!ヒュンヒュンヒュン!
「「「「「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」
「「「「「あぶしっ!?」」」」」
……やはりと言うべきか。
突如として底岩の外皮が弾け飛び、まるで弾丸の如くプレイヤー達を貫いて行ったのです。
「……ハァ……ハァ……間一髪で回避が間に合いマッシた……」
「奴にこんな攻撃手段があったとは……もっとも、ここまで出さなかった辺り奴からしても切りたくない手札だったみたいでごわすが……」
ええ、そうでしょうね。
何せ、頼みの綱とも言える鎧代わりの外皮を全てパージして無防備になる技です。
……これを残りHP割合が75%で切って来るとは、向こうも余裕がなさ過ぎでは?
「グォォォォォォォォォォォ!」
ードシッ!ドシッ!ドシッ!
「来たでごわす!」
「迎え撃ちマッス!」
余裕がなくなった底岩は、外皮が無くなり全身脆そうな内皮の状態で私達へ突進して来ました。
……で、そこからはもう言葉に出来ない泥試合でした。
「グォォォォォォォォォォォ!」
ーブンブンッ!ガブッ!ガブッ!
「おりゃおりゃおりゃぁぁぁぁぁ!……いい加減くたばれデッス!」
ーブンッ!ドンッ!ブンッ!ドンッ!
「チェストォォォォォォォォォ!」
ーブンッ!……ドゴォォォォォォォォォォン!
「さっきはよくもやってくれたなぁぁぁぁ!」
ーブンッ!……ザシュッ!
「死んでよぉぉぉぉぉぉ!」
ーブンッ!……ボンッ!
底岩が尻尾ブンブンや噛み付き (※全て即死技) で攻撃して来る中、私達はリスポーンを繰り返しながら応戦し続けました。
「食らえ、【ソルトクラッシャー】!」
ーガンッ!
「【特攻彗星】じゃい!」
ーヒュゥゥゥン……ドンッ!
「恥を捨てるぜ、【ポイズンタン】!」
ーぺろぺろ……
「グ……グォォ……」
各プレイヤーが各々のユニークスキルやユニーク魔法で堅実にダメージを与えていき、底岩はどんどんと追い込まれる……
底岩は元々の戦闘方法が堅牢な外皮による防御で押し切るタイプだったが故に、一気にプレイヤーを殲滅するのが可能な攻撃を持っていなかったのが敗因と言えましょう。
一応即死技とはいえ、ただの尻尾ブンブンや噛み付き如きで何十……いえ、何万人も居るプレイヤー達を削り切るのは不可能な話ですからね。
それこそ、他の重臣みたく大量殲滅や素早い動きが出来れば話は違ったというのに……外皮までパージしてしまった今の底岩は、ただのデカいだけの的と化していました。
ーピロリン♪
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[レイドボスの体力減少を確認しました]
個体名:猛攻の将軍竜 底岩
総HP:600億
残りHP:300億
残りHP割合:50%
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「……だとしても早過ぎマッセん?」
「ぶわっはっは!……こんなバランス崩壊ゲームで上澄みやってる奴等に集団リンチにされちゃ、いくらレイドボスでもこうなるでごわす!」
「そ、そうかもデッスが……」
恐らく、本来の想定ではランダムに弱点部位に当たった攻撃のダメージが蓄積して外皮が割れる展開になる筈だったんでしょうが……私がピンポイントで弱点部位を見抜き、攻撃特化の権座右衛門さんが外皮を割ってしまった事でこうなったと……
……それにしたってですね……
「グォォォォォ!」
「……防御特化のレイドボスが要の鎧を剥がされたら、まあ見るも無惨な有り様デッスね……」
「……何か、見てて哀れでごわすな……」
集団リンチに遭ってるレイドボスとか、絵面が最悪極まりないんですよ……
とか考えながら、私達もそのリンチに加わってるんですけどね?
そして、そんなこんなで1時間が経過して……
流石にHPを減らすごとに底岩の猛攻は激しくなったものの、どうせ最初から即死技ばかりだったためにそこまで大きな問題が発生する事もなく……
「グ……グォ……」
ードシィィィィィィン!
「「「「「ん?」」」」」
ーピロリン♪
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[猛攻の将軍竜 底岩が討伐されました]
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「え、もう終わりデッスか?……ほんと、鎧が剥がれてからは呆気なかったデッスね……」
「ある意味、レイドイベントってこうじゃなきゃでごわすな……」
……あっさりと底岩攻略が完了。
いやほんと、ゲームバランスをミスるにも程がありますが!?
多分、この後の炎上は不可避でしょうね……
「……お、報酬として[【硬岩突破】の指南書]と大量の素材が手に入ったでごわす!」
「お、それは良かったデッス!……さて、かく言う私の報酬は……ん?……[【砕岩打槌】の指南書]と大量の素材デッスね……」
結果として、私達はユニークスキルの指南書と大量の素材を手に入れた訳ですが……明らかにユニークスキルとかユニーク魔法の名前が何とも言えないのばかりなのは心配になりますね……
まあ、それはともかく他の皆さんは大丈夫でしょうか?
ご読了ありがとうございます。
運営本来の想定では外皮を破るまでに時間がかかる算段だったため、外皮が破られた後はあっさりHPが減る様にデザインされていました。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




