16.乱打羽は信じる
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(鋼村 乱波視点)
……バルボリックと相対するオレの脳裏には、とある出来事がよぎってやがったァ。
「……なァなァ賽子丁子、本当にオレの手伝いはしてくれねぇのかァ?」
「ん~……ホンマごめんやけど、最近のウチはツキがないんよ~……やから、今回はパスで頼むわ」
それは今日の朝、教会へ瓶詰めポーションを納品しに行く前のオレが、親友の博未改め賽子丁子へ捜査とカチコミの手伝いを打診してた記憶だったァ。
……ま、それも最近のツキのなさを原因に断られちまったんだがなァ。
「そうかァ……残念だァ」
「ウチも悪いと思てるんやで?……せやけど、ウチのユニークスキルはツキが命やからな~」
ユニークスキル、それは[指南書]で習得可能な技。
逆に[魔導書]で習得可能なのはユニーク魔法って呼ばれてらァ。
……って、思考が脱線したなァ。
要は、賽子丁子のスキルは今のままだと使い物にならねぇって言われた訳だァ。
「……じゃあまァ、愚弟を連れてちょっくらやって来るわァ」
「うん、頑張って来よし」
「おう、いっちょやってくらァ!」
「……ホンマ、乱打羽はんは真っ直ぐやわ~」
ーチャリ……チャリ……
賽子丁子は掌で2つの賽子を弄りつつ、満面の笑みでオレを送り出してくれたァ。
……賽子丁子とは古い付き合いで、これまで同じ穴の狢として二人三脚で頑張って来たんだがなァ……
「……本当の本当に、今回の祭りにテメェは参加しねぇんだなァ?」
「参加せんよ」
「本当にかァ?……昔はツキなんて関係なく、オレが喧嘩する度に賭博大会を開いてたろォ?」
「昔の話や。……あの事件以降、ウチは乱打羽はんの足を引っ張るんが嫌になったんよ……」
……あァ、そういやそうだったなァ……
昔はオレが誰かと喧嘩する度に、こいつは色んな奴を集めて喧嘩の勝敗で賭博大会をしてた筈なんだがァ……
賽子丁子……いや、博未自身が半グレに拐われた事件でオレが意識不明の重体になって以降は変な所で遠慮する様になっちまったなァ……
確か、あの事件で拐われた理由も博未がやり過ぎたのが発端だっけかァ……
「……残念だなァ」
「好きに言ってくれたらエエ。……それと、今更やけど油断大敵やで?」
「そのぐれぇ分かってらァ」
……最後の方なんて、殆んど無駄な会話だったァ。
でも、オレは何でかァ……寂しかったっけ。
「ケケケッ!」
ーブンッ!ドゴッ!
「チッ!……テメェ、レベルの割に強ぇじゃねぇかァ!」
ーブンッ!スカッ……
さて、振り返りはこれぐれぇにして……
何だこいつ、攻撃が全く当たらねェ!
「ケケケッ!……此方は目先の利益だけを追求する小悪党だからなぁ!……当然ながら、レベルが低いなりに生き残る方法だって色々持ってんだよ!」
「クソがァ……」
……このバルボリックとかいう奴、だいぶ素早さに秀でてんなァ……
こんなの、普通にしてたら当たらねェ!
しかも……
「バルボリック様、追加の[敏速ポーション]でゲス!」
ーポイッ!
「ケケケッ!おう、サンキューだぜ!」
ーごくっ……ごくっ……
「チィッ!」
あのゲスパニールとかいうプレイヤーが、[敏速ポーション]ってアイテムをバルボリックに供給し続けてやがらァ。
……どうせ、アイテム名からして素早さを上げるポーションなんだろうなァ……
となると、こりゃマズいかァ?
「ケケケッ!……どんなに強力な攻撃でも、当たらなければどうって事はねぇなぁ!」
「そうでゲスそうでゲス!」
「言ってくれるじゃねぇかァ!」
ーブンッ!スカッ……
オレの拳は空を切り、体勢のバランスも崩れる。
んで、その隙を逃す敵じゃねェ!
「ケケケッ!」
ーブンッ!パンッ!
「ぐふぇっ!」
オレは無防備な顔面に、良いパンチを食らっちまったァ。
「ケケケッ!……殴り合いで此方に勝てると思ったか?」
「ハッ……オレを倒したきゃ、刃物や銃でも使って来いやァ……あの半グレ共は、容赦なく使って来たぞォ?」
……思えば、あの時のオレはよく勝てたもんだァ。
ま、向こうは大半が味方だったから下手に刃物を振り回したり銃を発砲したり出来なかったんだろうがなァ……
何より、そっち方面は素人だったからか狙いがブレまくってやがったっけ……
「ケケケッ!……その半グレが何かは知らねぇが、此方は昔から拳で殴るのが好きなんだよ。……何せ、相手の骨を思いっきり砕く感触を、直接この手で感じ取れるんだからなぁ!」
……そうかァ……
バルボリック、そういうタイプかァ……
……愚かだなァ!
「ぷ……ぷぷっ……大人しく刃物や銃を使ってりゃ、負けずに済んだのになァ!」
「あぁ?」
昔のこいつには、小悪党なりの恐怖心もあったんだろうなァ……
だってのに、リリメアやゲスパニールを味方に引き込んで裸の王様と化しやがったかァ……
「臆病でなくなっちまった悪人の寿命は、何処の世界でも短ぇもんだァ……つう訳で、オレも奥の手を切ってやるかァ……」
オレのレベルは65。
……これは、地道に30辺りまでレベル上げをした後に1体のオンリーワン・ユニークモンスターを倒した結果だァ。
つまり、オレだってユニークスキルを持ってんだよォ。
「ケケケッ!……奥の手だぁ?……それが本当なら凄ぇなぁ!」
「……まだ余裕を崩さねぇかァ……なら大人しく見てみろよォ……【不死喧嘩】ァ!」
ーブワン……
「……ケケ?」
さァて、こっからどれだけ耐えられるかなァ……
「ネタバレしてやると、【不死喧嘩】はMPが尽きるまでは何されても死なずに復活・回復し続けるってユニークスキルだァ……んで、オレのMPはまだまだ潤沢……この意味が分かるかァ?」
「ケケケッ!……なるほどなぁ……」
「ふゥ……オレのMPとテメェ等のポーション、どっちが先に尽きるかのチキンレースと行こうじゃねぇかァ!」
オレが持つユニークスキル、【不死喧嘩】はMPが尽きるまで絶対に死なねぇし回復もし続けるスキル。
対するバルボリックは、自前のポーションが尽きるまでは素早さやら回復やらが無限に可能。
……その上、セーフゾーン内でも使用可能な数少ねぇスキルの1つだァ!
「………………ケケケッ!面白ぇじゃねぇか!」
「そうだろォ?……じゃ、やってくかァ!」
こうして、オレはMPが尽きるまで殴り合いを続ける覚悟を決めたァ……
だからよォ……
そっちは頼んだぜェ、愚弟!
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(俯瞰視点)
「ほうほう……まさか、あのアーサードとリリメアが始まりの街で相対しているとは……流石の吾輩もこのマッチアップは想定外なのだよ」
『本当だヨ!……ってか、何がどうしたらあの鏖殺天使が始まりの街に流れ着いてるんだヨ!』
現在、始まりの街で起こっているアーサードとリリメアのマッチアップ。
それを見た霞とラビリーは、想定外と言わんばかりの反応をしていた。
「……お、これは流石の君も想定外だったのかい?」
『当然だヨ!……一応アテシはこのゲームのメインAIだけど、だからってその世界で暮らす者達を逐一監視してる訳じゃないし……』
「ふむ、どうもこのバルボリックとかいうチンピラのボスに拾われて、歪な共生関係を築いていたらしいのだよ……とはいえ、それで楽勝な筈の始まりの街で[王正騎士団]団長と出くわすなんてのはいくら何でも不運な話なのだよ」
『加えてアーサードもリリメアも、固定ファンは結構多いと聞いてて……これは本当にツイてないヨ……』
「ハァ~……勝負の結果次第ではかなり荒れるのが確定としか言えないのだよ。……ったく、極秘イベントが間近に迫っているタイミングで何でこうなるのか……」
霞とラビリーは、プレイヤーに極秘で進めていたイベントが間近に迫ったタイミングでこのマッチアップが起こった事に頭を抱えていた。
……そう、これはあの霞が頭を抱える程の事態だった。
『……ねぇ、本当にあのイベント実装するかヨ?』
「これは確定事項なのだよ。……サービス開始3ヶ月ちょいで初実装の大規模イベントとして、吾輩ですら失敗は認められないのだよ……」
『……それでこのクソゲー染みたイベントをお出しするんだから、この開発チームは頭おかしいヨ……』
真面目な話をしてる筈なのに、何処か頭のネジがぶっ飛んでる霞を見て、ラビリーは更に頭を抱える。
……そんな彼女達が視線を送る先の企画書には、〘対厄災防衛戦~悪逆の暴君竜 窮奇を討て~〙という文字が堂々と書かれていたのだった……
ご読了ありがとうございます。
〘厄災のアルケニカ〙はガワこそ最先端かつバグ等もないという強みで人を集めていますが、本質はいつネタに出来ないタイプのクソゲーになってもおかしくない程のゲームです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




