ほんとうに暗いものは明るいものの中にあるんやで
とても苦しい時間が流れた。
ようやくの昼休み。僕も美緒も席には学年中の野次馬達が集まっていた。
既にこの学年で僕らの事件の事を知らない者はいないとわかった。
隙を見て右手で弁当を掴み、駆け出した。流石に周りに味方がいないこの状況でも美緒の手を引いて逃げる勇気は無かった。
パルクール並みの速さで僕は屋上に隠れた。
空は青く澄んだままで、僕は学校の騒がしさを忘れられた。
僕ら一年の教室は四階だ。
消えた僕を探し回る声が空いたままの窓から聞こえる。
「はぁあ、なんかすっごい洗脳能力でも目覚めねぇかなぁ」
疲れ切った僕はでまかせに呟いた。
ため息は青い広い空に吸い込まれていった。
その時不思議なことが起こった!
『ンニィィィィィィィィィィィィィィ』
青い空によく映える黄色の流星が太陽の中心から飛び出してきたでは無いか!
驚いて起き上がり身を乗り出す。
古びてささくれ立った手すりから必死で身を乗り出す。その彗星を見る為に。
彗星は進路を変え、真っ直ぐ僕の方に向かってきた。
まずい、直撃は避けなくては!当たったらまずい、そんなことは下の階で騒いでいるバカどもにも分かることだ。
躱そうと、身を捩ったその時、足元に転がり込んだ弁当箱を踏んでしまった。
弁当箱:「ンニィィィィィィ(崩壊する音)」
弁当箱の割れる音、飛び散る中身、逆さまになる景色、全てがスローモーションで動いた。
最早何かに掴まろうと言う意思さえ無くなっていた。誤解されたまま旅立つのもこれはまた一興。そう思ってしまった。
静かに目を閉じた——。
その時だった。
しっかりとした感触で、足首を掴まれた。
「ンニィィィィィィィィィ!」
必死に僕を支える可憐であり憧れの声が聞こえた。僕の意識は再び『生きよう』と言う強い意志へと変わる。
なけなしの腹筋で起き上がり、手すりに尻をついた。
それを同時として、僕の背に雷にでも撃たれたかの様な衝撃が加えられた。
その衝撃で僕の体は彼女へと覆い被さる。
空気が痺れた。
すぐにどいた。さも無いと僕の心臓がもたない。本能のままに赴く所だった。
振り向くと、そこには信じ難いものが居た。
「こま?」
ギョロリとした白目がちの黄色いワニが立っていた。
そのワニは僕を見て雄叫びと共に突進してきた。
腕を広げて美緒さんを庇う。
僕の覚悟虚しく、膝の丈程の怪獣は股をくぐり、僕のひっくり返った弁当箱を漁っていた。
弁当を美味そうに貪るその怪獣を横目に、面と向き合って彼女にお礼を伝えた。
彼女は僕が本気で「自◯ピー」をしようとしていたと思ったらしい。(もちろん自らを慰む方では無い)
本気で心配してくれていた事を知り、昨日の衝撃を忘れて脳の中はお花畑になっていた。
「ンゴォ!女だ!」
怪獣は飯を食べ終え、僕らの方を振り返っていた——。




