17.アーサードは剣を抜く
前話の【不死喧嘩】がセーフゾーンでも使用可能な理由は、効果が復活及び回復しかないからです。
(鋼村 浅斗視点)
「キャヒャヒャヒャヒャヒャ♥️!」
ーギンッ!ギンギンギンギンギンッ!
「ハァ……ハァ……」
激しい……
いくら攻撃が2振りのナイフによる切り付けしかないとはいえ、流石はレベル240の敵だ。
……僕でもスキル無しじゃ防戦一方だ。
「キャヒャッ♥️!キャヒャヒャヒャヒャ♥️!」
ーギンッ!ギンギンギンギンギンッ!
「どうにか……僕も勝機を見出ださないと……」
ああ、駄目だ……
隙が見つからないし、何より相手が子供だからか剣が鈍る……
……考えろ……考えろ、僕!
「キャヒャッ……キャヒャいやおかしくない!?」
ーギィィィィィン!
「……へ?」
あれ?
何か、急にリリメアが困惑し出した?
いったいどうして……
「な、何でお兄ちゃんはいつまでも攻撃を防ぎ続けてられるの?……いつもなら、とっくにトドメを刺せてる筈なのに……」
ーギンッ!ギンッ!ギンギンギンッ!
「……え、そんなにかい?」
……うん、どうしてだろう?
相変わらずリリメアに隙は見つからないんだけど、その目には僕への恐怖が滲み始めていた。
「あり得ない……あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない!」
「え、えっと……大丈夫かい?」
「あ、そうだ……お兄ちゃん、レベルは幾つ!?」
「えぇっ?……僕のレベルなら、569だけど……」
「………キャヒャッ♥️……なるほどなるほど、そういう事か~♥️……」
そう、僕のレベルは569だ。
特に窮奇の配下としてウジャウジャ湧き出て来る大型のドラゴンが経験値としておいしくてどんどんレベルアップしたっけ……
「え、[王正騎士団]のメンバーってレベルそんなにあるのかよ……」
「私達なんて、井の中の蛙デッスね……」
「雲の上過ぎるよ☆……」
あ、後ろから驚きの声が上がってる。
まあ、流石に始まりの街に居るプレイヤーからしたらそうも思うか……
いやまあ、それはそれとして。
「……ただし、防ぎ切れた理由はレベル差だけじゃないよ。……何て言うのかな、君の攻撃は殺気が丸分かりだから防ぎやすいっていうか……」
「へ?……ま、丸分かりだった?」
リリメアは自分の攻撃が丸分かりだったと聞いて戸惑っている。
でも、決して舐めてかかって良い相手じゃない。
「……そう、丸分かりなんだ……なのに、僕が防戦一方になってる……リリメア、君は確かに強いよ」
防ぐだけなら出来る。
……そこからの反撃に繋げられないんだ。
「へぇ~……キャヒャッ♥️!……ならこのまま攻め続けてればいつかは殺せるんだね♥️……キャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♥️!」
ーギンッ!ギンギンギンギンギンギンギンッ!
「ああもう!」
……ああ、怖い。
さっきは平然と返したけど、そもそも常にここまでリアルな殺気が飛んで来るのもキツい。
何というか、こうして防いでいる間も精神はゴリゴリ削られてる。
「キャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♥️!」
ーギィィィィィン!ギンギンギンギンギンッ!
「……反撃が……出来ない!」
……結局、僕は未だに窮奇へのトラウマを抱えている。
あの暴力的な支配を前に、僕は逃げ出すしかなかった。
……そして、目の前の殺人鬼は窮奇とは違った恐怖を刻み込んで来る。
「キャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♥️!……殺して殺して殺し尽くして♥️!……お兄ちゃんはどんな死に様が似合うかな♥️?」
ーギンッ!ギンギンギンギンギンッ!
「おっと……さっきから君は首とか脳天とか心臓とか、あからさまな急所を狙い続けてるね……」
リリメアの攻撃箇所は分かりやすい。
首、脳天、心臓、その他諸々な急所……
ナイフで切られたり貫かれたりすれば命はない、そんな場所ばかりだった。
……うん、やっぱりだ。
「キャヒャヒャヒャ♥️!」
「リリメア……この殺しを熟知したナイフ捌き、君はこれまで何人を殺して来た?」
「そんなの分からない♥️!……でも、1日に10人以上殺した事はあったかも♥️!」
ーギィィィィィン!
「そうか……」
この子はレベルも高いし素早いけど、所詮は小学生ぐらいの子供だ。
いくらレベルが高いとはいえ同レベル帯や格上を相手にすると非力なのは変わらない上に、簡単に相手を殺せる腕があったからか戦闘技術は並み……
……今の僕がスキルを使えないのを差し引いても、攻略最前線で四大クランの一角を務める団長相手に勝ち星を上げられる程の強さではない。
「キャヒャヒャヒャ♥️!……お兄ちゃんってもう限界♥️?ねぇねぇ教えて♥️!」
ーギンッ!ギンギンギンギンギンッ!ギンッ!
「リリメア……さっきまで僕が君を斬る事を躊躇っていた理由の子供という点も、ここまで殺し慣れてる相手に情けをかける理由にはならないんだ……」
「キャヒャヒャ♥️!いったい何を言ってるの♥️?……リリメアにとって殺しは楽しいからやる、ただそれだけの事なんだよ♥️?」
リリメアは目を全開にして、嬉しげに話し始めた。
……うん、救えない。
これでまだ悪事を働いている自覚があれば、まだ何とかなったんだけど……
「……僕は、君を救えない……」
「キャヒャヒャ♥️!いきなり何を……」
「……僕は、窮奇の暴力的な支配に恐れをなして逃げた臆病者さ……だけど、それがこの剣を捨てる理由にはならないよね……」
ース~ッ……
「キャヒャヒャヒャヒャヒャ♥️!今になって剣を抜くとか遅い遅い♥️!」
僕は、これまで鞘に入れて布を巻いていた剣で攻撃を受けつつ一瞬で鞘から抜いた。
……これを抜くのは、行方を眩まして以来かな。
「……僕では君を救えないけど、これから罪を重ねない様にする事は出来る……だから、恨まないでくれるとありがたいかな」
……分かっている。
僕の前に居るのは、ゲームの敵対NPCだ。
救う救わない以前に、そうなる運命を定められている存在でしかない。
「キャヒャヒャヒャ♥️!お兄ちゃん、いきなり何をゴチャゴチャ言ってるのかな~♥️?」
ーギンッ!ギンッ!ギンッ!
「……けれども、僕は敢えて言うよ……君を救えなくて、ごめん……」
ースパッ!
「キャヒャ……え?」
ーズルッ……ブシャァァァァァァァ!
……僕は瞬きするのがやっとの時間で剣を振り、リリメアを上半身と下半身で両断した。
すると案の定、リリメアの上半身がずり落ち、断面から真っ赤なポリゴン片が噴き出した。
「…………………」
「キャヒャッ……痛い……死にたくない……まだまだ殺し足りな……い……」
ーフッ……
そうして、僕の目の前でリリメアは事切れた。
……やっぱり、子供の殺人鬼とか後味が最悪だよ。
「さて、それじゃあ君達は姉さん達の支援に言ってくれないかい?」
「あ、ああ!分かった……」
「あ、ムラザメさん待って欲しいデッス!」
「おやおや、それじゃあボク様達はあそこに突っ立っている補給係のプレイヤーをどうにかしようか☆!」
「「異議なし!」」
ふむ、彼等は何やら騒がしくしながらゲスパニールのもとへと走って行った。
……恐らく、それで全てが決するだろう。
「ハァ、それじゃあ僕も少し休んでから支援に……んん?」
僕は少し休んでから支援に行こうとしたけど、ふと下を見るとリリメアの亡骸付近に1冊の本が落ちている事に気が付いた。
「あれ、何だろうこれ……えっと、拾うか」
そうして、僕はその本を拾ってアイテム名を確認した。
そこには……
「う~んと、何々……[【鏖殺天使】の召喚書]?……え、何だこれ……」
僕が拾った本は、[【鏖殺天使】の召喚書]とかいう訳の分からない名前だった。
……そして、この直後に僕はこの本が結構ヤバい代物なんだと察する事になるのであった……
ご読了ありがとうございます。
アーサードは覚悟さえ決まれば動体視力が上昇するタイプです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




