表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/66

53話 深い霧と甘い匂いとお肉の匂い

フィーべ東部のエリア三。

そのとある森中に、魚の塩焼きを食べている秋司、リスタ、柊真、諒介と菓子パンを食べているカズセの姿がある。

あの後、結局一匹しか魚を捕まえられなかった秋司、リスタ、柊真の三人。

そんな三人に、諒介が獲った魚を分けてくれていた。

三人は涙を浮かべながら諒介に感謝した。

諒介は嬉しさのあまり飛びついてくる三人の勢いに押されて、少し後退しながら冷や汗を流していたが・・・。

諒介はカズセにも魚をあげようとしていたが、カズセは断り、除菌スプレーを手にかけると、持ってきていた菓子パンを食べ始めた。

五人は朝食を食べ終えると、出発する準備を始めた。

秋司と柊真はテントを片付け、リスタとカズセは火を消し、諸々の後片付けを行なった。

少しすると五人はその場を発った。


あー、キノコー。

こっちには見たことない植物ー。


昨日と同じように、ワクワクした様子でキノコや植物を採取する秋司。

そんな秋司の横で、同じように植物を採取している諒介。


「・・・。反応しないなー・・・」


昨日と同じように黒い手袋を着けてお宝を探すリスタ。


「おおっ。あの鳥かっこいいなー」


柊真は森中を見渡しながら、明るい表情で声を漏らした。


「・・・。虫・・・」


虫が苦手なカズセは、注意深く歩く。

秋司は時折はぐれそうになるリスタを連れ戻し、カズセは虫にビビって逃げ回り、柊真は熊に襲われそうになり、諒介は双眼鏡で辺りを見渡す。

そんな様子で森中を歩いていると、やがて森を抜け、目の前には再び草原が広がっていた。


「・・・」


その草原を見て、明らかにテンションが下がる、大荷物を背負っている二人組リスタとカズセ


「・・・。よしっ、Uターン」


リスタは作り笑顔を浮かべながら回れ右をする。

カズセもこっそりと振り返り、森に体を向ける。


「えぇーっ、何言ってるのー? まだ引き返すには早いよー」


そんな二人の手首を掴み、逃げないように捕まえる秋司。

結局五人は草原を歩み進んだ。

リスタとカズセは浮かない表情を浮かべているが。


「・・・。暇だなー・・・」

「えぇー? しっかりお宝探しているじゃん」


小声で文句を言いながら引き続きお宝を探しているリスタ。

そんなリスタの声にツッコミを入れた秋司。

草原を歩いていると、あっという間にお昼になった。

一同はその場にシートを敷いて、昼食を取ることにした。

秋司はマイスペースから昨晩作っておいたキノコ炒めを、カズセはリュックサックからホットドックを、そして諒介はマイスペースからお店で買っておいたツナマヨのおにぎりを取り出した。


「諒介ー。お店のもの食べんのかー? せっかくなら冒険中にゲットしたものを食べよーよー」

「え・・・。でも、僕今何も持っていないし・・・」

「ふっふっふ。心配するな。魚の恩は忘れていないよー」


おにぎりを食べようとする諒介に、何かを企んでいる様子で声をかけるリスタ。

リスタは諒介の心配そうな声を聞いて急にドヤ顔を浮かべ、リュックサックの中から容器を取り出した。


「こんなこともあろうかと、作っておいたのだー。猪肉の干し肉をー。まっ、血転術を使えれば、すぐに作れるしっ。ほら、是非とも食べてくれ」


(干し肉、自慢したかっただけだろ・・・)


リスタは笑みを浮かべながら諒介の肩に右腕を回し、左手で容器を諒介の前に持っていく。

そんなリスタの様子を、目を細めて見つめるカズセ。


「じゃあ・・・、もらうね。ありがとう。うん、美味しいよ」


諒介は干し肉を口に運ぶと、目を少し大きく見開いて声を漏らした。


「へっへ。でしょー」

「諒介、そんなしけた飯じゃなくて、こっちの肉を食えー」


諒介の声を聞いて、満面の笑みを浮かべるリスタ。

二人のやり取りを見ていた柊真はマイスペースから昨晩焼いたホカホカの猪肉を取り出して、諒介に渡した。


「え? いいの? ありがとう。お、美味しいー」


さっきよりも目を大きく開き、大きな声を出す諒介。


「だろー。やっぱり便利だよねー。マイスペース」

「・・・」


柊真は明るい表情で空を見上げながら声を発した。

その言葉を聞いたマイスペースが狭い二人組リスタとカズセは鋭い視線を柊真に向けた。


「ほら、リスタくん。キノコ炒めも食べなよー。温かいよー。カズセくんも」

「げっ。キノコはいいよー・・・」

「お、俺もお腹いっぱいだし・・・」


リスタとカズセの鋭い視線を感じた秋司は、二人にキノコ炒めを勧める。

昨晩キノコを無理やり食べさせられた、野菜があんまり好きじゃないリスタと、現地調達した食料をあまり食べたくないカズセは顔をひきつらせながら少しずつ秋司と距離を取っていく。

少し経って昼食を食べ終えた五人は、再び草原を歩き始めた。

歩き始めて早々に遅れ始めるリスタとカズセ。

そんなには離れていないが、二人が遅れたのを確認すると、三人はスピードを緩めた。

そのまま二十メートルくらいの距離を保ちながら歩き続けている。


うん、草原でよく見かける動物はガゼルとか馬が多いかな。

でも、ここにいるガゼルは昨日見たガゼルに比べてかなり大きい。

あっ、また森が見えてきた。


秋司は歩きながら辺りを見渡していると、左右の離れた位置に木々が見え始めた。

やがて正面にも木々が見え始める。


うん?

なんだろう?

急にガゼルや馬がたくさん走って右の森に向かっている。

それに霧?

急に視界が悪くなった・・・。

いい匂いもする。

甘い匂い。

でも、それだけじゃない。

お肉の匂いもする。

左斜め前にいる猪は左の森に向かって走っている。

あれ・・・?

柊真くんと諒介くんの姿が見えない。

リスタくんとカズセくんの姿も・・・。

霧が濃すぎるけど・・・。

もしかして幻術?

リスタくんとカズセくんは離れていたから、霧の中で見失うことはあるかもしれないけど、そんなに離れていない柊真くんと諒介くんも見失うほどの霧が突然漂うのは違和感がある。

霧に生成術の業血司を送ってみよう。


秋司が霧に生成術をかけると、膨張して爆発した。


やっぱり幻術だ。

業血司で作りだすタイプの幻術。

今の爆発で一部、視界が晴れた。

ん?


「諒介くんっ」


晴れた視界の一部に、諒介の姿が入ってきた。


「秋司くん。よかった。急にいなくなっちゃったから、驚いて・・・。ところで、この霧は幻術?」

「うん、幻術だね」

「幻術・・・。誰の幻術だろう?」

「分からない・・・。今はこの霧の幻術を解かなくちゃ・・・」


秋司は苦い表情を浮かべながら、再び生成術を霧にかける。

再び爆発して霧の一部が晴れるが、三人の姿が見えない。


「血転術結界、散払さんひつ


諒介は結界術の基本図式を描き、発動図式に扇、丸、扇を描く。

諒介は業血司で作りだすタイプの幻術を一掃する血転術を発動した。


凄い・・・。

一気に霧が消えていく。

でも、三人の姿が見えない・・・。

どうしよう?

んっ?

匂いも消えた・・・?


「もしかして、匂いも幻術? でも、嗅覚を直接刺激されたわけじゃないはず・・・」

「うん。僕も初めて体験したけど、元々ある匂いに幻術の業血司を送ると、その匂いを広げることができる血転術もあるらしいよ」

「そうなんだっ」


初めて知った。

そんなこともできるんだ。

視覚でいう、業血司で目に見える幻術を作り出す、その嗅覚バージョンってことかな。

業血司で匂いを作り出したら、それは幻術ではない。

けど、元々ある匂いを、幻術の業血司で普通は届かないところまで広げられるってことは、それは幻術になるってことかな?

よく分からないけど・・・。

っていうことは、元々ある甘い匂いやお肉の匂いを、広げたってこと?

なんのために?

・・・。

動物?

ガゼルや馬、猪が匂いに釣られて森の中に向かったってこと?

今の幻術、メインは匂い。

それより。


「三人はどこに行ったんだろう?」

「分からないけど、見通しのいい草原には姿がないね・・・」

「ってことは、左右正面に見える、森の中」


秋司と諒介は辺りの森を見渡した。

五人は突然の幻術によって、見事に見通しのいい草原ではぐれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ