56話 密猟者を探しだせ
うーん、どうしよう?
どうやってガゼルを連れ去った業血司使いを見つけ出そう。
階段を駆け上がり、地下から出た秋司、柊真、諒介、そして秋司のマイスペースにリュックサックを入れてもらったカズセ。
四人はガゼルを連れ去った業血司使いを追いかけようとしていたが、どうやって行き先を突き止めるか考えていた。
草原じゃ、足跡が分かりにくい。
そもそも、足跡が見えたところで誰の足跡なのか分からないか・・・。
「おーい、こっちになんかタイヤの跡っぽいものがあるぞ」
柊真は少し離れたところで、車が通ったであろう跡を見つけた。
「それだっ」
そうだ。
ガゼルを四匹、無理やり連れ去ったってことは、車で移動したんだ。
見えにくいけど、タイヤに踏み倒されたっぽい草が続いている。
これを辿っていけば、業血司使いを見つけることができるかも。
四人はタイヤが通った跡を辿って走り出した。
「こっちの方向。東部エリア一に向かっているね」
「エリア一?」
諒介はタイヤ跡の行き先を考察した。
カズセは諒介の言葉に反応して声を漏らす。
「うん。つまり、フィーべから出ようとしている。東部のエリア一はアレベリと繋がっているから」
諒介は険しい表情を浮かべた。
諒介の声を聞いて、秋司も焦りの表情を浮かべる。
まずい。
もう既に暗くなってきている。
早く追いつかないと。
四人は走るスピードを速めた。
少し時間が経つと、太陽は完全に消え、月明かりと星が草原を優しく照らし始めた。
それと同時に、横転しているトラックが視界に入ってきた。
「トラック・・・。あれかーー」
柊真はトラックが視界に入ると、さらにスピードを上げ、荷台の扉に右足の飛び蹴りを放ち、扉を破壊する。
すると、中には檻があり、その中に四匹のガゼルが捕えられていた。
柊真は檻も破壊して、ガゼルをその場から逃した。
秋司はトラックの運転席を見るが、人は乗っていない。
「何があったんだろう? とにかく、ガゼルが無事でよかった」
諒介はトラックが横転している光景を見て、疑問を持つと同時に、無事だったガゼルを見て安堵の声を漏らした。
「おーい、なんか倒れているよー」
カズセは少し離れた位置で、意識を失って倒れている人間を二人見つけた。
「柊真くん、この人たち?」
「んー。一人は見た顔だな。でも、俺が見たもう一人の顔はいない」
秋司は犯人と遭遇した柊真を呼んで、尋ねる。
柊真は倒れている二人をじっと見て、答えた。
四人が倒れている二人の近くに集まっていると、地面が軽く揺れ始めた。
「んっ。なんだろう・・・」
秋司が辺りを見渡すと、前方から誰かが走って来る姿が見えた。
「はあはあ・・・。ったくよー。なんなんだよっー」
「うー・・・。リスタっ?」
柊真も前方を見ると、そこには右手に骨付き肉を持ち、息を切らしながらノガアラシと並走しているリスタの姿が視界に入ってきた。
「本当だっ。リスタくんっ」
「・・・。何やってんだ? あのバカは・・・」
秋司の視界にもリスタの姿がハッキリと映ると、秋司は右手を大きく振った。
カズセの視界にもリスタの姿が映ると、カズセは目を細めて小声を漏らした。
「おう、秋司ー。柊真と諒介も、よっ。そうだ、逃げろー。やべーのが来るぞー」
リスタは三人に大声で声をかける。
「んっ・・・。なんだあれはー?」
リスタの後方を見た柊真は驚きの声を発した。
少しすると、秋司と諒介、カズセの視界にも驚きの光景が入ってきた。
リスタの少し後方には、リスタを追いかける多くの猪と狼の姿があった。
「いっ・・・。逃げろー」
秋司はリスタと並んで走り出す。
柊真も同じように走り出す。
諒介とカズセはそんな様子を、その場に留まりながら見つめる。
やがて二人の前を通過する猪と狼たち。
「追いかけられているのはリスタだから、秋司と柊真は逃げる必要なかったのに・・・」
「あはは・・・」
目を細めて、秋司と柊真を見つめるカズセ。
秋司と柊真を見て、諒介は苦笑いを浮かべた。
「まあ、ゆっくりと追うか」
「待ちやがれー。クソガキー」
カズセは三人を追ってゆっくり走り出そうとすると、カズセと諒介の目の前に、リスタを追いかける二人の人間の姿があった。
「もしかしてトラックを止めたの、リスタくんかな。正確に言えば、リスタくんと動物たち。横転しているトラックと倒れていた二人は動物の波に飲まれたのかも」
「だとしたら、今追いかけて行った二人はこいつらの仲間か」
諒介は状況を整理して考えを巡らせた。
カズセは諒介の考えを聞くと、さっきまでとは異なり、真剣な眼差しをリスタたちを追いかけている二人に向けた。
一方、逃げているリスタと秋司、柊真の三人。
「ところで、なんで追いかけられてんだよー、リスタっ」
「ああー? そんなのこの肉を狙っているからに決まってんだろっ」
多数の猪と狼から逃げながら話す柊真とリスタ。
「あーそうかよっ。それならさっさと食っちまえよ」
「そうしたいんだけど、食べようとすると、この鳥野郎がうるせーんだよ・・・」
柊真は目を細めてリスタが持っている骨付き肉を見つめた。
リスタは柊真と同じような視線をノガアラシに向ける。
「でー、あの追いかけてきている人間二人も、その肉目当てか?」
「あ? あいつらはトラックに乗っていた奴らだよ」
「えー? そうなの?」
柊真の問いに、後方に視線を向けて答えるリスタ。
リスタの言葉を聞いて、秋司は驚き、大きな声を発した。
じゃあ、今追いかけてきている人たちはガゼルを連れ去った人たち。
あれ、そういえば、リスタくんはお肉を持っていて、猪に追いかけられているってことは、リスタくんはお肉の匂いに釣られて左の森に行ったってことだよね?
「もしかして、リスタくん、地下に行ったりした? 牢屋とかがある地下に」
「ああ、行った。そこで捕まりそうになったけど逃げてきたんだぁ。けど、出し抜かれたのにただで逃げるのはあれだったから、そこにいた業血司使いが狙ってた猪と狼を檻から解放して、色々あって今の状況ってわけ・・・」
リスタは森の地下にいた時、そこにいた業血司使いに見つからないように、ノガアラシとともに檻の鉄格子を次々に破壊していき、捕まっていた猪と狼を逃していた。
ちなみに、リスタとノガアラシはお互いに協力している気はなかったが・・・。
しかし、解放された猪と狼は逃げるどころか、骨付き肉を持っているリスタを追いかけ始めた。
リスタは逃げながら入り口とは別の出口から地上に出ると、そこには数台のトラックが停められていた。
そのトラックが自分を出し抜いた業血司使いのものだと考察したリスタは、猪と狼から逃げるとともに、トラックを壊していった。
といっても、リスタが直接壊したというよりは、リスタを追いかける猪と狼がリスタを追う過程で破壊していったのだが。
そして、猪と狼から逃げ続けていると、走っているトラックに遭遇し、トラックの近くを通ったことで、猪と狼がトラックを横転させていた。
トラックから出た密猟者の業血司使い四人の内、二人は猪と狼の波に飲まれて意識を失い、残り二人は今リスタを追いかけている。
「そうなんだ。大変だったね」
「今も、大変だけどね」
「あはは・・・。リスタくん、その地下にいた業血司使いはどこにいるの?」
「知らねー。何人かはぶっ倒れてんだろ。そういえば、なんか気になること言ってたな」
「気になること?」
「うん。奴らには仲間がいて、ライトニングガゼルとニバ・シシオザルを捕獲するのが目的だって話していたな。こいつらは(猪と狼)はおまけだとも言ってた。あとはー、猿の方を捕まえる仲間はまだ到着してなくて、明日決行するとかいう話もしていたよ」
「じゃあ、あの人たちの狙いはライトニングガゼルとニバ・シシオザルか・・・。凄いよリスタくん。これであの人たちの目的がハッキリ分かった」
「ふっふ。なんせあいつら、俺がいることも知らずにベラベラと話していたからな」
あはは・・・。
リスタくん、凄く悪い笑顔・・・。
あの人たちの狙い。
ライトニングガゼルっていう生物は、きっと僕たちと同じ地下にいたガゼルだよね。
ニバ・シシオザルっていう生物はどこにいるんだろう。
諒介くんなら分かるかも。
あっ、でも今僕たちを追いかけている人もその人たちの仲間だから、知っているかも。
「はあはあ。もう我慢の限界だ」
「はあはあ。そうだな」
リスタたちを追いかけている密猟者の業血司使いの二人は、岩転岩棘を同時に放った。
十二発の尖った石は猪や狼に命中し、四発の石は秋司、リスタ、柊真に向かって飛んでくる。
「はっ・・・」
秋司、そしてリスタと柊真は振り返り、石を避ける。
「あいつらー。丁度いい。さっきの借りを返してやるー」
柊真は戦闘体勢に入る。
秋司も同じように戦闘体勢になる。
リスタも同じように、戦闘体勢に入ろうとするも、猪と狼たちがリスタ追いかけてきたせいで入れず、再びノガアラシと共に逃げ始める。
月と星の灯りが照らす平原で、リスタたちを追っているカズセと諒介、密猟者と戦い始める秋司と柊真、そして動物から逃げ続けるリスタ。
リスタだけ再びはぐれてしまった。




