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15.アーサードは振り返る

浅斗改め、アーサードの過去。

(鋼村 浅斗視点)


あれは数年前、僕が高校1年生の頃だったか……


「浅斗、また己の趣味に付き合わせちまったな」


「いやいや、僕が好きで手伝ったんだから気にしないで欲しいかな。……にしても、本当に希人(まれと)は美少女フィギュア製作が好きだね?」


この日、僕は幼馴染みである淡魂(あわだま) 希人(まれと)の美少女フィギュア製作を手伝うため、学校帰りに希人の家へ寄っていた。


「ふふふ、当然だろう!……己は美少女キャラの造形美に魅了された……もし肉体を作り変えられるなら、アニメに出て来る様なコテコテの貴族令嬢そのものな体にしたい程だ!」


「う、うん……本当に希人は何というか……性自認も恋愛対象も正常なのに、何故か女性になりながってるよね……その願いを否定する気はないけど」


「ふむ、己の野望が理解されない事は想定済みだし、今更現実の肉体を女性に変えよう等とは思わないが……せめてゲームの中では女性で居たいと思っててな」


「それで、希人はいつもゲームで女性主人公を使ってるんだね」


希人は独特な一人称や特殊な願望を持ってはいたけど、幼馴染みとして付き合う分には良い奴だった。


それこそ、彼は今でも[王正騎士団]副団長として僕を支えてくれている程には仲も良い。


ただ……


「それより、だ。……もし浅斗を誘った事が乱波(らんば)の姐さんにバレたら己、何か言われたりしないか?」


「う~ん……別に姉さんって僕にそこまで興味ないから、多分大丈夫だと思うよ?」


……希人は、姉さんをとても怖がっていた。


「それは分かっているつもりなのだが……己は、姐さんに睨まれた記憶がトラウマになっていて……」


「気持ちは分かるけど、姉さんは悪人以外には優しいからね!?」


僕の姉さんこと鋼村(はがねむら) 乱波(らんば)は、この時点で地元じゃ負け知らずのレディースだった。


……どれぐらい凄かったかと言えば、姉さんと違う高校に進学した僕の耳に、常に姉さんの武勇伝が届いていた程には。


ただ、それ故に僕を恐れる者も多かった。


「ハァ……浅斗はよく耐えられるなぁ?……いくら姐さん本人はお前に危害を加えないとはいえ、姐さんのせいで不良の弟というレッテルが貼られているのは事実だぞ?」


「……でも、僕からすれば姉さんは唯一の姉だ」


「ああそうだろうとも。……しかし、己が浅斗の立場なら、そう簡単には割り切れぬよ」


「……う、うぅ……」


希人の言葉に、思うところがなかった訳ではない。


だけど何も言い返せなかった辺り、僕も心の何処かでは姉に思うところがあったのだろう。


……もっとも、そんな不満が表面化する事はなかった。


何故なら……


ープルルルルルル♪


「ん?……おい浅斗、オンライン通話が入っているぞ?」


「え?……あ、本当だ」


僕は腕に巻いたスマートウォッチに通信が入っているのを指摘され、急いで通話をONにした。


すると……


ーピピッ!


『浅斗、聞こえる!?……もし私の声が聞こえてたら返事して!』


「……母さん?……そんなに焦ってどうしたの?」


通話の相手は母さん。


これは、通話をONにする前に表示されていた連絡先で気付いてはいた。


でも、何で母さんがこうも焦っていたかは分かっていなかった。


……けれど、その理由は直後に聞く事となる。


『浅斗、落ち着いて聞くのよ?……乱波が、自分の友達を助けるために半グレの拠点(アジト)にカチコミして、意識不明の重体になっちゃったのよ!』


「………………………は?」


そこからの記憶は定かじゃない。


……気付けば、僕は病院の廊下に居た。


「……あなた、乱波は大丈夫よね?」


「今は、あいつを信じるしかない……」


父さんは落ち着いている様に見えて廊下を行ったり来たりし、母さんは椅子に座って項垂れていた。


……僕も、ずっと呆然としていた。


聞いた話だと、姉さんは友達を敵対していた半グレに拐われて、その半グレから出された条件を守る様に1人で助けに行ったらしい。


そして、最終的に半グレ全員をボコボコにして友達を助けたんだけど、安全な場所まで友達をおぶって運んだ後に気を失ったんだとか……


本当に、姉さんらしかった。


と、そんな事を考えていると……


ーガチャッ……ウィ~ン……


手術(オペ)、無事に完了しました。……今はまだ意識を取り戻していませんが、峠は越えたと思って良いでしょう」


手術中のライトが消え、お医者さんから姉さんの手術(オペ)が無事に終わった事を聞かされた。


この時、僕は心の何処かで姉さんなら死なないと思ってはいたけど……それと同じぐらい、死んでしまうのではないかと心配もしていた。


だからか、無事を聞かされた瞬間に安堵のあまり涙が溢れたのを覚えている。



そして、それから数日後……


「いやァ、ヘマしちまったわァ」


姉さんは、意識を取り戻して会話も出来る様になっていた。


「もう!乱波は馬鹿なんだから!」


「そうだぞ!……私達がどれだけ心配したか……」


「姉さん、本当に……」


この時点で、姉さんは色んな事件に巻き込まれたり自ら突っ込んだりとトラブルを起こしまくっていたっけ。


でも、ここまでの大怪我を負ったのはこの時が初めてだった。


「悪ぃ悪ぃ……それより、博未(ばくみ)の奴は無事かァ?」


「博未さんは無事だったよ。……今日だって、姉さんを心配してた」


「……そっか、悪ぃ事しちまったなァ……」


姉さんは、仲の良い友達からはとことん好かれていた。


半グレに拐われた神捨(かんじゃ) 博未(ばくみ)さんという人も、姉さんとはとても親しい友人だった。


……そんな人に好かれる姉さんだからこそ、この時の事件は起こったとも言えるけど。


「姉さんは今回、警察を頼るべきだった」


「けどよォ、あいつ等は警察にバラしたら博未は無事じゃ済まさねぇってェ……」


「それで姉さんがこうなってたら元も子もないと思わないのかな!?」


「……言いてェ事はそれだけかァ?」


姉さんは、僕とは違った。


僕なら真っ先に警察に通報するところを、姉さんは友達の無事を考えて自分でカチコミをした。


勿論、対応として正しいのは僕の方だった。


なのに……


「っ……そ、それだけだ」


「なら、テメェはそうすりゃ良い……ただ、それでもし大切な奴を救えなくても、絶対に後悔だけはすんじゃねぇぞォ?」


「…………………………………」


「テメェは正しいよォ……正しさで大切な奴が守れるんならなァ……」


……僕は、姉さんの雰囲気に気圧されてしまった。


結局、僕は……








そして数年後、今から3ヶ月程度前の事……


「僕は(まれ)……ネカマレード達と一緒にクランを立ち上げる事にするよ。……そして、最終的にはワールドエンド・ユニークモンスターの討伐だって成し遂げてみせるつもりさ」


「そうかァ!……なら、オレは(ばく)……賽子丁子(さいころちょうし)と一緒にこの街でのんびりスローライフでもしようかねェ……」


この日、僕と姉さんの道筋は分かたれた。


僕は希人改めネカマレード達と一緒にクラン、[王正騎士団]を立ち上げて始まりの街を去った。


対する姉さんは、博未さん改め賽子丁子さんと一緒に始まりの街に残る事を選んだ。


……なお、この賽子丁子さんは日によって出せる実力にブレがあって、今日はツイてない日で運勢最悪だからと同行を断られてしまっている。


とにかく、僕は姉さんを置いてどんどん攻略を進めた。


レベルもかなり上げて、何体もオンリーワン・ユニークモンスターを倒した。


そこまでしても……


『grrrrrrrrrrrr……』


……あの暴君竜を思い出すと恐怖で震えてしまう程の、圧倒的な惨敗を喫してしまった。


しかも1度ではなく、何度も何度も何度も何度も!


……もう、僕は自信を持てないかもしれない。







「キャヒャヒャヒャ♥️!」


ーギンッ!ギンッ!ギィィィィィン!


「ぐっ……」


……なんて、過去に思いを馳せている場合ではない。


僕は、彼等を守らなければならない。


だって、巻き込んだのは僕と姉さんなのだから。


「キャヒャヒャヒャヒャ♥️!……兎さ~ん、今すぐ中身を見~せ~て~♥️!」


ーギンッ!ギンッ!ギンッ!


「それは出来ない相談かな!……僕はまだ、顔を見せるつもりがないんでね!」


僕は、腐っても四大クランの一角を担う団長だ。


……けれどスキルを封じられた今、本気で戦うのも厳しいと言わざるを得ない。


「キャヒャヒャヒャ♥️!」


「……どうにか、しないとね……もう、このままだと守り切れないかもしれない……」


僕は誰にも聞かれない様に、弱音を吐き出す。


……僕の勝ち筋は、未だに見つけられずに居た。

ご読了ありがとうございます。


こんなんでも2人の姐弟仲は悪くないから、未だに縁は切れていません。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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