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63話 眠気と戦え 怒りの隆麻

灯詠学園第四寮三一二号室。

カーテンの隙間から太陽の光が透き抜け、部屋を照らす。

秋司は光をまぶたで感じ、ゆっくりと目を覚ます。


「・・・。今、何時だろう・・・。あぁー・・・。やばーい・・・」


ぼやけた視界で時計を見ると、血転術基礎学の授業が始まる十五分前だった。


「柊真くん、起きてー。時間がないよー」


秋司はルームメイトで、掛け布団からほとんど身体が飛び出していて、熟睡している柊真に声をかける。

その声が届き、柊真はゆっくりと目を覚ます。


「なに・・・。時間・・・? なんのー・・・?」

「授業があと少しで始まっちゃうの」

「あー・・・。授業・・・? 授業ーー。やべぇー」


柊真は寝ぼけた様子で声をゆったりと出していたが、秋司の言葉を聞いて、勢いよく飛び起きる。


「あの先生、おっかねーんだよ・・・。急がないと・・・」


柊真の血転術基礎学のクラスは四組。

柊真は四組の教員を思い浮かべて、急いで準備をする。


「なんで起きれなかったんだろう・・・」

「それはどっかの誰かがカクレテンを呼び出して、ずっと独り言を話していたのと、カクレテンが帰った後も、テンションが上がったまま独り言が暴走していたからじゃない・・・?」

「えー。独り言じゃないよー。テンチャ(秋司が召約、つまり召喚の許可を出し合ったカクレテンにつけた名前)と柊真くんに話しかけていたんだよー」

「・・・。そこかよ・・・」


昨晩、課外学習から帰ってきた灯詠学園一年生。

その中でも、秋司、リスタ、柊真、諒介、カズセは一番最後に灯詠学園に帰ってきた。

五人は灯詠学園に着くと、真っ直ぐ寮に向かう・・・ことはなく、周辺部へ向かい、夜ごはんを食べた。

ご飯を食べた後も、寮に向かうことはなく、近くを探検していた。

それぞれの部屋に帰宅後、秋司は寝る準備が整うと、就寝する前に、カクレテンのテンチャを召喚術で呼び出し、両手で抱きかかえながら話をしていた(ほとんど秋司の一方通行)。

テンチャは夕方、秋司と柊真が結界に閉じ込められていた時、まりすけと会話をしていた。

その時に、秋司に毛を渡そうと思っていることをまりすけに話すと、まりすけはテンチャにアドバイス(秋司対策)をしていた。

その内容は、秋司と召約を交わすと、結構な頻度で呼び出されること。

召喚の許可を出した日は、絶対に呼び出され、拒否すると生息地にやってきて、見つかるまで探し続け、見つかると最後、捕まって永遠に会話をさせられる。

まりすけは召約を交わした日の召喚、つまり呼び出しを拒否したため、次の日に、秋司が森にやってきて見つかり、一日中会話をするはめになっていた。

ごまきちとささひこはその様子を見て、秋司と召約を交わすことをやめた。

まりすけのアドバイスを聞いたテンチャは起きていたこともあり、秋司の召喚に応じ、数十分の間話を聞いていた。

テンチャの心境は、一日中捕まるよりは、数十分我慢した方が断然マシ、といったところだろう。

テンチャが帰った後も、課外学習の余韻なのか、それとも深夜テンションなのか、柊真に話しかけ続けていた秋司。

ちなみに、柊真は秋司とテンチャの様子にチラチラと視線を向けて口を尖らせていた。

そんな事があり、今二人は寝坊し、遅刻しそうになっている。

二人は歯を磨き、着替え、急いで部屋を飛び出て行く。

なんとか授業が始まる前に、それぞれの教室に入った。

秋司が教室に入ると、秋司や柊真と違い、しっかりと()()()()()諒介が出入り口に近い席に座っていた。

秋司が諒介の隣に座ると同時にチャイムが鳴り、教員の滝崎隆麻が大きな欠伸をしながら教室に入って来た。

そのまま、小声で授業を始める。

秋司は、授業開始直後はしっかりと目を開けて隆麻の話を聞いていたが、授業が始まって時間が経過していくにつれて、秋司のまぶたは段々と落ちていく。

やがて両腕を組んで机につけ、左手首近くに右頬をつけて、眠りに就いた。


「・・・。おい、牧本ー・・・。お前は寝るんじゃねー」

「んっ・・・。いっ・・・」


今まで小声で怠そうに授業を進めていた隆麻だったが、眠り始めた秋司が視界に入ると、急に大きな声を出して秋司が座っている席に近づく。

その大きな声を聞いて秋司は驚きながら目を覚ます。


「ご、ごめんなさい・・・」

「お前だけは許さねーかんなー。あー、あとお前もだー、杉田ぁー」

「は・・・、はい・・・」


秋司は驚き固まった表情で、近づいてきた隆麻に謝った。

しかし、隆麻は大声を上げたまま、秋司の横でしっかりと授業を受けている諒介にも怒りの視線を向ける。

諒介も秋司と同じように、驚き固まっている。


「お前らがもたもたしていたせいで・・・、昨日六時間しかゲームできなかったんだよー。お陰様で寝不足だー。すぐにでも寝てぇ俺が踏ん張りながら授業してんだから、原因のお前ら二人はゼッテーに寝るなっ」

「あ・・・、はい・・・」


隆麻はさらに大きな声を上げ、顔を強張らせて話す。

秋司は隆麻の言葉に戸惑いながらも圧に押され、小声で返事をした。

その後、なんとか揺らめきながらも、まぶたを上げて授業を受ける秋司。

やがてチャイムが鳴り、授業が終わった。

無事にあの後、眠ることなく授業を終えられた秋司。

しかし、この後も業血司感知学の授業を取っている秋司は薄い視界のまま二一一教室にふらつきながら向かった。

休み時間が終わり、二一一教室では業血司感知学の授業が始まった。

教室の出入り口に近い一番右後ろの三人用机の席に座った秋司、リスタ、柊真と三人の前に座っているカズセは授業開始と共に、夢の中に入った。

やがて授業は終わり、終了のチャイムと同時に目を覚ました秋司とカズセ。

二人はリスタと柊真を起こして、教室を後にした。

熟睡できたのか、それとも目覚めがよかったのか、秋司とリスタはすっかり眠気を吹き飛ばしていた。

今日はもう授業を取っていない四人。


うーん・・・。

この後どうしようかな。

ていうか・・・、今の授業全く聞いていなかった・・・。

うぅ・・・。

後で透くんにノート見せてもらお・・・。


「んんっー・・・。さーて、どこ行くかなぁー・・・」


リスタは両腕を大きく広げて少し背中を反り、身体を伸ばす。

リスタは血転術基礎学(リスタは一組)の時も爆睡していたおかげで、今はすっかり元気。

今日も何かを企んでいる様だ。

柊真とカズセは血転術基礎学四組の担当教員に怯えながら一睡もできなかった。

それもあり、まだ眠気が覚めず、ウトウトとしている。

四人は一号棟から出ると、リスタは左側に建っている四号棟に視線を向けた。


(ん−・・・。そういえば、入学会の時に教師がなんか言っていたよな・・・。えーっと、4号棟に行ったのかと、焦った様子で。四号棟か・・・)


リスタは悪い笑みを浮かべて、四号棟に向かった。


あれ・・・、リスタくんどこに行くんだろう・・・。

んっ? 

あそこは四号棟・・・。

そういえば、四号棟に言ったことないなぁ。

二号棟と三号棟にも行ったことないけど。

一号棟には教室とか実験室とか、教員室とか、会議室とかがあったけど四号棟にはどんな部屋があるんだろう?

やっぱり教室とかかなぁ?


秋司は興味津々な様子でリスタと共に四号棟に向かった。

柊真とカズセは薄い視界のまま、覚束ない足取りで第四寮に向かった。


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