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54話 幻術の目的 三人を見つけよう

フィーべ東部のエリア三。

その中心より西側にある三方面に森が広がっている草原に秋司と諒介の姿がある。

二人は突然襲ってきた幻術によって、リスタ、柊真、カズセとはぐれてしまっていた。


うーん、ダメだ・・・。

僕の業血司感知能力じゃ、三人を感知できない。

うーん、ガゼルや馬は右側の森に向かっていた。

猪は左の森。

霧が漂う前、僕の右横に諒介くん、さらに少し離れた右側に柊真くんがいたはず。

あの霧の中、視界を頼りに移動するのは幻術を解いていない以上、身体術で視力を上げていない限り難しい。

だとすると、柊真くんは駆けつける動物の波に飲まれて右側の森に入っていったのか、もしくは匂いを頼りに移動したのかのどちらかの可能性が高い。

リスタくんとカズセくんは少し後方を歩いていたから、草原にいないってことは恐らく左右どちらかの森に向かったんだと思う。

うーん、匂い・・・。

甘い匂いとお肉の匂い

ガゼルと馬が右側の森に向かっていたってことは甘い匂いは右の森から、僕が見た雑食の猪は僕より左側にいたこともあって左の森に向かったから、お肉の匂いは左の森から。

僕の位置からはどちらの匂いも同じくらい感じたから、多分左右の森から同じくらいの距離にいた。

でも、リスタくんとカズセくんがどっちの森の近くを歩いていたか、正確な位置が分からないから動物の波に飲まれたのか、匂いに釣られたのだとしたらどっちの匂いに釣られたのかも分からない。

まあ、匂いだけでいうなら、リスタくんは絶対お肉の匂いだよね。

お肉の匂いが鼻に届いていればだけど。


「諒介くんはどんな匂いがした?」

「匂いは甘い匂いが強かったけど」


うん、そうだよね。

諒介くんも僕より右側にいた。

そうなると、諒介くんよりもさらに右側を歩いていた柊真くんにお肉の匂いは届いていない。

恐らく柊真くんは右の森に向かった。

リスタくんとカズセくんが左右のどっちに近いところを歩いていたか、分からないから、ここは柊真くんが向かった可能性が高い右の森に向かう方がいいかな。


秋司は考えをまとめ、諒介とも話し合い、二人は右側の森に向かうことに決めた。

森の中に入ると、匂いはすっかり消えており、たくさんの足跡がついていた。


動物が移動する波に飲まれたんだとすると、この足跡を辿れば見つけられるかも。

それに、匂いに釣られた場合でも、向かっている場所は動物たちと同じはずだから、足跡を辿っていこう。


二人は足跡を辿って森中を歩き続ける。

少し歩いていると・・・。


「ぎゃああああああ」


大きな叫び声が響いてきた。


「か、カズセくん?」


秋司の視界には、全力疾走で何かから逃げてくるカズセの姿があった。


「しゅ、秋司ーー。助けてーー」

「どうしたの?」

「虫がー、大量にー、いるー」


カズセは涙を飛び散らしながら、秋司に抱きつく。


あはは・・・。

そりゃあ、甘い匂いには虫も寄るよね・・・。


「あっ、カズセくん、一人?」

「ああ。甘い匂いに釣られてきたら、虫が・・・」


カズセは甘い食べ物が結構好きで、甘い匂いに釣られてこの森にやって来ていた。


「そっか。リスタくんと柊真くんのことは見てない?」

「うん。ただ、柊真の声は聞こえた。なんか叫んでたよ。やべーって」

「本当ー?」


よし、じゃあ柊真くんもこの森にいるってことだ。

それなら足跡を辿ろう。


三人は足跡を辿って歩き始めた。

カズセは虫に怯えて、視線がキョロキョロと動いている。

少し歩くと、足跡が急に消え、ガゼルや馬の姿が見え始めた。


急に足跡が消えた?

でも、ガゼルや馬の姿は見える。

ここに甘いものがあったってこと? 

いいや、あれは幻術が使われていた。

業血司使いの仕業。

もし、肉食獣が草食動物を誘き寄せる目的で幻術を使ったとしたら、ガゼルや馬が逃げず、ここに残っているのはおかしい。

なんの目的で誰が・・・。



「あのガゼルと馬。今よく見たら分かったけど、多分このエリアに生息している結構珍しい種かも」

「珍しい種?」


諒介の声に反応して、首を少し傾ける秋司。


確かに、あのガゼル、大きい。

もしかして・・・。


「目的はそのガゼルと馬を捕まえること?」

「その可能性は高いかも?」


秋司の疑問形の言葉に、同じく疑問形で答える諒介。


「おーい・・・」

「ん? 柊真くんの声?」


秋司が考えを巡らせていると、地面から柊真の声が響いてきた。


地面・・・。

地下っ。

もしかして地下に動物を誘導して捕獲した?

とにかく、地下があって、そこに柊真くんはいる。

動物の足跡がここで急に消えていることにも説明がつく。

それなら、地下に行くための入り口がここにあるはず。


「入り口のスイッチは見当たらないね」


秋司と同じように考えていた諒介は辺りを見渡して入り口のスイッチを探していた。


「こうなったら、入り口を壊そう。血転術氷転氷乱」


秋司は地面に四つの氷の塊を放つと、階段が視界に入ってきた。


「やるぅー、秋司ー。地下だし、虫はいないよね・・・」


カズセは怖がりながら階段を見つめる。


「虫は分からないけど、敵はいるかも」


諒介は少し緊張した様子で階段を見つめる。


「うん。警戒して入ろう」


秋司は力強い表情で階段を見つめ、階段を下り始める。

諒介とカズセも秋司に続いて、階段を下りる。




一方、左側の森の地下。


「ったく・・・。これはどういうことだぁー・・・」

「ゴォー」

「おい、テメェー。これは俺の肉だろー」

「ゴォーー」

「はぁー? 何言ってんのか分かんねーけど、俺の肉だって? いいや、どう考えても、俺の肉だろーがー」

「ゴォーーー」

「やべっ・・・」


そこには骨付き肉を食べているリスタと、大きな鳥、ノガンのような生物の姿があった。

リスタとノガンのような生物、ノガアラシは残った骨付き肉を巡って言い争っていた。

しかし、何かを思い出し、急に声を潜める。

リスタはあの幻術に襲われた時、肉の匂いに釣られて左の森に全力疾走で向かった。

その時、同じく全力疾走で走っているノガアラシと出会い、そのまま地下にやって来たのだ。

そこで骨付き肉を見つけて、食べ始めたリスタとノガアラシだったが、他の場所で牢が閉まる音が聞こえ、瞬時にその場から離れたことで、捕まらずに済んでいた。

そして、人間の歩き音が聞こえると、その足音から離れるように移動して、今、通路の角で身を潜めている。

リスタとノガアラシは逃げて来た通路を、顔だけを出して見つめる。


ここまで逃げて来る途中、捕まっている猪や狼がいた。

そして人間の足音。

ゆったりとした足音だったから、これを仕掛けた奴だろう。

まあ、目的は動物の捕獲ってところかな。

俺もこれを仕掛けた奴に出し抜かれた訳だし、このまま逃げやしないさ。

それに・・・、地下っていったら、お宝だろー。


リスタは悪い笑みを浮かべながら、目を輝かせる。


「ふっふっふ・・・。あーー、おいっ。何俺の肉を食ってんだー」

「グァッー」

「何言ってるか分かんねーけど、ご馳走様だとー? ふざけんなよー・・・。あっ」


再び言い争いを始めたリスタとノガアラシだったが、隠れていることを思い出して、同時に声を潜めた。


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