7 鉄道部
これで原稿ストック切れです。
土曜日。
「おう、鉄道部に入るっていうもの好きなあんちゃんはおめぇかい?」
これは魔法学校の学生が言った言葉ではない。60代のおじいさんが言った言葉だ。
「あずさ。俺は鉄道部に連れて行ってくれと言ったはずだが。」
「それがね、八島君。今は鉄道部部員は0なんだ。」
マジかよ、おい。
「おらぁ、亀茲大輔。ここの鉄道の職員の一人さ。車両の整備を担当している。」
紺色の鉄道制服(作業服風)を着た亀茲さんは車両基地の片隅にある建物の一室で、工具を整理しながら言った。
「鉄道部入部希望の、八島渡です。」
「ほう。ならあんたが部長だな。この書類に目を通してサインしろ。あとで出しておいてやる。
おめぇ、鉄道車両は運転できるのか?」
「電車と電気機関車、あと気動車なら。まだ初心者ですが。」
「ほぅ。なら話が早いな。最近は法律改正で免許取得がやりやすくなったから助かる。地方の中小私鉄もそうだが、うちもな。生徒が運転するために1年間もどこかの研修所に派遣するわけにゃいかんからな。」
「おかげで楽に取れました。幸い父方の祖父がJR職員でしたので、その協力もあって取得できました。」
「おや、どこに勤めとったんや?」
「JR西日本管内ならどこでも。引退寸前まであちこちを行ったり来たりしてました。」
「そうか~。俺もJR西日本にいたんだぞ。長い事幡生で働いていた。」
「幡生ですか!あの有名な!」
「そうさ!色々魔改造して楽しかったがな~、あのこらぁ~よ~。」
俺らが鉄道談義に花を咲かせている頃、あずさは?マークを大量生産していた。
その後、亀茲大輔さんのご厚意で車両基地を案内してくれることになった。
「結構気動車が多いですね。」
「まぁな。3年前じゃったか、長門島大橋の送電ケーブルが切れてな。長門島は大停電になった。まぁ、架線は切れてなかったから本土(本州)から電気は来ちゃいたんだが、電圧低下はひどぉての。
その時使えたのが、学校長が趣味でこうちょった(買っていた)キハ58じゃった。それをつこうて(使って)本土から物資を運んだんじゃ。
それ以来、気動車は増えちょる。さらに言えば、蒸気機関車もじゃ。」
「え!蒸気機関車あるんですか!?」
「おうよ!我が魔法学校鉄道職員のほこりにかけて、完璧な整備をしちょる!いつでも動かせるぞ!」
「マジですか!ボイラー技士免許は持っているんで、頑張って甲種蒸気機関車運転免許取ってきます!」
「おう!待っちょるぞ!」
あずさはただついてくるだけの存在となっていた。
それから数日、俺はたまにあずさに校内を案内してもらいながら学生生活を送っていた。鉄道部にも出て、線見(線路の下見)を行ったり、駅員さんの仕事を手伝ったりしてゆったりした日々が続いていた。
ピンポーン
インターホンがなった。
「はい?」
“失礼します。警備の田淵です。お車が修理から戻ったとのことで業者さんがいらしていますが。”
「あ、すぐ行きます。」
プラドが壊れてから2週間。やっと修理から戻ってきた。
第3寮敷地入口でレッカー車に積まれたプラドを降ろしてもらい、第3寮の駐車場にプラドを駐車する。
“ピリリリリリ”
ちょうどエンジンを切ろうとしたとき、車載電話が鳴った。
「はいもしもし?」
“八島特務少佐。元気にやっているか?”
声で相手が分かった。
「川口教官、あなたはもう私の指揮系統にいないはずですが・・・」
“いやなに、教官と言うのは顔が広くなるものでな。君の先輩、つまりは私の教え子に君の指揮系統にいる人物がいたんだよ。この番号もそいつから聞いた。”
相手は呉海軍中学時代にお世話になった教官、川口大佐。ちなみに彼の代が“呉海軍中学卒業第1期生”になる。
「それで、何の用ですか?この回線は盗聴防止用軍事衛星経由回線なんですよ?」
“いやなに、君がどんな生活を送っているのかなと思ってね。”
俺は諦めた。ダメだこの人。軍事回線を雑談に使う気だ。
「そうですね・・・。あえて言うなら軍学校ばかり行っていた俺からしたら“ゆるい”ですね。まぁ、趣味に没頭できるからいいですけど。」
“だろうね。君、艦艇勤務よりも陸での勤務の方が楽しそうにしてたし。
ところでさ、君はなんで自分がそこへ派遣されたか知っているかい?”
「えっ?超能力と魔法が使えることが判明して、総務省や首相官邸から防衛省へ圧力がかかって・・・という流れは聞きましたけど。」
“あ~、そういう風に説明されているのか。ある意味ではあっているんだけど、実はそれ以外にも理由があるんだよ。”
「理由?」
話がここまで来たとき、向こうの電話の遠いところで「貴様!軍事回線を勝手に使うな!」と言う大声がした。現在の俺の上官、石橋中将の声だ。
しばらく石橋中将が怒鳴り、それを川口教官がヘラヘラ流す声が聞こえた後、回線が切れた。
はてさて、俺の派遣された“それ以外の理由”って何なんだか・・・




