↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/216

第29話 もう1人はどこ

「ヴィクトリアさん」


 フェイは、茶碗を床に置いた。


「なんでヴァルモント家が怪しいってなったの?」


 ヴィクトリアは、少しのあいだ迷っていた。それから、ソフィアとメイベルを見て、小さくうなずいた。


「目撃した者がいたの」


 声をひそめる。


「犯人が捕まるほんの数日前に、王都の外れの酒場で、男が2人、ある貴族の家の者と会っていたの。背の高い鷲鼻の男と、頬に傷のある男。あなたが教えてくれたとおりの顔よ」

「ある貴族って?」

「バルドリック子爵家」


 フェイは、思わず声を上げそうになった。


「グスタフの家!」

「ええ。バルドリック家はヴァルモント家の子分。あの家が自分だけで、王女を狙うなんて大それたことをするとは思えない。だから、本当に糸を引いているのはヴァルモント家だと読んだの」


 ヴィクトリアは、膝の上で両手を握りしめた。


「でも、その数日後に、犯人は捕まった。捕まえたのは私の家じゃない。そして犯人は、ノクターン家の命令だと言った」

「じゃあ……捕まった人は、本物の犯人だけど、言ったことが嘘ってこと?」

「そういうことになるわね」


 フェイは、机の上の号外に目をやった。


 くしゃくしゃになった紙の、見出しの下。細かい字の並んだところに、ふと目が止まった。


 ――捕縛されたのは、背の高い、鷲鼻の男1名。


 1名。


 フェイは、号外を手に取った。何度読んでも、1名と書いてある。背の高い、鷲鼻の男。それだけだ。


「ねえ」


 顔を上げる。


「あのとき、2人いたけど。もう1人は、どこ?」


 部屋の空気が、変わった。


 ヴィクトリアは、ゆっくりと首を横に振った。


「分からないの。号外を見て、捕まったのが1人だと知って、すぐにもう1人を探そうとしたわ。でも、そのときには、もう家の者は誰も動けなくなっていた」


 頬に傷のある、ずんぐりした男。熊に手をかざして、指を赤く光らせた男。


 フェイは、号外を握ったまま考えた。


 バルドリック家の者と会っていた2人。そのうち1人だけが捕まって、ノクターン家のせいだと言った。それなら、もう1人は。


「……もう1人は、バルドリック家にいるんじゃないかな」


 3人が、フェイを見た。


「だって、2人ともバルドリック家に雇われてたんでしょ? 1人が捕まったなら、もう1人は、雇った家が隠してるんじゃないかな。山の獣だって、怪我した仲間は巣に隠すもん」


 フェイは、立ち上がった。


「おれ、見てくる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。