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スキャンダル  作者: 火星宝剣


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4/7

爆照(バクテラス)

 その怪獣は、ギョロリとした大きな目を真開いて彼女に突進してきた。


「グエーー!」


唾液を振り撒きながら彼女に迫る——。


気づけば僕の体は彼女を庇って飛び出していた。

一度惚れた女だ。そうなってしまうのは当たり前だったのかも知れない。


—ここで僕が重傷を負ったら、もしかしたら最期にキスくらいしてもらえるかも—


小賢しい思案が巡った。

その霧を晴らす様に、怪獣の牙が手首に突き刺さった。


「ンニィィィィィィ」


血は出なかった。

しかし皮膚に黄色いエキスが染みていくのを感じた。

怪獣に目をやると、その瞬間には体が薄くなり、発光していた。

まるで太陽の様に。


「ふう、助かったンゴォ」


僕の心配をする彼女と僕を見下ろし、浮遊を始めた怪獣が流暢な日本語にほンゴで話し出した。


僕らは呆気に取られて口を聞くことができなかった。少なくとも僕は痛みでそれどころでは無かった。


「ワイは太陽神。いや、太陽神の素質があったしがないワニである。過ぎた力の継承、ありがたく思うンゴ。サンガツ」


満足そうに緑色に戻り始めた両手を眺めた。


反対に僕の指先は黄色く染まりはじめていた。


「うわぁ!なんだコレ、どうしてくれるんだお前!」


結構本気で怒ったつもりだった。

しかし、ワニには本気度が通じなかった様だった。

ますます傲慢に続けた。


「ワイはなぁ、ある太陽神に力を与えられたンゴねぇ、まぁワイには過ぎた力やってけど。だからおまいに継承の継承をさせにきたんや。まぁおまいが軽く軽傷したけどな」


「ハハハハハ面白いこと言うワニだ。殺すぞ」


つい感情を露わにキレてしまった。情けない。美緒がいるのに。だからモテないんだ。


僕の両手はアジア人でもおかしい程に黄色く染まってしまった。

この落とし前をつけなくては、気づけば拳を振り上げていた。

その拳を思いっきり突き出した瞬間——。


拳の先から眩い光弾が飛び出した。

その光弾は光状になったワニをすり抜け、さっき転びかけた手すりを打ち砕いた。

思いがけず僕は右手を確認した。

右手は一際強く輝いた後、直ぐに元の肌色に戻った。


その光景にはあのワニでさえ驚いて見ていた。


「やはりおまいには素質があったンゴ。最期におまいの様な後継者候補を見つけられてよかったンゴネェ」


わけが分からなかった。そんな困惑する僕らを残してワニは昇天して行った。


キーンコーンカーンコーン



まずい、お昼休みが終わってしまった。次の授業は遠く離れた実験室だ。本当にまずい。


弁当の残骸を放置して急いで僕らは屋上の扉を開けた、いや、正しくは開けようとした。


老朽化した戸は想像より厄介な物である。


焦る僕らをものとせず、一向に開く気配がない。

助走をつけて扉に蹴りを入れた。

それでも開かなかった。

蹴り続けるしかない、そう再び助走をつけようと駆けようとした、しかしその足は空中で空転した。


美緒が口を押さえて目を丸くし、僕を指さしてかたまっている。


「え、どうしたの?(かわよ)」


自分で足を見下ろすと、とても珍妙不可思議にも僕は空に立っていた。これがソーラー(空)パワー?


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