21.重臣達は邂逅する
レイドバトルですが、バトル描写はお察しです。
(源徳 村雨視点)
……ったく、こうなっちまったら大人しく囮に撤するか……
「んじゃァ、早速囮としての誰が何処に行くか決めるかァ!」
「……ここに居るのがアーサードさん含め6人で、レイドボスは5体……つっても、俺の考えが正しけりゃ今の窮奇は倒せねぇと思うが……」
「やっぱり、ムラザメさんもそう思うかい……僕も何となく、そうじゃないかと思ってたよ」
現状、この戦場に居るレイドボスは5体。
底岩、才智、恐悦、影鰐、そして窮奇……
だが、このイベントの目玉とも言える窮奇が他のボスより先に倒せるとは思えねぇ。
「……となると、窮奇戦を想定してアーサードさんは待機させておいた方が良さそうだな……」
「あ、ウチも戦闘は無理やから抜いといて~な」
「……これで4人と4匹か……誰が何処に行く?」
ぶっちゃけ、これはレイドバトルだ。
囮の俺達には派手に活躍する必要も義理もねぇが、やっぱり引き付けるにあたって相性差はあるだろう。
……そうして俺達がレイドボスの注意を引き付けている間に、他の山程居るプレイヤー共がレイドボスを集団リンチの刑に処すってのが最善策だ。
「ほうほう☆……なら、ボク様は道化竜をどうにかしようかな☆」
「道化竜?……確か、あの道化師みてぇなワイバーンの事だったよな?」
俺はグロサリーヌの提案を聞き、戦場に居る道化竜を見てみる。
「ピ~ッチャチャチャ!」
……道化竜は他のレイドボス共と比べて小柄ではあるものの、やはり侮れそうな相手には見えねぇ。
その体には道化師の様な模様と装飾が施され、大きな赤い球体の上で不気味な笑い声に似た鳴き声を上げていた。
しかし、そんな事より気にすべき事があった。
「ん?……おい、何か道化竜が居る辺りにプレイヤーが集まり始めてねぇか?」
「おっと?……もしかして、この中で報酬が美味いのって道化竜だったのかな?」
「ケッ!……最初に狩られる枠は道化竜かァ」
複数のボスがひしめくタイプのレイドイベントにおいて、報酬が美味いレイドボスは真っ先に狩られる傾向にある。
だから、今回もその類いかと思ったのだが……
「……んん?……何か、あのプレイヤー達喜んでマッセんか?」
「言われてみりゃそうだな?……あそこで良い素材でも拾えたか?」
「にしては、攻撃がそこまで通ってる様にはァ……っておい待てェ!」
「うおっ!?……いきなり大声出したりしてどうした?」
……プレイヤー達の異様な喜び様を不思議がっていた俺達だったが、急に乱打羽さんが大声を上げた。
「チッ!やられたァ……あの道化竜とかいうレイドボス、攻撃されてねぇのにドロップ品をばら蒔いてやがる……」
「ハァ!?」
「マジで言ってマッス!?」
ドロップ品のばら蒔き……
本来、このレイドイベントではレイドボスへ攻撃を当てるだけでドロップ品が手に入る。
だってのに、道化竜は攻撃を受ける前からドロップ品をばら蒔いてるだと!?
「不思議だったんだァ……あそこだけプレイヤーが他より多い割に、道化竜に攻撃してる様子がねぇってなァ……大方、あそこのプレイヤーは口を開けて待ってるだけで餌が手に入る小鳥みてぇな事になってるってところかァ……」
「そ、それってつまり……」
「あァ……多くのプレイヤーが道化竜の所へ殺到して他が手薄になってやがらァ……しかも道化竜は全くの無傷ってオマケ付きィ……」
「終わってるな……」
本来、報酬が美味くてプレイヤーが殺到するタイプのレイドボスは、多くのプレイヤーが殺到する分すぐに倒れる。
なのに、道化竜は自ら報酬をばら蒔く事で攻撃を受けねぇ様にしてやがると来た……
「加えて、他の3匹も厄介だァ……」
「攻防しっかりした将軍竜に、様々な魔術を扱う宰相竜、そして影を泳ぐ暗殺竜……僕も初見だけど、あまりにも厄介極まりない……」
「ほな、さっさと組分けしよか?」
「異議なしだァ!」
……そこから少し話し合いをし、誰がどのレイドボスを担当するかが決定した。
そうして割り振られた担当だが、エンムスビが将軍竜、乱打羽さんが宰相竜、グロサリーヌが道化竜、そして俺が暗殺竜の担当となった。
……んじゃ、ちょっくら頑張って来るか!
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(俯瞰視点)
戦場の左翼部中央寄りにて……
「グォォォォォォォォォォォォ!」
ーブンッ!ブンッ!ドシィィィィィン!
「うぎゃぁぁぁ!?」
「こっち来るんじゃねぇぇぇぇぇ!」
「硬ぇぇぇぇぇ!」
……ここで暴れていた猛攻の将軍竜 底岩は、長年に渡り窮奇の一番槍として敵を葬って来た猛者だった。
その肉体はまさに岩の鎧を纏った巨大なティラノサウルスといった風貌であり、その体高は3階建ての建物と同じ高さを誇る。
そんな怪物を前に、プレイヤーは何一つ決定打を与えられずに居た。
と、そこへ……
「うおぉぉぉぉぉ!……お命覚悟デッス!」
ードンッ!
……木槌を持ったエンムスビが現れ、底岩の鎧へ木槌を振り下ろしたのだ。
もっとも……
「グォォォ?」
「あ、すぅ~……優しく殺して欲しいデッス……」
「グォォォォォォォォォォォォ!」
ーブンッ!ドンッ!
「ぶぼべっ!?」
……木槌程度でそこまでダメージも与えられなかったエンムスビは、そのまま底岩の尻尾に吹き飛ばされていた。
同時刻、戦場の右翼部中央寄りにて……
「ガガガ……」
ードンガラガッシャァァァァァン!
「おんぎゃぁぁぁぁぁ!?」
「駄目だ近付けねぇ!」
……ここで暴れていた全知の宰相竜 才智は、どのドラゴンよりも窮奇が信頼を置いている忠臣だった。
その風貌は白く長い髭を生やした青いドラゴンであり、その体高も3階建ての建物と同じ高さだった。
そんな才智は様々な魔法を駆使し、プレイヤーを次々に葬り去っていた。
と、そこへ……
「ハァ……こういうのは主義に反するんだがなァ」
ーコキッ……コキッ……
「っ!?……おい、どうして聖職者系ジョブのプレイヤーが前線に出て来てるんだ!?」
……不機嫌そうな乱打羽が、指を鳴らしながらやって来たのだ。
「ガガガ……」
「あァ?……何言ってんのか分かんねぇよォ?」
「こ、このプレイヤー何者だ?」
乱打羽はまっすぐに才智を見据え、同時に才智も彼女を睨んでいた。
「ガガガ……」
「チッ!……んじゃ、老人狩りの始まりだァ!」
そうして、乱打羽は足を踏み出した。
……握った拳を、振り上げながら。
同時刻、戦場の右翼部外郭にて……
「ピ~チャチャチャ!」
ーポイポイポイポイポイッ!
「うおぉぉぉぉぉ!」
「待ってるだけでアイテムが落ちて来やがる!」
「道化竜様ばんざ~い!」
……ここで暴れていた?爆笑の道化竜 恐悦は、かつて窮奇を爆笑させた事もある最高のエンターテイナーだった。
その風貌は全身に道化師の様な模様と装飾が彩られた、ちょっとした平屋サイズの小型なドラゴンであった。
そんな恐悦は大玉に乗り、次々にアイテムをプレイヤーへとばら蒔いていた。
と、そこへ……
「ハ~ッハッハッハ☆!……不死鳥の座布団は分度器の産業革命☆!」
「「「「「「……は?」」」」」」
……変な事を言いながら、グロサリーヌが走って来たのだ。
「大きな釣り針は三回忌のディーゼルエンジンでボク様が【クラスターボムズ】を使うのなんてアルケニカ王国じゃあ常識なんだよ☆!」
ーキラン……
「今の言い回し、何か有名映画の〘ピーマン〙みてぇだな……って、ん?」
ードッカァァァァァァァァァァァァァァン!
「「「「「「「ぎゃぁぁぁぁ!?」」」」」」」
グロサリーヌは意味不明な事を宣いつつ、出会い頭の【クラスターボムズ】で全てを薙ぎ払った。
「な、何だったんだ?」
何とか今の爆発を生き延びたプレイヤーは、ただただ困惑していた。
……すぐ後に再び彼女がやって来て、何度も自爆し続ける事になるだなんて露知らず。
同時刻、戦場の左翼部外郭にて……
「シュゥゥゥゥゥ……」
ースパパパパッ!
「へ?」
「あ?」
「なっ……」
ードサドサドサッ……
ここで暴れていた隠密の暗殺竜 影鰐は、淡々かつ黙々とプレイヤーを処理する仕事竜だった。
闇の様な漆黒に包まれた蛇の如く長い胴体と鎌状の両腕が特徴的なその竜は、他のレイドボスと同じく3階建ての建物と同じ体高を誇っていた。
そんな影鰐は大地の影を泳ぎ、両腕の鎌で次々にプレイヤーを両断していった。
が、そんな中で……
ーブンッ!
「うお危ねっ!……やっぱ囮とか無理あるわこれ!」
……不運にも影鰐に狙われたムラザメは、軽い身のこなしでその攻撃を回避した。
「シュゥゥゥゥゥ?……シュゥ!」
「いやいやいやすまんこれ無理あ~やっぱ来るんじゃなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そんな泣き言を言いながら、ムラザメは戦場を駆け抜けた。
「おい、あいつ影鰐相手に逃げ切ってやがる!」
「待て、今がチャンスじゃないか?」
「影鰐があのプレイヤーに執心してる間にたこ殴りじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
……されど、その逃走は他のプレイヤーが影鰐へ攻撃するチャンスを作っていたのだった……
かくして、ムラザメ達は4重臣相手にヘイトを集める囮としての任務を開始した。
それがどう大局に影響するかは……誰も知らない。
ご読了ありがとうございます。
なお、主人公勢に出来る事はそれ程多くないという現実……
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




