↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
126/216

第126話 石の剣士の門

 帝立剣武学院の門には、石の剣士が2人、向かい合って立っていた。


 2人の石の剣が、門の上で、斜めに交わっている。その下をくぐると、広い中庭だった。


 中庭は、人で埋まっていた。


 何百人もの学生が、列をつくって、木の剣を振っていた。上から下へ。下から上へ。号令に合わせて、何百本もの剣が、同じ高さで止まる。止まるたびに、ざっ、と砂の鳴る音がした。


「……すごい」


 フェイは、口を開けて見ていた。


 隣で、ジルも、同じ顔をしていた。ただ、ジルの目は、剣の先ではなく、学生たちの足もとを見ていた。


「足がそろっています。あの人数で、半歩もずれない」

「それって、すごいの?」

「……王国の騎士団でも、なかなか」


 号令が、止んだ。


 中庭の正面に、石の壇があった。その上に、大きな男が立っていた。


 白い髭を短く刈りこみ、右の頬から首にかけて、古い傷が走っている。腕を組んで立っているだけなのに、中庭じゅうの学生が、背筋を伸ばした。


「今日から、留学生が2人入る。前へ出ろ」


 フェイとジルは、壇の前へ出た。


「アルセリア王国、アイゼンガルト辺境伯家のブリジット」


 中庭が、少しざわついた。


「アイゼンガルト……」

「国境のあの家か」

「女だぞ」


 ジルは、剣の柄に手を添えて、まっすぐに立っていた。ざわめきが、ゆっくりと引いていった。


「同じく、アルセリア王国の伯爵、フェイ」


 今度のざわめきは、引かなかった。


「伯爵だと?」

「魔法の国の貴族が、剣を学びに?」

「剣も下げてないぞ」


 どこかで、笑い声がした。それが、あちこちに広がった。


 壇の上の男が、フェイを見下ろした。


「伯爵。お前の剣は、どこだ?」

「持ってないです」


 中庭が、どっと沸いた。


 フェイは、首をかしげた。山で騎士爵をもらった日にも、同じことを言った気がする。


「剣を持たずに、剣武学院へ来たのか?」

「はい。剣を学びに来たので」


 笑い声が、一段、大きくなった。


 ジルが、横で、剣の柄を握りしめていた。指の関節が、白くなっていた。


「ジル。大丈夫」


 フェイが小声で言うと、ジルは、ぎゅっと唇を結んで、手を離した。


 壇の上の男は、笑わなかった。腕を組んだまま、フェイの肩から、腕、腰、脚へと、目を下ろしていった。関所の兵と、同じ目の動きだった。


「……よかろう。学院長のゲルハルトだ。この学院では、肩書きは、何の役にも立たん」


 男は、壇の上から、中庭じゅうに響く声で言った。


「伯爵だろうが、皇女殿下だろうが、同じだ。腕を見せろ。それだけだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。