3.ムラザメはログインする
主人公は最強にはなれませんし、何なら上位層に食い込めるかすら怪しいかも……
(源徳 村雨視点)
利用規約を読み始めて数分後……
「な、長かった……けど、これでようやく始められるぞ……」
たった数分がかなり長く感じられたが、俺はようやく利用規約を読み終えてゲームを開始した。
すると、周囲の風景がガラッと変わり……
ーワイワイ……ガヤガヤ……
「おぉっ……まさしく賑やかな中世の噴水広場って感じの場所に出て来たな……」
ゲームにログインした俺が出た場所は、中世の都市にある噴水広場といった感じの場所だった。
……にしても、本当に現実と間違えそうなレベルで綺麗だな……
人によってはこの時点で感動するってレビューも納得だな……
とか何とか思っていると……
「あ、坊っちゃんも殆んど変えなかったんデッスね!」
「その変な口調は……って、お前も大概だろ!」
背後から声をかけられ、そちらを向いた俺が見たのは……俺よりも変化のない縁の姿だった。
いや、髪色そのまんまで顔も隠してないとか、ネットリテラシー大丈夫か?
「心配ご無用、私は顔がバレて困る事なんてありマッセんので!」
「だからってな……」
「それより、坊っちゃんはジョブ何にしたんデッス?……ちなみに私は重戦士デッス!」
「俺は盗賊だ……って重戦士!?」
縁が選んだジョブである重戦士は、主に大剣や斧、ハンマーなんかを使う戦闘スタイルだった筈だ。
……って、別にそこまで意外でもねぇか?
「え、何を驚いてるんデッスか?」
「いや、最初は意外に思えてな。……でも、よく考えたらお前にお似合いかもしれん」
「当然デッス!……私、敵はハンマーでぶっ潰してやる主義なんで!」
「どんな主義だよ……」
そんな事言われたら普通に怖いだろ……
「ま、それはさておき……坊っちゃんのプレイヤーネームはムラザメっていうんデッスね?」
「ああ、まだ使われてなくて助かったな」
「そうデッスね。……あ、私のプレイヤーネームはエンムスビっていいマッス!」
「え、エンムスビって……呼びづらい名前だな」
縁って名前から連想したんだろうが、それにしたってだな……
「ってな訳でムラザメさん、一緒にチュートリアルこなしちゃいマッスよ!」
「わ、分かった分かった……ったく、だいぶ興奮してるな?」
「そりゃしマッスよ!……私もいずれは攻略最前線のクランに合流して、ワールドエンド・ユニークモンスターを倒してやるんデッスから!」
「あんまり大口を叩くんじゃねぇよ。……ワールドエンド・ユニークモンスターなんて攻略最前線の四大クランですら未だに倒せてねぇってのに……」
縁改めエンムスビはワールドエンド・ユニークモンスターを倒すだなんて大口を叩いちゃいるが、実際は攻略最前線の四大クランですら倒せてねぇのが現状だ。
なお、ワールドエンド・ユニークモンスターの内訳としては
・北の厄災 [悪逆の暴君竜 窮奇]
・南の厄災 [終末複合戦艦 渾沌]
・東の厄災 [貪食の大巨獣 饕餮]
・西の厄災 [蠢く屍の軍勢 檮杌]
となっており、その異名と名前から"黙示録の四騎士"と"四凶"をモチーフにしているのが丸分かりだ。
……というか、リアルのこの世界にも"黙示録の四騎士"や"四凶"、ついでに"四聖獣"だったりの概念があるんだよなぁ……
歴史からしても全然違うのに、いったいどうなってんだか。
「……そ、そりゃ最前線のクランでも倒せてないかもしれないデッスけど、こういうのは主人公が来た途端にクリア出来るってお約束が……」
「エンムスビ、お前は俺や自分が主人公だと思うか?」
「……お、思わないデッス……」
「だろ?……第一、最前線の四大クランなんて俺達なんかよりずっとゲームに向き合ってるに決まってんだろ?」
「お、おっしゃる通りデッス……」
勿論、その論理がこのゲームでも当て嵌まるかは謎だが。
……それでも、俺達なんかよりずっと強いのは確かだ。
「北の[王正騎士団]、南の[機道兵団]、東の[猫田森さんファンクラブ]、西の[黒塗旅団]……これ等の大規模クランが3ヶ月かけて今の規模になるのだって、そう簡単な話じゃなかったらしい……俺達も同じで、地味にコツコツ頑張るしかねぇんだ」
「そ、その通りデッスね……うん、これは私の覚悟が足りなかったデッス」
ならまずそのキャラ付けどうにかしろ……
そう言いかけて、言葉を飲み込む。
多分、どれだけ言っても無駄だろうからだ。
とまあ、それはさておき。
「……にしても、改めてこのゲームにおける攻略最前線の四大クランは何というか……」
「ムラザメさんの言いたい事も分かりマッスが、こんなゲームで上に立つぐらいデッスからね……」
このゲームにおける攻略最前線の四大クランは、まあ何というかクセが強い。
・王道な騎士団のロールプレイをしている[王正騎士団]。
・ビーム銃を始めとした機械兵器を用いる[機道兵団]。
・対人戦闘特化の黒ずくめ集団こと[黒塗旅団]。
・登録者数10万人越えの人気Vtuberである"猫田森さん"とそのファンで構成された[猫田森さんファンクラブ]。
……この四大クランが、現在の攻略最前線となっている。
いや、[猫田森さんファンクラブ]だけ異質過ぎる……
「……うん、どうせ俺達みたいな新人プレイヤーには縁のない話だろうし、俺達は俺達で楽しむとするか……」
「うぅ……合流して活躍したかったデッス……」
「諦めろ。……ってか、てっきり混沌と化してるかと思ってたが平和そのものだな?」
「そりゃここはバトル禁止のセーフゾーンだから当然デッス!……なので多分、街の外はヤバい事になってる筈デッス……」
なるほど、街の中はセーフゾーンだから平和だが、街の外がどうなってるかは分からねぇと……
ーピロリン♪
……ん?
「……なあ、俺の案内画面にチュートリアルは街の外って案内出てるんだが……」
「奇遇デッスね、私もデッス!」
「……取り敢えず、チュートリアルまでは出来るよな?」
「そりゃ流石にそこは大丈夫な筈デッス!……終わった瞬間に地獄見そうデッスが……」
恐らく、詰みにだけはならない様にされてる筈なので、チュートリアルまではOKな筈だ。
……その後が怖いが。
「えっと、じゃあ最初に配布されてた有り金で装備整えるか……」
「そうしマッスか……今の私達、普通にモブ村人みたいな服装デッスし……」
まずは装備。
そう決めた俺達は、各々数分かけて防具と武器を初期配布の有り金で買い漁った。
……結果、手持ちの金が0になったが。
で、装備を整えた俺達は……
「……さっさと稼がねぇと、本気でマズいぞ」
「革の防具と低ランク武器……インフレしまくってるであろうこのゲームでコレはキツいデッス!」
……2人とも防具は革製、武器も俺は低ランクのダガーナイフ、エンムスビは低ランクの木槌と、あまりにも先行きが不安になる有り様だった。
しかも、このゲームは3ヶ月程度で相当インフレが進んでそうなので尚更だ。
「……ほんと、何でこんなゲームを全世界とはいえ300万人もやってんだよ……」
「まあまあ、まだ何もしてないんデッスから、やってみたら案外ハマるかもデッスよ?」
「だと良いんだがな……」
さっきのワールドエンド・ユニークモンスターや攻略最前線の四大クランなんかについては面白そうだったんで情報を仕入れてたが、いざ自分がやるとなると憂鬱になるな……
……これアレだ、人のゲームやってるのを見るのは楽しいけど、自分がやるのは嫌っていう……
「では、行きマッスよ!」
「……いい加減、その口調もどうにかしろよ……なんて言っても無駄なんだろうな……」
そうして俺達は、街の外へと向かった。
……あ、どうも1度行けばワープ装置が使えるっぽいな……帰りはワープで帰るか……
ご読了ありがとうございます。
念のため言っておくと、主人公は生粋の善人ではありません。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




