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27.権座右衛門はかち割る

今度はエンムスビこと縁の戦場。

(朝川 縁視点)


レイドイベント開始からどれだけ経ったか分からない今この頃……


さっきグロサリーヌさんが担当していた道化竜の討伐通知が入りましたが、対する私の相手はまだまだ健在。


このままじゃ、マズいですね……


「……とか、考えてる余裕もなさそうデッス!」


「グォォォォォォォォォォォ!」


ーブンッ!ブンッ!ブンッ!


「尻尾ブンブンはもう良いデッス!」


うおっと!?


……やっぱり油断も隙もありません!


もしこいつの相手をしてるのが私だけだったなら、今すぐにでもリスポーンしてもおかしくないですからね!?


ほんと、1人(・・)じゃなくて(・・・・・)良かったです。


「っ……チャンス到来デッスよ、権座右衛門(ごんざえもん)さん!」


「承知でごわす……チェストォォォォォォォ!」


ーブンッ!……ドゴォォォォォォォォン!


「グォォッ……」


今現在、私と共に将軍竜 底岩を相手にしているプレイヤーはたった1人……この権座右衛門さんという鎧武者(よろいむしゃ)ジョブの方だけでした。


……っと、ここで〘厄災のアルケニカ〙における武士系ジョブについて考え直しておきましょう。


基本的に、〘厄災のアルケニカ〙において武士みたいなジョブは2つ。


1つは攻撃力と防御力が要の鎧武者(よろいむしゃ)


もう1つは攻撃力と素早さが要の武士(もののふ)


この内、権座右衛門さんは前者でしたが……扱う武器は、太刀なんかじゃありませんでした。


「ふぅ……後もう一頑張りで、あの鎧みてぇな皮膚も貫けそうでごわす!」


そう語る権座右衛門さんが握っていたのは、太刀の形をした鉄の棒……


つまり、刀を模した金砕棒だった訳です。


「……それは嬉しい報告デッスね!」


「ぶわっはっは!……おいどんだけじゃ、ここまで来れなかったでごわすよ!」


「そこまで言われる程の活躍、私はしてない筈なんデッスが……」


さて、それはそうと絶賛活躍中な権座右衛門さんのアバター、見た目は力士体型の中年男性が戦国武将みたいな甲冑を着ているって感じで、一般プレイヤーからは怖がられてました。


まあ、普段から魑魅魍魎みたいな人達ばかりの源徳一族を仕事相手にしている私にとっては、そんな権座右衛門さんの威圧感も赤子同然でしたけど。


とはいえ、この思考はひとまず置いておいて……


「謙遜は要らないでごわす!……っと、そういえば無駄話に花を咲かせている場合じゃあなかったでごわすな!」


「……そうデッシたね……」


そう言って、私達は体勢を立て直しました。


しかし……


「グォォ……」


「……来ないでごわすな……」


「来ないデッスね……」


肝心の将軍竜は自身を守る鎧とも言える皮膚にヒビが入ったのを気にしてか、弱腰になっていました。


後、それとは関係ない事な上にだいぶ憶測混じりではありますが……


……多分、権座右衛門さんはネナベ(・・・)です。


というのも権座右衛門さん、基本的な動きは男性っぽいものの、細かな動作が女性っぽいというか……


かといって、オカマとは違う……まるで、男性の体に慣れていない女性と言うべきか……


「……エンムスビ殿、そんなにおいどんをジロジロ見て、何か気になる事でも出来たでごわすか?」


「あ、いや……間違ってたら悪いんデッスけど、権座右衛門さんのリアルって女性デッスか?」


「っ!?……驚いたでごわす、まさかおいどん……いや、私の性別を言い当てるなんて……」


「……やっぱりデッシたか……」


権座右衛門さんの口調が変わり、いかにも女性っぼい話し方になりました。


……声は野太いままですが、これも恐らくボイチェン機能でしょうし……


「ゴホン!……やはりエンムスビ殿は観察眼(・・・)に優れているんでごわすな?」


「……何の事やらデッス」


「とぼけても無駄でごわす。……そもそも、おいどんに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()殿()でごわすよね?」


「うぅっ……」


……ええ、認めるべきでしょう。


私の観察眼は、誰よりも優れていると。


ですが、それは業務上の秘密にも繋がります。


……キャラ付け(・・・・・)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだという秘密に……


「ま、変に詮索はしないでごわすが……その代わり、おいどんを詮索するのもナシでごわす」


「分かりマッシた……」


私の秘密は、源徳一族の中でもトップシークレットに分類されます。


源徳一族としても、一族基準で落ちこぼれも良いところな坊っちゃんが最優秀な遺伝子を持っている種馬だと分かった時は複雑な気分だったのでしょうね……


坊っちゃんはその事実を知りませんし、今住んでる別荘の周りにどれだけの護衛が潜んでいるかも気付いてない辺り気付く事は未来永劫になさそうですが。


……なので、このゲームを坊っちゃんへ薦めたのも半分は打算ありき。


普段は表舞台に出られない坊っちゃんを他人と交流させられると共に、より良い子供を作れそうな女性を探せるのですから。


現に、もう3人も花嫁候補が見つかっています。


それぞれ狂気、腕っぷし、運の強さと源徳一族が欲して止まない要素を持っている良物件。


この方々を逃す手はないと、現在進行形で現実の彼女達へ王手をかけている最中で……


………………っと、思考が大幅に脱線してしまいましたね。


「……グォォ……」


「ふむ……おいどん達を警戒しちゃってるでごわすな……」


「多分、これまでヒビなんて入った事すらなかったんデッショう。……だからこそ、1度小さなヒビが入っただけで及び腰になる……」


さて、ここからは一気に行きましょう。


「グォォォォォ!」


「ふぅ……チェストォォォォォォォォォォォォ!」


ードシッドシッ……ドゴォォォォォォォォォォン!


「グォェッ!?」


ーピキピキピキッ……


再度轟く轟音と、何かにヒビが入る音……


権座右衛門さんがヒビのある箇所に与えた将軍竜への攻撃は、ヒビを広がらせる事に成功しました。


「じゃ、私も囮役頑張りマッスか!」


ータッタッタ……


かく言う私も囮役として将軍竜の周囲を走り回り、精一杯の撹乱をします。


「ふんすっ……チェストォォォォォォォォォ!」


ーブンッ!……ドゴォォォォォォォォォォン!


「グォェッ!?」


ーピキピキピキッ……


現状、ヒビを広げるのが私達に出来る限界です……


……それでも、折れる訳にはいきません!


「竜さんこちら、手の鳴る方へデッス!」


ーパンッ!パンッ!


「グォォ!」


将軍竜 底岩は、いくら本質的に厄介なのが権座右衛門さんだと気付いていても私を無視出来ない。


それ程までに、賽子丁子さんが行った全ステータスバフの代価は重いみたいです。


「隙あり、チェストォォォォォォォォォ!」


ーブンッ!……ドゴォォォォォォォォォォン!


「グォォッ!」


「ついでに私の攻撃も食らえデッス!」


ーブンッ!……ぽすん……


「グォ?」


悲しいかな、私の木槌による攻撃じゃ駄目みたいです。


……ま、そんなの最初から分かってましたが。


「権座右衛門さん、今デッス!」


「余所見厳禁、チェストォォォォォォォォォ!」


ーブンッ!……ドゴォォォォォォォォォォン!


だからこそ、これも囮。


私へ注目を集めて、権座右衛門さんが攻撃する時間を稼ぐただそれだけのため。


「グォゲェッ!」


ーピキピキピキッ……パリン!


「っ!……外皮の一部が割れたでごわす!」


「よしっ……それじゃあ皆さん、楽しい楽しい集団リンチの始まりデッスよ~!」


……将軍竜戦は、ここからが本番。


レイドイベントらしく、割れた外皮に集団で攻撃を与えてダメージを稼ぐフェーズ……


「ぶわっはっは!……エンムスビ殿、ここからが本番でごわすよ~!」


「なっ……確かにテンションはハイになってマッスが、そのぐらい百も承知デッス!」


……とか何とか心の中では冷静に考えつつも、やはり場の熱狂は凄まじいもので私もテンションが振り切れてハイになっていました。


ってな訳で、もう一踏ん張り行きますか~!

ご読了ありがとうございます。


なお、運営が本来していた想定では他より脆い弱点部位にランダムでプレイヤーの攻撃が当たってダメージ蓄積→破壊って流れで、かなり時間がかかる予定でした。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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