↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/216

第15話 見届け人

「グスタフ様の家は、バルドリック子爵家と申しまして」


 闘技場へ向かう渡り廊下で、メイベルが小声で教えてくれた。


「ヴァルモント公爵家の、いわば子分のような家なのです。ヴァルモント家は、王家の剣と呼ばれるお家で……そのご嫡男のレオンハルト様が、アルベルト殿下の親友でいらっしゃいます」


「アルベルト殿下って、ソフィアのお兄さん?」

「はい。2年生でいらっしゃいます」


 ソフィアが、悔しそうに唇を噛んだ。


「ヴァルモント家は、王家でも蔑ろにはできないの。グスタフは、それを分かっていて、あんな態度を取るのよ」


 フェイには、半分くらいしか分からなかった。それでも、グスタフがメイベルに怒鳴ったことだけは、はっきり分かっている。


 闘技場は、校舎の裏手にあった。


 丸く掘り下げた石の舞台を、階段状の客席がぐるりと囲んでいる。その客席が、もう人で埋まりかけていた。同じクラスの生徒だけではない。上級生も、知らない顔も大勢いた。


「魔力無しが、決闘だってよ」

「相手はバルドリックだろ。終わったな」

「何秒もつか賭けようぜ」


 舞台の向こう側で、グスタフが腕を組んで待っていた。取り巻きらしい男子たちが、その後ろでにやにやしている。


 そのとき、客席の上のほうが、さっと静かになった。


「一体、何の騒ぎ?」


 階段を下りてきたのは、1人の女子生徒だった。


 夜の色をした長い髪に、つり上がった紫の瞳。後ろに、女子生徒を3人従えている。その人が歩くと、前にいた生徒たちが、何も言われないのに左右へ道を空けた。


「ヴィクトリア・ノクターン様……」


 メイベルが、小さくつぶやいた。


 ヴィクトリアは舞台を見下ろして、フェイのところで目を止め、すっと細めた。次の瞬間、紫の瞳が見開かれる。


「何あの子。魔力が無いじゃない」


「その通りです、ヴィクトリア様!」


 取り巻きの1人が、勢いこんで言った。


「やつが、噂の魔力無しのフェイです!」


「あぁ、彼が……ソフィアの……」


 ヴィクトリアは、何かを確かめるようにつぶやいた。それから、唇の端を持ち上げた。


「面白いじゃない!」


 ヴィクトリアは、ひらりと舞台に下り立った。


「この決闘、私が見届け人になるわ!」


「ヴィ、ヴィクトリア様!?」


 グスタフの声が裏返った。


「な、なぜ……普段は、こういったことには干渉なさらないのに……」

「気が向いたの。不満?」

「い、いえ! い、いいでしょう! それでは、お願いいたします!」


 グスタフは深々と頭を下げた。下げたまま、口の中でぶつぶつと何か言っている。


 フェイは耳がいい。山で、遠くの鹿の足音を聞き分けてきた耳だ。


「えーい……これで負けたら、レオンハルト様に顔向けできない……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。