↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/216

第19話 ちょっといいかしら

 決闘から3日が経った。


 昼の学食は、焼いたパンと肉の脂の匂いでいっぱいだった。フェイの前には、皿が4枚積み上がっている。


「フェイ様、それで何皿目ですか?」

「5皿目! ここのごはん、おかわりしていいんだって」


 メイベルが呆れたように笑い、ソフィアは自分のパンを半分ちぎって、黙ってフェイの皿に載せた。


 周りの目は、決闘の前と少し変わっていた。


 ひそひそ声は、まだある。けれど「魔力無し」の後に、「くしゃみの」が付くようになった。フェイが通ると、道を空ける生徒も出てきた。


「あいつの前で、くしゃみさせるなよ」

「壁にめり込むぞ」


 聞こえているけれど、フェイは気にしなかった。肉がおいしかったからだ。


 そのとき、学食のざわめきが、すっと引いた。


 夜の色をした長い髪の女子生徒が、テーブルの間を真っすぐこちらへ歩いてくる。後ろには、あの日と同じ取り巻きの女子生徒たち。


 ヴィクトリア・ノクターンは、フェイたちのテーブルの前で足を止めた。


 ソフィアとメイベルを、ちらりと見る。それから、フェイに向かってにっこりと笑った。


「フェイさん、ごきげんよう。ちょっといいかしら?」

「ヴィクトリア!?」


 ソフィアが、がたんと椅子を鳴らして立ち上がりかけた。フェイはその腕に、そっと手を置いた。


「決闘の立ち会いをしてくれた人だね。もちろんいいよ」


 フェイは最後のひと切れを口に放りこんで、立ち上がった。


 ヴィクトリアは取り巻きたちに「ここで待っていて」とだけ言い、フェイを連れて階段を上っていった。


 屋上に出ると、風が強かった。


 王都の屋根が、どこまでも続いている。その向こうに、小さく山の稜線が見えた。フェイは思わず手すりに身を乗り出した。


「あ、あっちが山だ」

「あなたの家があるところね。賢者バルタザール様の山」


 フェイは振り返った。ヴィクトリアは、手すりから少し離れたところに立っていた。


「調べさせてもらったわ。ごめんなさいね。私の家は、そういうことをするのが仕事なの」


 ヴィクトリアは、風に流れる髪を片手で押さえた。


「木の上から降ってきて、狩猟会の熊を一撃で倒したそうね」

「うん」

「木の上にいたなら、熊を放した人間のことも、全部見ていたはずよね」


 紫の瞳が、まっすぐフェイを見た。


「だから、ひとつだけ訊きたいの。熊を一撃で倒せるあなたが、なぜ犯人を逃したの?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。