プロローグ その3
「俺、ちょっと」
急にハーディが立ち上がった。
「どこいくの? まだゴブリンがいるかもよ」
「小便だよ、小便」
ハーディが木立の中に消えていく。そういえば、彼は子供の頃からそうだった。三人で話していると、いつもふらっとどこかへ行ってしまって、またいつの間にか戻ってくる。
「変わったよ、デボちゃんも」
突然、ロデムが言った。
季節は春。うららかな午後の日差しが木立の間を照らす。吹き出したばかりの新芽の匂いが、鼻をくすぐった。
「えっ、そうかな。私、変わったかな。あ、でも髪は伸ばしてるんだよ。だから変わって見えるのかも」
「そうじゃなくて、きれいになった」
驚いてロデムをみた。冗談だとは思うけれど、ハーディと違ってロデムはあんまり冗談を言うタイプじゃない。
ロデムの表情は真剣だった。
私の心臓が、クイックの魔法でもかかったかのように早鐘を打ちはじめる。
「ロ、ロデムも変わったね。前はそんなこと平気で言えるひとじゃなかったのに。神学校って、女の子の口説き方も教えてくれるの?」
「平気で言ってるわけじゃないよ。今、すっごい心臓がドキドキしてる」
そういうと、ロデムは私の手を取って、自分の胸に押し当てた。そういわれても、私には彼の心臓の音を感じ取るような余裕はない。ただ、彼の手は温かかった。
な、なんなの、この急展開は?
確かに、私とロデムは幼馴染で小さい頃から仲が良かったけれど、それは、あくまで友達としての話だ。
もちろん、彼を男の子として意識したことがないわけではない。ロデムは、金髪碧眼で色が白く、童話に出てくる王子様のような外見だ。おまけに、おうちが教会だから物腰が柔らかく、リーベ村の同年代の女の子たちはほとんどみんながロデムに夢中だった。
ちなみにハーディの方も、女の子には結構人気があったと思う。ロデムとは対照的な日に焼けた褐色の肌と短い黒髪で、きりりとしたまなざしからは精悍さがあふれていた。ただ、彼の場合、ちょっと家庭環境が複雑だったから、女の子たちが表立ってキャーキャー騒ぐことはなかった。
ロデムが私やハーディと仲良くしてくれたのは、たぶん、二人とも早くに両親をなくしていたからだ。心優しい教会のお坊ちゃんとして放っておけなかったのだろう。私だって女の子だから、油断してる時には、ついロデムの横顔にぽーっと見とれてしまったりすることもあるけれど、友達以上になりたいなんて図々しいことは考えないように努めていた。
それにロデムの方も、お父さんの跡を継ぐことに一生懸命で、女の子なんて眼中にないって態度だったし。私の知る限り、ロデムが十五歳で神学校に入るまで彼に恋人が出来たことは一度もなかったはずだ。
そんなロデムが、いきなりあんなことを言うなんて。
心臓の鼓動が止まらなくなる。
そりゃそうだ、止まったら大変だ。でも、私は王都の治療師さんに、あんまり動悸が激しくなるようなことはしないようにって言われてるのに、




