8 長門北灯台
最近の鉄道はどうも”合理化”されすぎていてあまり好きではありません。もう少し”風情”というか”あじわい”を残してもいいのでは?と思う筆者のこの頃。
「おーう、それじゃあ明日は大学部や研究棟の見学を行うから、ぜってーに遅刻なんかすんなよ!」
ゴリラ担任がそう言って教室を出て行った。
放課後である。
思いっきり伸びをして、荷物をまとめる。そしてあずさに話しかけようと思ったら、あずさの姿は消えていた。まぁ、超能力ですぐ隣の席から動こうとしているのはわかるのだが、はてさてどこへ行くのか。
ちょうど今日は鉄道部の仕事も休みだったため、尾行してみることにした。
鉄道部の活動は、ほとんど職員がやっている仕事と変わらない。学内の鉄道の運行だ。よって鉄道部の部員には学内鉄道職員と同じ制服が支給され、同じ権限が与えられる。
よって俺は現在、車掌の格好をしてあずさを尾行中である。
趣味が悪い?いやいや、職業病と言ってくれ。
あ~、昔よく公安部さんからのバイトで・・・ゲフンゲフン。危うくせき込んで死ぬとこだった。
あずさの乗った153系電車の車掌室に乗り込む。別に乗務員室に学園鉄道職員が乗っていてもおかしくはない。駅員だって隣駅への応援やなんやらでよく乗務員室に乗らせてもらっている。
案の定、車掌も何も疑問に思わず乗せてくれた。
ターミナル駅を満員で発車した153系10両編成は、少しづつお客を減らしながら駅から駅へ走って行った。
ついに、車内にほとんど人がいない状況になった。
「次は~、長門北灯台、長門北灯台です。」
車掌がそうアナウンスする。長門島のほぼ北端にある灯台前の駅だ。周辺にろくな施設は無く、唯一運動系部活のグランドがあるくらいか。だが、どこの校舎からも遠いところにあり、多くの運動系部活が同時に大会前にならない限り使われることの無いグランドだと学園鉄道職員さんが言っていた。
海沿いにある待合室がこじんまりあるだけの駅に10両と言う長大編成の153系が停車した。海沿いの景色のよい駅だが、どうにもやたらめったら長いホームとそのホームの長さめいいっぱい使った153系が似合わない。
降りたのはあずさ一人だった。
俺も車掌にお礼を言って153系を降りた。
あずさはもう警戒していないのか、小さな待合室にある無人改札を通った途端、すがたを現した。
一体何をする気なのであろうか?そして姿が現れたことで一つ分かったことがある。
表情だ。
俺が今まで見たことの無いような、気迫のある表情をしていた。
俺はここで尾行をあきらめた。この先は遮蔽物が無く、背の低い雑草の中に道が続いているだけだ。とても尾行できない。
仕方なく、駅の職員用事務室に入った。ここが有人駅だった頃に使われていた事務室のようだ。
この中に居れば気づかれることは無いだろう。
そう思ってここで暇をつぶしていると、駅のすぐ脇にある踏切を自動車が通る音がした。
駅事務室からホームに出て見てみると、“海上保安庁”と書かれたワゴン車が走り去っていった。
・・・灯台の整備、にしてはタイミング良すぎかな・・・
そう思った瞬間、声をかけられた。
「あれ?八島君?」
「うぉ!?」
・・・ってあずさだ。
まずい。非常にまずい。
「何してるんだ?こんな誰も使用しないような駅で。」
「鉄道オタクはこんな誰も使用しないような駅も訪ねて回るのさ。それにこの服(学園鉄道制服)を着ていれば無料だしな。」
「へぇ~。そうなんだ~。」
「んで、あずさは何してるんだ?」
「ちょっとね。この先にある灯台からの景色が好きなんだ。作りかけの橋があってね。」
「作りかけの橋?」
「知らない?
何でも第2の長門島を作る予定だったんだけど途中で中止になったらしく、橋を半分作ったところで工事が打ち切られたんだ。線路も通っているから知っていると思ったのだけど・・・」
「ほぉ~。この島も広いからな。知らなかった。このあたりは初めてきたし。」
その時、“カァンカァンカァンカァン!”という踏切と同じ音が鳴ってホームにある列車接近警報器が列車の接近を知らせた。この装置、一見すると田舎の駅などにある構内踏切に似ている。というか恐らく同じ機械だ。
「お、電車が来たな。」
475系電車は3両編成で入線し、高等部近くのターミナル駅に到着するころには7両追加で連結して10両編成で入線した。




