プロローグ その2
「大丈夫だったかい」
戦いが終わると、ロデムが飛んできてくれた。
「うん、大丈夫、二回死にかけたけど」
「まったくぼーっとしやがって。どうせお前のことだから、戦闘中だっていうのに何か考え事でもしてたんだろう」
ハーディがきつい言い方をするのはいつものことだ。私は素直に、この旅の記録のタイトルを考えていたことを白状した。
「ばっかじゃねえの。そんなもん考えてて自分が死んじまったら話になんないだろ」
「いい加減にしろ、ハーディ。だいたいデボちゃんが死にかけた二回のうちの一回は、お前のせいなんだからな。なんだ、あのハーディ・ハリケーンってのは」
ハーディが私を責めると、ロデムが助け舟を出してくれる。これもいつものことだった。ロデムはリーベ村にある教会の司祭様の息子で、小さい頃から頭がよかった。がさつで乱暴なところのあるハーディもロデムには頭が上がらない。
「チェッ」
「私も何回も言ってるよね。あのリュートはいいものだから大事にしてって」
「わかったよ。もう使わねえ。ハーディ・ハリケーンは禁断の必殺技ってことにしといてやるよ」
そういうと、ハーディはふくれっつらになった。
子供の頃とおんなじだ。そう思ったら嬉しくなって、思わず吹き出した。
私たち三人は幼馴染だけど、この旅に出る前の数年はまったく顔を合わせる機会がなかった。
十五歳の時に、ロデムは王都にある神学校に進むために村を出た。五年間神学校で勉強をし無事に僧侶になって村に帰ってきたのが先月の話だ。お父さんの体の調子が良くないこともあって、村の教会を引き継ぐことになるらしい。
ハーディも、ロデムと同じ頃に村を出て冒険者になった。国中を回って色々な経験をして、ずいぶん腕を上げたようだ。それはたくましくなった彼の顔立ちや体格を見ればわかる。彼がリーベ村に戻ってきたのは両親のお墓参りのためだったのだけれど、ロデムが村に戻ってきていることを知って、しばらく村にとどまることにしたのだそうだ。
私も十五歳になってしばらくは、冒険者をやったり王都に働きに出たりしていた。けれど結局どれもうまくいかなくて、去年から村に戻っていた。私の両親は幼い頃に死んでいて、私は小さい頃から祖父母に育てられた。そして二十歳になった今でもまだ老いた祖父母の世話になっているというわけだ。恥ずかしい話だけれど、こればかりはどうしようもなかった。
「何笑ってんだよ」
「だって、二人とも変わらないなぁと思って」
私がそう言うと、ハーディとロデムは互いに顔を見合わせた。
「あ、ごめんごめん、変わってないわけないよね。ロデムは立派な僧侶さまになったし、ハーディも熟練の冒険者ってかんじだもん。変わってないのは私だけだ」
子供の頃も、三人でよくこの森に冒険に来たものだった。でもあの頃は、ここまで来るのだってドキドキでこんなにのんびりとはできなかった。それだけ二人がたくましくなったってことだろう。
今回の冒険者ギルドの依頼だって、本当はロデムとハーディの二人だけで十分だったんだと思う。でも、私が村で陰気くさくしてたから気晴らしに誘ってくれたんだ、きっと。




