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52話 はちゃめちゃ 朝の大乱闘

フィーべ東部のエリア三。

エリア三のとある森に鳥のさえずりが鳴り響き、木々の隙間から光が差し込む頃。


「うぅっ・・・」


秋司は上半身を起こし、伸ばしながらあくびを浮かべる。

なお、下半身はまだ寝袋の中に入っている。

チラッと左横を見ると、寝袋に包まれながら爆睡しているリスタの姿があった。

まったく起きる気配がない。

テントを持ってきていなかったリスタとカズセ。

リスタは秋司のテントで、カズセは柊真のテントの中で一晩過ごしていた。


「リスタくん、朝だよー」

「んんっ・・・。あと五分・・・」


秋司はリスタの右肩を軽く揺らしながら声をかけると、リスタはほんの少しだけ目を開き、とても小さく、少し甘えた感じの声で答えた。


「・・・。起きてーー」

「ん・・・。い、いってーー」


声をかけても起きないリスタを見て、秋司はリスタの上にダイブした。

秋司の腹部がリスタの腹部に当たると、リスタは頭と両足を浮かせながら飛び起きた。


「テメェ・・・。あと五分って言っただろうがー」

「だって、今日は朝からお魚を獲りに行くんでしょー? 早く行こうよー」

「なーに、朝っぱらからワクワクしてんだぁ? ワクワクキノコが。あと五分ぐらい、いいじゃんっ。じゃっ、おやす・・・いってーー」


秋司は再び眠りに就こうとするリスタの上に再びダイブした。


「おーいっ。テメェー、やんのかぁー? 言っておくけどなー。睡眠の恨みは重いぞー」


リスタは立ち上がった秋司に向かって飛びかかった。

二人はじゃれあい始めた。

と言っても、一応二人とも真剣なのだが、寝起きということもあり、力が入っていない。

その頃、隣のテント内では、カズセはゆっくりと上半身を起こし、薄く開いた目を軽く擦っていた。

そして柊真は夢の中にいた。



柊真が見ている夢。

灯詠学園のとある教室で数学の難問を解いている柊真と数十人の生徒。

ほとんどの生徒は手が動かずに止まっていた。

そんな中、一人スラスラと難問を解いていく柊真。

すぐに問題を解き終えると、右手をまっすぐ上げる。


「ほぅー。もう解き終わったのか? では柊真、答えてみよ」

「はいっ。答えは二十です」


この授業の教員であるドルネシアに指された柊真はメガネのブリッジを右手で軽く触れてドヤ顔で答えた。


「おぉー、正解じゃっ」

「わぁー、すごーい」

「きゃああーー。柊真くん、かっこいいーー」

「ねぇ、柊真くん。私に教えてぇー」


ドルネシアの正解という声が教室内に響き渡ると、他の生徒、特に女子生徒が一斉に柊真に近づいてきた。


柊真が見ている夢終了。


そんな夢を見ながらニヤニヤと笑みを浮かべて寝ている柊真。


「うふっ・・・。うふふ・・・。ふがぁっー」


幸せそうな柊真の上に、テントを挟んでリスタが吹き飛んできた。


「あ・・・。あぁーー。いい夢見てたのにーー。おい、コラァー。リスタ、テメェー、何してくれてんだぁーー」


柊真は怒号を飛ばしながら秋司とリスタのじゃれあいに加わる。

そんな中、カズセはこっそりと崩れかけているテントから脱出し、その場から離れ、木の下に座った。


「ほらっ、早くみんなでお魚を獲りに行こーよー」

「うるせー。なら素直にぶっ飛ばされろっ、秋司ー」

「ぶっ飛ばされるのはテメェーだっ、リスター」


秋司は呼びかけるように、リスタと柊真は大きな声で発しながら、殴り合う。

十分ほど経つと、疲れたのか、ようやく落ち着き、その場に座り込んだ三人。

少し息を整えると、三人は近くにある小川に向かった。


「やっぱりお魚を獲るとなると、釣りかな?」

「はぁー? 釣りー? そんな暇なことしないよ。そもそも、俺のマイスペースには釣り道具なんて入らないしねっ」


秋司はワクワクした表情でリスタに尋ねる。

リスタは軽く笑みを小川に向けると、ズボンの裾をまくり、小川に足を入れて魚を探し始めた。

秋司と柊真もリスタと同じ様に小川に入り、魚を探し始めた。


うーん、あんまりお魚の姿が見えないけど・・・。


「あっ、いたー」


秋司が魚を見つけて声を発すると、リスタと柊真が反応して魚を追いかける。


「ねーねー。あのお魚はなんていう名前なの?」

「ああ? 知らないよ。鮭じゃない?」


秋司は追いかけている魚の種類についてリスタに尋ねたが、リスタは魚の種類に興味がない様子で適当に答えた。


「ったく、これだから素人は・・・。この魚はフナだよ」


二人の会話を聞いていた柊真は呆れた様子で声を漏らした。

三人はフナを追いかけ続けるが。


「あれ・・・。いなくなっちゃった」


秋司は辺りを見渡すが、フナの姿はなかった。


「あっ。なんか違うのがいるよっ」


今度はリスタが魚を見つけた。


「あれは・・・。鮭か?」

「・・・。イワナだよー」


さっきのフナとは違う魚を見て、急に魚の種類に興味を持ち始めたリスタ。

そんなリスタの頭の中は、魚といえば鮭が定着しているようだ。

柊真は再び呆れた様子で声を漏らした。


「この魚、速いな・・・。わっ、柊真。邪魔すんなよ」

「邪魔してないわっ。追いかけるのに、必死なんだよっ」


リスタと柊真は腕をぶつけながら並んで走っている。

秋司はそんな二人の後ろを平和に走っている。




「ふぅー・・・。大漁だ・・・」


小川で魚を獲っている諒介。

諒介が持っている網で作られた魚籠の中には数匹の魚が入っている。

そんな静かで平和な諒介のところへ、騒がしく水を踏む音が響いてきた。


「待てー。よし、ここだーー」

「ん? う・・・、うわあああ」


イワナを追っていた柊真は狙いを定め、勢いよく飛びついたが、イワナは柊真を華麗に避ける。

柊真はそのまま川に全身をダイブし、諒介の目の前で止まった。

そんな目の前に飛び込んできた柊真を見て、驚き跳ねる諒介。


「くそっ、逃げられたかー。フナってヤツはそんなに速くなかったけど、イワナってヤツは速いな」


リスタは辺りを見渡すが、イワナの姿はなかった。


「逃げられちゃったね・・・。あっ、杉田くん?」


秋司もリスタと同じ様に辺りを見渡すが、イワナを見つけることはできなかった。

しかし、そこにいた諒介と目が合うと、秋司は諒介に近づき話しかけた。

諒介は秋司たちと同じフィーべの東部エリア三で課外学習を行っていた。

特に何か目的があるわけでもなく、秋司たちと同じように、適当に進んでいたところ、今秋司たちと出会ったのだ。


「もしよかったら、一緒に探検しようよ」

「えっ・・・。う、うん・・・。そのー、何人で行動しているの・・・?」


秋司は明るい表情で諒介に声をかけると、諒介は戸惑いながら小声で声を漏らした。


「四人だよっ。一緒に行こーよー」

「うん。分かった」


(四人くらいなら大丈夫かな・・・)


秋司の答えを聞いた諒介はほっとした様に軽く微笑んだ。


「おい秋司ー。手伝えー。このままだと飯抜きだぞー」

「あっ、うん。分かったー」


秋司と諒介が話している間も魚を見つけては追いかけ回していたリスタと柊真。

柊真はイワナを追いかけながら秋司に助けを求めた。

柊真のヘルプを聞いた秋司は二人のヘルプに向かったものの、お互いに足を引っ張り合い、魚を捕獲するどころか、再び三人の大乱闘が起こる。


「・・・。魚、もういなくなっちゃったよ・・・」


そんな様子を見ていた諒介は苦笑いを浮かべながら小声を漏らした。


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