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第4話 おじいちゃんたちが待ってるので

 フェイは2人の前にしゃがみこんだ。


「だいじょうぶだった?」


 白い服の子が、ぱちりとまばたきをした。


 近くで見ると、思っていたよりずっと小さな顔だった。長いまつげの下の目が、まっすぐフェイを見ている。黒い服の子も、抱きついた腕をほどくのを忘れたまま、同じようにフェイを見ていた。


 2人とも、答えない。


 そのかわり、2人の頬がみるみる赤くなっていった。耳の先まで赤い。


「あれ、顔が赤いよ。どこかぶつけた?」


「い、いえっ」


 白い服の子が首を横に振った。振りすぎて、髪が黒い服の子の顔にばさばさ当たっている。


「……あなたは?」


 小さな声だった。


「おれ? フェイ」


「フェイ……」


 白い服の子は、その名前を口の中でそっと転がすように繰り返した。


 そのときだった。


 固まっていた周りの大人たちが、いっせいにざわめきはじめた。


「おい、あの少年……オーラが無いぞ」

「まさか。そんな人間がいるはずが」

「だが見ろ、何も纏っていない。魔力がまるで無い」


 鎧の男たちが、剣の柄に手をかけたままフェイを見ている。熊を見ていたときと同じ目だった。


 フェイは首をかしげた。オーラ、というのが何のことか分からない。おじいちゃんは、そんな話を一度もしなかった。


「おやめなさい」


 澄んだ声が、ざわめきを断ち切った。


 人垣が左右に割れる。その間を、金の刺繍が入った、深い青のドレスを着た女の人が歩いてきた。周りの大人たちがいっせいに頭を下げていく。


 女の人は白い服の子の肩にそっと手を置いてから、フェイに向きなおった。


「娘を助けてくれて、ありがとう」


 やわらかく笑う人だった。笑うと、目尻に小さな皺が寄る。


「あなたは、どこに住んでいるの?」


「ここの山です」


 フェイは、背中のほうの尾根を指さした。


 それから空を見上げる。日が、だいぶ高くなっていた。鹿は獲れていない。干し肉は切れている。おばあちゃんは、暗くなる前に帰れと言っていた。


「おじいちゃんたちが待ってるので、失礼します!」


 ぺこりと頭を下げると、フェイは草地を駆け出した。


「あっ、待っ――」


 白い服の子の声が、背中に届いた。


 けれどフェイが振り返ったときには、もう森の中だった。木々の間から見えた草地では、大人たちが誰ひとり動かずに、こちらを見ていた。

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