13.乱打羽はタコ殴りにする
今回の敵、流石にチンピラのボスとプレイヤーだけで終わらせる気はありません。
(源徳 村雨視点)
あれから1時間後……
「おらァ!吐けやごらァ!」
ードゴッ!ボゴッ!
「ぐはっ……辞め……もう殴らないでく」
「うっせぇんじゃおらァ!」
ードゴッ!
……早くも1人のポーション密売人を見つけた俺達は、連行した密売人が乱打羽さんによってタコ殴りにされてる場面に出くわす事となった。
「……乱打羽さん、容赦ねぇな……」
「まあ、姉さんは元ヤンで武勇伝も多い人なので……過去には銀行強盗を素手で制圧したり、大規模半グレをたった1人で壊滅させたりしてるのでそこまでの驚きは……」
は、ハァ……
この近未来世界でも銀行強盗や半グレは居るもんだとはいえ、それ等をどうこう出来る奴が何で聖職者系ジョブに就いてんだろうな?
「んで、もう1回聞くぞォ?……テメェ等のボスは何者だァ?」
「ば、バルボリック様です!……後、最近はゲスパニールとかいう僧侶ジョブの"異界の使徒"様もポーション製作担当として口を出して来ています……」
"異界の使徒"……
これは、〘厄災のアルケニカ〙におけるNPCがプレイヤーを呼ぶ際の名前だ。
俺達はNPCとあまり関わって来なかったら聞いてなかったが、情報としては知っていた。
「チッ!……バルボリックつったら、最近になって王都の方から流れて来たとかいう賞金首NPCだっけかァ……となると、NPCとプレイヤーが共謀してこの件を起こしてんのかよォ……」
「姉さん、だいぶ面倒そうな顔をしてるね?」
「当たり前だろォ!……賞金首NPCつったら、扱いはモンスターと同じだァ……そんなのとセーフゾーンである街中で戦わねぇといけねぇんだぞォ?」
「……まあ、忌避するのが普通だね」
そう、賞金首NPCはモンスターと同じ扱いになる。
そのため、高い懸賞金が設定されている賞金首NPCの中にはオンリーワン・ユニークモンスターに指定されている奴も居るんだとか……
そんなのとセーフゾーンに設定されてる街中で戦うのは、スキルも使えず素のフィジカルだけでモンスターと戦えって言われてるのと同じだ。
「幸い、バルボリックはチンピラ共を束ねてるだけの小悪党らしいがァ……プレイヤーが協力してるってだけで面倒度がだいぶ跳ね上がるなァ」
「オンリーワン・ユニークモンスターまでは行かねぇって事か」
うん、それは不幸中の幸いだ。
……そんな奴とセーフゾーンで戦うなんて、あまりにも無理があるからな……
「じゃ、さっさと片付けるかァ!」
……で、それから俺達は密売人を捕まえまくった。
ただまあ、その役割分担はというと……
「おらァ!そいつ縛っとけやァ!」
「あ、ああ……」
まず、乱打羽さんが殴って俺が回収。
「今度はこいつだァ!」
「あ、待って欲しいデッス!」
次に、乱打羽さんが殴ってエンムスビが回収。
「どんどん捕縛だァ!」
「ボッコボコだね☆……」
更に、乱打羽さんが殴ってグロサリーヌが回収。
「これでラストォ!」
「……姉さん、やり過ぎ……」
挙げ句の果てに、乱打羽さんが殴って弟が回収。
……と、乱打羽さん以外は殴られた密売人の回収役と化していたが。
「ふゥ~……よし、それじゃあ全員ぶん殴って尋問するかァ!」
「え、ここからまだ殴るのか!?」
「……姉さん、悪人には容赦しないから……」
「そ、そうか……」
うん、これ俺達ってただの荷物持ちだよな?
肝心の荷物が密売人のチンピラってだけで……
そんな事が頭をよぎった、その瞬間だった。
「ぶ、ぶへへ……俺らをいくらぶん殴ろうと、あんた等にバルボリック様は倒せねぇよ……」
「あァ?……そりゃどういう事だァ?」
突然、チンピラの1人が不穏な事を言い出したのだ。
「た、確かにバルボリック様はどう取り繕っても小悪党のお人だ……それは間違ってない……」
「だったら何でオレじゃ勝てな」
「だからこそだ!……小悪党だからこそ、自分の戦力を客観視して用心棒の殺し屋を用意してんだ!」
「「「「「っ!?」」」」」
こ、殺し屋……
まさか、チンピラのボスが殺し屋を雇ってたとか予想出来ねぇよ!
で、でもどうせチンピラのボス程度が雇う殺し屋なんて低級も低級だろうし……
「ぶへへ……ま、それでもボスの所へ進むんなら好きにしろよ……俺らはどうせ終わりだしな……けどまあ、あの[鏖殺天使リリメア]相手にあんた等が勝てる訳もねぇか!ぶへへ……」
ーピロリン♪
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[ユニーククエストを発見]
クエスト名:鏖殺天使は血に染まる
攻略推奨レベル:250
報酬:懸賞金600万G
血染めのナイフ×2
【???】の???×1
[クエストを受注しますか?]
▷はい いいえ
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「………………は?」
「え、マジで言ってマッス?」
「ハ~ッハッハッハ☆……」
「……どうして僕はこんな時まで……」
「おいおいマジかァ……」
え~っと、その……
【悲報】、オンリーワン・ユニークモンスター級の賞金首がチンピラボスの用事棒してやがる……
「ぶへへ、怖じ気づいたか……」
「いや待てよ……ユニーククエストって事は当然オンリーワン・ユニークモンスター級の賞金首って事だろ?……何でそんなのがチンピラでボスやってる程度の小悪党なんかに従って……」
「ぶへへ……バルボリック様はなぁ、リリメアに釣り餌扱いされてんだよ……」
「釣り餌だと?」
「そうだ……リリメアは相手の強さなんて関係無しに殺しをしたがるタイプでなぁ……ぶへへ……バルボリック様は、リリメアが殺すための獲物を集める釣り餌として生かされてんだぁ……」
「……嫌な共生関係だな……」
バルボリックはリリメアを用心棒として、リリメアはバルボリックを釣り餌として、それぞれ利用してるって事か。
それ、何て共生関係だよ……
「ハァ……んで、こっからどうすらァ?」
「……え?」
「いやよォ、流石にスキルも使えねぇセーフゾーンで攻略推奨レベル250の相手と戦うなんて無理だろォ?……だから、テメェ等がここで離脱したってオレは文句言わねぇぞォ?」
へ?
ここで離脱しても文句は言わねぇ、か……
なら遠慮なく離脱を……
……待て。
「それ、乱打羽さんはどうするんだ?」
「あァ?……勿論、オレは戦いに行くがァ?」
「そ、そうか……」
「……けどよォ、テメェ等はオレに付き添う義理なんてねぇんだろォ?……だからァ……」
……乱打羽さんは、何だかんだ優しいんだろう。
ここまでは安全だったから俺達を巻き込んだが、安全が保証出来なくなったら離脱を勧める……
それは、俺達を想っての事だ。
……でも、それなら……
「……いいや、ここまで来たら一緒に行く。……まあ、足を引っ張らねぇ様には努力するが……」
「私も、ここまで来て離脱はモヤモヤしマッス!」
「ハ~ハッハッハ☆!……ボク様は2度もユニーククエストをクリアしているし、大船に乗った気持ちで居てくれたまえ☆!」
「……僕も、姉さんに付いて行くよ」
「て、テメェ等……」
尚更、見捨てる訳には行かねぇよな?
「ぶへへ……命知らず共め……」
「生憎、"異界の使徒"は死んでも蘇るんでな。……どうせ終わらねぇんだし、アイテムだけ預けて行ってみるか」
「……あァ、そうだなァ!」
こうして俺達は捕まえた奴等を兵隊NPCへ届け出しつつ、根城への襲撃計画を練るのだった。
……にしても、勝てると良いんだがな……
ご読了ありがとうございます。
リリメアはメテオ三連星より弱いものの、街中はスキルが使えないセーフゾーンなので難易度自体はメテオ三連星よりも高いです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




