第11話 王都の門
王都の門は、山のいちばん高い木よりも高かった。
馬車がその下をくぐったとき、フェイは窓に顔を押しつけたまま、口を開けっぱなしにしていた。
石の道。石の家。その家が、3つも4つも上に積み重なっている。道の両側には店がずらりと並び、焼いた肉と、甘い菓子と、知らない花の匂いが、いっぺんに鼻に飛びこんできた。
「人が、いっぱいいる……」
山では、1日に会うのはおじいちゃんとおばあちゃんの2人だけだった。ここでは、まばたきするあいだに100人は通り過ぎていく。
その人たちが、ときどき馬車のほうを振り返った。王家の紋が珍しいのだろう、とフェイは思った。窓から顔を出しているフェイを見て、ぎょっとしたように足を止める人もいる。
「おれの顔、なんか付いてる?」
頬をこすってみたけれど、何も付いていなかった。
坂を上りきったところで、馬車が止まった。
目の前に、白い石の建物が建っていた。尖った屋根がいくつも空に突き出していて、門の上には、杖と本を組み合わせた紋章が掲げてある。
王都の魔法学校。今日から、フェイが通う場所だ。
「フェイ!」
馬車の扉を開けた瞬間、名前を呼ばれた。
門の前に、ソフィアとメイベルが立っていた。2人とも、紺色の上着に白い襟の、揃いの服を着ている。
「ソフィア様! メイベルさん!」
フェイが飛び降りると、ソフィアはなぜか、むっと頬をふくらませた。
「様は、いりません」
「え、でも、おうじょ……王女様なんだよね?」
「学校では、みんな同じ生徒です。それに、あなたは私の命の恩人なんですから」
ソフィアは、そこで少しだけ目をそらした。
「……ソフィア、と呼んでください」
隣で、メイベルが小さく咳払いをした。
「わたくしも、メイベルで結構です」
「わかった。ソフィアと、メイベル!」
フェイがにっと笑うと、2人はそろって下を向いた。耳が赤い。
「そ、それより、制服を受け取りに行きましょう。明日はもう、入学式ですから」
メイベルが、フェイの包みを持とうと手をのばす。フェイは慌ててそれを背負い直した。
門をくぐると、中庭に同じ服の生徒たちが大勢いた。
その何人かが、フェイを見た。
目を細めて、じっと。それから顔を寄せ合って、ひそひそと何か言い合っている。




