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満月の夜に猫は微笑む  作者: 涼木あきこ
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驚愕の事実

 俺が病院に着くと、溝端刑事が入り口で待っていた。

「おお、来たな!ほら、早く行くぞ!」

「ちょっ、少しは説明してくれてもいいだろ!?」

「説明は後だ、とにかくついてこい!」

そう言われて、俺は溝端刑事の後を追って、再び病院に入った。

気が付くと、幸人がいる病室でも、青柳さんがいる病室でもない、別の病室の前につれてこられていた。

「俺はここで待ってるから、行って来い。」

溝端刑事がそう言った。

「行って来いって言われても……誰の病室なんだよ?」

「行けば分かる。多分。」

溝端刑事はそう言うと、俺の背中を押した。

俺は渋々、誰がいるのかわからない病室のドアを開けた。

するとそこには、知らないおじさんがベッドの上に座っていた。

「颯介、来たか。まずは久しぶり、とでも言っておこうか。」

知らないおじさんが俺を見て、微笑んでいる。

「……誰?」

俺が聞くと、そのおじさんは笑いながら言った。

「はは、わからなくて当然か。無理もない。俺はついこの間まで、猫としてお前と一緒にいたのだから。」

「え……?」

俺は驚いて、暫くの間、言葉が出てこなかった。

「もしかして、ムタ……なのか?」

俺は、そんなことがあり得るのだろうかと思いながらも聞いた。

「その通り。というか、もう猫ではないんだ。ムタと呼ぶのはやめろ!」

話し方で、すぐにわかった――本物だ。

「でも、どうして……赤川刑事は、十六年前の爆破に巻き込まれて死んだはずじゃ……」

「確かに、爆破に巻き込まれて行方不明……ということになっていた。世間的には。」

「どういうことだよ?」

俺は聞いた。

「お前は知っているだろう?焼け落ちた倉庫内からは何も見つからなかったと。」

「でも、青柳さんは言ってた。赤川を殺したって。」

「その『赤川を殺した』の意味は、恐らく違う。颯介、青柳はあの時、何と言っていたか思い出せ。」

俺は、あの夜に青柳さんが事件について話していたときのこと思い出した。


 「指定された場所に向かった父さんは、どうなったの?」

「僕は近くのビルから望遠鏡で見ていた。君を抱いてね。倉庫の中に入っていく赤川を暫く見て、爆弾を見つけたくらいのタイミングを見計らって、爆弾のタイマーをオンにしたんだ。あとの説明はいらないだろう?」

赤川刑事がどうなったのかは、確かに青柳さんは言っていなかった―― 

「そうか、刑事を……ヒーローを殺した、ということか。」

「まあ、そんなところだろうな。実際に俺は死にかけて、刑事の仕事なんて出来てなかったわけだしな。俺も、あいつの本心はわからんが。」

父さんは、困ったように言った。 

「でも、どうして、一命を取り留めたとか、生きていたとかって公表しなかったんだろ?」

「それは、犯人に俺が死んだと思わせるためだと聞いた。爆破に巻き込まれたせいで、俺も数日前までは意識不明だったらしい。十六年間も眠り続けていたんだと。颯介を誘拐して、俺を爆弾で殺そうとした犯人は俺しか知らなかったからな。まさか、警察内部に犯人がいるとは知らない警察は、俺を守るために警察病院でずっと匿ってくれていたらしい。」

「なるほど……え、それじゃあ、青柳さんも知っていたんだよな?赤川刑事がまだ死んでいないって。」

「ああ、そういうことになるな。」

青柳さんは、一体何を考えていたんだろう――やっぱりあの人は……俺はそれ以上、考えるのはやめた。

俺はもう一つ、気になっていたことを聞いた。

「ムタとして生きていたときの記憶は、目が覚めたときから残ってたの?」

「ああ。残っていた。そうでなければ、お前を見ても誰だかわからんだろう?」

「確かに……ねぇ、なんで猫になったんだと思う?」

「なんだろうな……ヒーローとしての執念か……いや、魔法かもしれないな。十六年前の事件を解くための。」

「あはは、俺も同じことを考えてた。」

俺と赤川刑事は暫くの間、たわいもない会話をしていた。

次回、本編最終話となります。

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