第6話:認識の瞬間、あるいは磨耗した軌道の外へ
前回の朝、隆との約束とともに
相沢は職場への階段を上りました。
しかし彼の心はすでに別の場所に——
夢の中で、初めて彼の名を呼んだ
あの少女のそばに。
今回は、週末の電車の中での物語です。
「残念ながら、出かけるんだ」と彼は答えた。「でも、これで終わりじゃない。他の週末もあるさ」
その言葉と共に、彼の口角は再びわずかに上へと動いた。
隆は、その微妙な感情の変化を黙って観察していた。心の底では、彼は誤魔化されてはいなかった。
その「外出」というのは年上の同僚の単なる新たな言い訳であり、彼を苦しめている何かからの逃避に過ぎないと、隆は固く信じていた。
相沢が未だに鎧のように身に纏っている、あの根本的な悲しみからの逃避だと。
「でも、また行くって約束してくださいよ」と、青年はついに沈黙を破って口を開いた。
彼は踊り場で立ち止まり、相沢の目をまっすぐに見つめた。「次の機会に、必ず」
『本当のところ…あれは悪くなかったな』と相沢は思い、突然の温かい戸惑いを感じた。「それじゃあ、財務の頂を目指して出発しようか!」
隆は両手を高く上げ、活力を取り戻して階段を駆け上がっていった。
『相変わらず変わり者だな』相沢は微笑み、彼の後を追った。
職場での一日は驚くほど早く過ぎた。いつもより早くオフィスを出られたことは、ここ数週間の殺人的なスケジュールの後では、本当に嬉しい変化だった。
スマートフォンで時刻表を確認すると、次の電車は数分後だった。
『これで一時間多く眠れる』――その単純な計算が彼を喜ばせた。昨晩のバーでの疲れが、まだ体にこたえていたのだ。
駅ではあまりにも頻繁にあくびをしたため、ホームで待っている何人かの人々にうつしてしまったほどだ。
車内はこの時間帯にしては空いており、彼は窓際の空席を問題なく見つけることができた。
彼は疲れた瞳で、暗闇の中で瞬く光を見つめていた。
夜の電車の帰路には、特有の魅力があった。無機質な光とインクのような漆黒、車内の暖かさと窓の外の冷たい虚無――そうした鋭いコントラストは、一方がなければもう一方も存在し得ないことを彼に思い出させた。
遠くの星々さえもが、絶対的な静けさをもってそのすべてを見下ろしているようだった。
スピーカーからの機械的な声が彼の駅を告げた。彼は席を立ち、一握りの他の乗客たちと共に降車口へと向かった。
ブレーキの軋む音、ドアが開くプシューという音、そして自宅までの見慣れた短い道のり。彼の住む辺りはすでに深い静寂に沈んでいた。
同じ電車を降りた乗客たちのシルエットは、あっという間に暗闇へと溶けていった。
相沢はいつもの場所で立ち止まり、煙草に火をつけた。夜の冷気は、まばらな通行人たちを容赦なく責め立てていた。
冷たい突風が骨の髄まで彼を貫いた。風を背にしてどうにか穏やかに吸い終えると、火を消した吸い殻を街頭のゴミ箱の灰皿に投げ捨てた。
すっかり冷え切り、彼はアパートへ向かって歩き出した。
公園の小道ではさらに風が強かった。朝は軽いジャケットで外出できるのに、夜にはほとんど分厚い冬のコートが必要になる、この油断ならない秋の気候を彼は憎んでいた。
帰宅後は何も食べなかった。ただ体を温めるために、さっとシャワーを浴びただけだった。
バスルームを出ると、アパートの部屋に広がる少しの散らかり具合を見渡した。
『祖父母の家から戻ったら、ここを片付けないとな』と彼は思った。
布団に潜り込み、日課のようにスマートフォンのアラームがセットされているかを確認すると、ほとんど一瞬で眠りに落ちた。
無気力からの本当の目覚めは、土曜日の朝になってようやく訪れた。それは週に数少ない、限界まで眠れる日の一つだったが、運命は全く別の計画を立てていた。
執拗で大きな電話の着信音が彼を起こした。相沢は手探りでナイトテーブルに手を伸ばし、画面の緑色のアイコンを押した。
「もしもし…?」ベッドの端に重々しく腰を下ろし、彼はかすれた声で言った。「もしもし、相沢? 何時に着くの?」
受話器から、祖母の異常に元気な声が聞こえてきた。「うーん…分からない。十一時頃かな。」
「十一時ってどういうこと? もう電車に乗ってるの?」「いや、まだ…ていうか、今何時?」
「十時十二分よ。」
その情報は、彼に感電したような衝撃を与えた。眠気は瞬時に頭から吹き飛び、突然のパニックに取って代わられた。
当初の予定よりも、はるかに長く眠ってしまっていた。
「正直に言うと、今起こされたところだ。もっと全然早い時間だと思ってた。」
「出発したらまた連絡する」目をこすりながら、彼は電話口で呟いた。「分かったわ、早く準備しなさい。」
「連絡、待ってるわよ」
祖母は彼の返事を待つことすらなく、電話を切った。
「十時十二分か…」と彼は独りごち、マットレスに仰向けに力なく倒れ込んだ。
そしてその時、彼の中にそれが蘇った。夢だ。
昨夜の悪夢の記憶が、全力で彼を打ち据えた。彼女がまたそこにいたのだ。
砂場で遊んでいる、白いワンピースを着たあの同じ少女。しかし今回は、全く違っていた。
彼はいつも完全に透明な存在として傍らに立っており、彼女も彼に気づいていないようだった。
だが今回は、彼女の顔がゆっくりと彼の方を向いたのだ。
彼女は彼の目を真っ直ぐに見つめ、その唇は音もなく動き、一つの言葉を形作った。しかしそれは、彼の頭の中で水晶のように澄み切って聞こえた。
『相沢』。それは問いかけではなかった。
それは断言だった。初めて、彼はただの物言わぬ傍観者ではなかった。彼は認識されたのだ。
その発見にまだ呆然としながら横たわっていると、激しい咳の発作が彼を襲った。
肺を吐き出してしまうのではないかと一瞬恐れるほど、それは彼を激しく揺さぶった。
彼はベッドの上で丸くなり、痛みを伴う痙攣が収まるのを待ってから、さらに数回咳払いをした。
体は痛み、疲れ切っていたが、待っている祖父母のことを思うと諦めるわけにはいかなかった。彼は無理やり立ち上がった。
眠い目をこすりながら、重い足取りでバスルームへと向かった。
顔に浴びた冷たい水はこの疲労に大して効き目がなかったので、彼はシャワーの栓をひねった。
氷のような水流が彼の肌を打ち、激しい身震いを引き起こした。
『うっ、冷た!』と思いながら、彼は慌てて温度調節のダイヤルを回した。
ついに理想的な温度に設定できると、彼は頭を下げ、温かいお湯が体を自由に流れ落ちるのに任せた。 かつて大好きだったウォーターパークと、打たせ湯の力強いマッサージを思い出した。もう何年になるだろう? 十年か?
自分の体がこれほど力強く、無邪気だったのがいつだったか、彼には思い出せなかった。
しっかりとした朝食は諦め、手早くヨーグルトだけをかき込んだ。どうせ祖母の家に行けば、到底食べきれないほどの御馳走が待っていることをよく知っていたからだ。
彼は身支度に取りかかった。清潔なシャツとズボンにアイロンをかけ、最後に靴を丁寧に磨き上げて、長らく失われていた輝きを取り戻させた。
これほど久しぶりなのだから、手ぶらで行くわけにはいかなかった。スマートフォンで電車の発車時刻を調べた。四十分の猶予があった。
祖母への花束と、祖父への良質なウイスキーのボトルを途中で買うのにちょうどいい時間だった。
花屋は決して通り道ではなかったが、彼は一瞬たりともためらわなかった。
十五分後、彼は黄色と白の水仙を腕いっぱいに抱えて店から出てきた。
そのすぐ後には、紙袋の中の花のすぐ隣に、老人がお気に入りのウイスキーが収まっていた。これで全て揃った。
駅に着いたのは、電車の発車わずか四分前だった。朝の一服をする時間などなかった。
地下通路を抜けて反対側のホームへ行き、これまで一度も待ったことのない場所に立った。
奇妙な胸の痛みを感じた。まるで一瞬、オフィスと家との果てしない往復という、自分のすり減った軌道から抜け出したかのように。
今日は反対方向へ向かっているのだ。
スピーカーからアナウンスが流れた。相沢はふと、家族への訪問を考えるだけでいつも胃を締め付けていたあの神経質な痛みを感じていないことに気がついた。
隆との率直な会話の後で、彼の中の何かがついに弾けたのだ。
日々の不安を静めてくれたのと同じ力が、彼の夢の中の何かをも動かしたのだろうか、と彼は考えた。
到着する列車の金属的な軋み音が、彼を物思いから引き戻した。
旅程は約一時間だった。土曜日の午前中、電車はかなり混んでいた。
彼は何とか空席を見つけることができた。鞄を上の棚に押し込み、祖父母への贈り物の入ったビニール袋だけを手元に残した。窓の外では、強い日差しにもかかわらず、冷気がすでに木々の葉を最初の秋色に染め上げていた。彼は花束に視線を留め、慎重にそれを袋から取り出した。花を手に持ったまま、再び窓の外に目を向けた。
しかし、赤やオレンジ、黄色のその癒やされるような色合いも、彼にとってはただのぼやけた背景に過ぎなかった。
彼の注意はすべて別の場所へと向かっていた――あの少女が再び姿を現した、未知なる内なる領域へと。 彼女が何者なのかは依然として分からなかったが、一つだけ確かなことがあった。今回、初めて、彼女は彼と接触を図ろうとしていたのだ。
『夢とは一体何なのだろう?』焦点の合わない目で窓の外を見つめながら、彼は考えた。『私たちをどこへ導くのだろうか?』
『もしそれが単なるランダムな映像ではなく、肉体から切り離され、全く別の次元を彷徨う魂の真の旅路だとしたら?』
ほのかなラベンダーの香りと衣擦れの音が、唐突に彼をその沈思から引き戻した。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ラベンダーの香り。
それは、相沢の「往復」を変えた瞬間でした。
次の話でまたお会いしましょう。
— Tuttimi




