18.アーサードはバレる
……主人公、殆んど活躍ありません……
(源徳 村雨視点)
「ゲスパニール、お前はここで終わりだぁぁぁ!」
「終わりデッス!」
「覚悟したまえ☆!」
「うげっ!……私はポーション作りは得意でも肉弾戦は苦手でゲぶへっ!?」
俺達3人はバルボリックへとポーションを供給し続けるゲスパニールに突撃し、それはもう思いっきりぶん殴った。
……のだが、ここからが地獄だった。
「おいっ!……いい加減大人しくしろ!」
「暴れるなデッス!」
「ハ~ッハッハッハ☆!」
「おのれ雑魚共がぁぁぁぁ!……この私の違法ポーションで大儲けする計画を邪魔しやがってゲスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
ーボコッ!ドゴッ!バコッ!ベコッ!
俺とエンムスビは元から強くなく、グロサリーヌは魔法が使えなくて雑魚同然、そして敵であるゲスパニールも生産職で肉弾戦は苦手らしく……
まあ、泥試合と化していた。
しかし、俺達の活躍は無駄ではなかった。
「け、ケケッ……おいゲスパニール、次の[敏速ポーション]を早く此方に……」
「おっと隙ありだなァァァァァァ!」
ーブンッ!ドゴッ!
「ごべぇぇぇぇぇっ!?」
ードンッ!ドンッ!ドサッ……
先程まで互いにMPとポーションを使ってチキンレースに興じていた乱打羽とバルボリックだったが、俺達が補給係のゲスパニールをボコボコにしてたお陰でバルボリックのポーション効果が切れたらしい。
……んで、乱打羽さんのアッパーがバルボリックの顎に炸裂して吹き飛ばされたと。
「……あ、これ俺達勝ったな」
「重い一撃デッシたね……」
「は、ハハハ☆……」
「嘘でゲスよねぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
どうも、さっきまでのバルボリックはポーションありきの強さだったらしい。
結局、彼がそのまま起き上がる事はなく、あっさりお縄につく羽目になったのだった。
で、数分後……
「け、ケケ……す、凄かったなぁ……あれが、強者の拳かぁ……」
「ああ、レッドネーム落ちでゲスか……」
お縄になったバルボリック達チンピラ共とゲスパニールは抵抗する事なく、俺達が廃倉庫へ呼んで来た兵士NPCによって連行されて行った。
なお、賞金首NPCは普通に罪に応じた刑罰を与えられるのだが、罪を犯したプレイヤーは頭上のプレイヤーネームが赤色にされた上で街の外へと追放される仕様となっている。
……このゲーム、プレイヤーが犯罪を犯すのは当人の自由とされているものの、犯罪を犯した場合のペナルティはしっかりあるんだよな~。
え、俺がグロサリーヌをぶん殴った件?
な、殴っただけなら被害者本人が訴えていない以上は無効の筈だ……
今回みたく、教会を敵に回した訳でもねぇし……
と、そんな時だった。
ーピロリン♪
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[ユニーククエストがクリアされました]
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「……ああ、向こうも兵士NPCに引き渡せたんだな」
「何か、見るの怖いデッスね」
「担架へ乗せた亡骸に、布を被せて運んでいるね☆……」
「……殺人鬼の賞金首NPCとはいえ、子供を殺したって事実は後味悪ぃなァ……」
……あのウサちゃんさん、本当に大丈夫か?
いくら血がポリゴン片になっているとはいえ、割とリアルな子供を両断した事実はなぁ……
俺もリリ/メア状態になった亡骸を見た時は少し気分悪くなるかと思ったぞ。
とか思ってると……
「あ、皆さん。……僕が貰った報酬の山分けに関する件でお話が……」
……件のウサちゃんさんが、報酬の山分けについて話を切り出して来た。
とはいえなぁ……
「いや、全部お前の物だろ」
「デッスね」
「うむ☆」
「だよなァ」
「………………へ?」
俺達、その報酬を受け取る権利ねぇんだよ。
「ウサちゃんさんは忘れかけてるかもしれねぇが、ユニーククエストの対象はリリメアだけなんだ」
「そうデッスそうデッス!……だから、1人でリリメアを倒したウサちゃんさんが報酬総取りして当然なんデッス!」
「ハ~ッハッハッハ☆!……それより、ボク様はあのぼかされていた報酬について聞きたいんだけど☆?」
「お、そりゃオレも気になるなァ!」
ってな訳で、報酬はウサちゃんさん総取り。
それよりぼかされてた報酬について教えろ~!
「そ、そうか……で、例の?でぼかされてた報酬なんだけど……[【鏖殺天使】の召喚書]って本が彼女の亡骸の横に落ちていたんだ」
ースッ……
「ん?」
総取りを渋々納得してくれたウサちゃんさんが見せてくれた報酬は、[【鏖殺天使】の召喚書]という本だった。
「[召喚書]?……[指南書]や[魔導書]じゃなくて?」
「うん。……で、流石に僕も気になって説明を見てみたんだが……これは直接見て貰った方が良いかもね」
ーピロリン♪
「あ、通知で送ってくれたのか」
そうして俺達は、ウサちゃんさんからメールで送って貰った内容を見る。
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[ウサちゃんからメールが入りました]
◎書かれてた内容は下記の通りかな。
アイテム名:【鏖殺天使】の召喚書
効果:【鏖殺天使】という使い魔の召喚
備考:使い魔を召喚するための本。
多くの"異界の使徒"に愛された残虐な殺人鬼は、死後に贖罪の機会を得る。
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「「「「「………………………」」」」」
えっと、何だこれ……
「まず、多くの"異界の使徒"に愛された残虐な殺人鬼って何だよ……俺が知らなかっただけで、リリメアってプレイヤーの間じゃ人気なキャラクターだったのか?」
「う~ん、僕は気にしていなかったけど……思い返せば、[王正騎士団]でもリリメアの手配書を見かけた様な……」
「愚弟は生真面目だから、その辺の話題に疎いんだろうなァ……おい、幼馴染みなら何か知ってんじゃねぇかァ?」
「確かに……ちょっと確認してみるよ」
そうして、ウサちゃんさんは少し離れた場所で誰かにメールを入れ、しばらくしてから戻って来た。
んで、結果はというと……
「それで、どうだった?」
「ああ、その……彼女についてのアレコレは、プレイヤーの間ではだいぶ人気だったらしい……その、彼女本人は見つかってなかったけど、彼女の手配書や各所で見つかる痕跡なんかから、ね」
「あァ?……どういう事だァ?」
「その、王都や他の街では追憶クエストってのがあって、その中にはリリメアの半生を追体験するものもあったらしいんだ……僕はそういった方向には疎くて知らなかったけど……」
「あ~、なるほどな……」
要は、純真無垢な子供が残虐な殺人鬼になるまでの半生を見て、ファンが増えたって辺りか?
……まあ、前世どころか今世でもそういう奴等を見た事がある。
キャラクターの不幸へ同情し、その後の行動がどうであれ推すってのは……
それの是非は問わねぇが、これマズくねぇか?
「私はこのゲームにおけるキャラ萌えに詳しくなかったんデッスが……これ、大丈夫デッスかね?」
「嫌な予感はするかな☆?」
「けどよォ、リリメアは許されねぇ一線を何度も越えまくった訳だしなァ……」
「殺されて当然の外道だった訳だが……それを分かってても、ファンの怒りってもんはな……って、これ[召喚書]だったよな?」
「「「っ!?」」」
ファンの暴走についてはあんまり考えたくねぇとして、結局これが[召喚書]って事は……
「うん、そういう事だよ。……僕は多分、リリメアを使い魔として召喚出来る……」
「う~ん、更に荒れる予感!」
「しかも最悪な事に、僕ってその……立場だけはあるもんだから……」
人気のキャラクターを使い魔として使役とか、もう暴動ってレベルじゃねぇぞ!
……ったく、もう気付いてねぇフリは辞めだ!
「……おいアーサードさん、お前はここからどうするつもりだ?」
「え?……それは勿論僕だって迷っ……て……今何って言った?」
「アーサードさんつったんだ!……というか、あれで騙し通せると思ってた方が驚きだわ!特にリリメアとの戦い!」
「まあ、あの剣って明らかにその……普通じゃないデッスし、動画で見た事ありマッシたし……」
「バレバレだったね☆」
「……愚弟は本当に詰めが甘ぇなァ……」
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
……ウサちゃんさん改めアーサードさんが使った剣は、明らかに一般団員が持ってて良いレベルの武器じゃなかった。
だからカマかけをしてみりゃ、すぐにボロを出しやがったよ。
「ほんと、四大クランの一角を張ってるクランのトップが始まりの街で隠れてるとか、どうなんだよ」
「……僕は、その……」
「まあ下手に詮索はしねぇが、トラブルに巻き込まれるのもゴメンなんでな」
「わ、分かってる……」
ったく、ここからどうしたもんか……
繋がり持っちまったし、かといって知らぬ存ぜぬで通すのも何だかなぁ……
「ま、ゆっくり考えりゃ良いじゃねぇかァ」
「……俺もそうしてぇよ」
と、そんなこんなでこの件については議論を先送りにし、この日は解散した。
……そういや、今回は苦労した割にレベル全く上がらなかったな……
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