幕間ーⅡ
幕間-Ⅱ
「ほう、ウェルプが滅んだ、と?」
「それだけではありません。アクエイスに封印されていたイグニストさんがいましたでしょう。人間がその封印を解き、イグニストさんもまた、同時に滅ぼされたようです」
闇は頷き、続けろ、と命じる。
「イグニストさんは聖霊剣で封印されていた、というのはどうやら本当のことでした。それに、人間達が残していた数多の文献。色々と調べたところ、認識阻害の細工が施されていた模様でした。聖霊剣など存在しない、と思い込ませる暗示となるようでして。だからこそ、聖霊剣に到達したものが何者なのか、私としても気になるところでございます。あなた様さえよろしければ、調査をしてみようかと存じますが……」
闇はしばらく考え、任せよう、と返事をした。闇もまた、聖霊剣に関しては目の前の男に探らせようと考えていたのだ
「御意に」
そして闇の中、更に深い闇の存在が消えると、跪いていた男は立ち上がる。
「さて、小説の内容が正しければ、デニアス王国にありそうなのですよね。まだ完全に癒えていない手前、今回は正攻法で挑んでみましょうか?」
と、男はくつくつと笑う。
封印から解かれてしばらく。まだ記憶の混乱は残る。なぜこんな森の中にいるのか、そしてなぜ魔族と契約したのか。その辺りは依然として思い出せない。だが、どうでも良かった。
今を愉しむことができるなら。
周りに、森の風景が戻ってくる。いや、彼がアストラルサイドから戻ってきたのだ。
痩せ型の、黒いローブを身につけた、やや小柄な男性。黒髪で、茶色の目で、瞳孔は縦に鋭く長い、龍眼。
「さて、デニアスの大会はまだまだ先、ですね。それまでに、色々地盤を固めておきましょう。フルネームは語れませんね。昔の愛称で大丈夫でしょうか? 大丈夫でしょう」
やや支離滅裂気味に、男は考え、言葉にする。
「ウィス、なんて愛称を覚えているのは、妹ぐらいでしょう」
そして男は、ひどく淀んだ目で、澄み渡る空を見上げる。
「少し思い出しましたね。私はミリアやウーニャに追われてここに逃げてきていたんですね。二人には私がここに居ることが知られないようにしないと、いけませんね」
ミリアを妹と語った男は、小さく微笑んだ。




