表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
満月の夜に猫は微笑む  作者: 涼木あきこ
45/54

隠れた復讐心

 青柳さんは、俺の言葉を聞いて、ニヤリと笑った。

「嬉しいよ、颯介。そう言ってくれて。僕は、赤川からもその言葉が聞きたかったのかもしれない……」

「青柳がまさか、こんな感情を抱いていたとは……どうして当時、何も気づいてやれなかったんだろう……」

ムタは後悔しているようだった。

自分は過去に、青柳さんに爆弾で殺されているというのに――

赤川刑事、いや、俺の父親は、本当にヒーローのような人だったのだろうと俺は思った。

だが、気が付かないのは当たり前だと思う。

青柳さん自体も、自分の感情に気が付くのに、時間がかかりすぎたわけなのだから。


 「幸人っ!幸人っ!」

俺は何度も幸人の名前を呼んだ。

「あははっ!どうだい?目の前で大事な人が死んでいく姿を見るのは!僕のことを殺したい、本当はそう思っているんだろう?」

青柳さんは、俺を煽った。

「ダ……メだよ……颯介……挑発に……乗った……ら。」

幸人は、息も絶え絶えに言った。

「喋るな、幸人!待ってろ!俺が必ず……!」

「颯介!!僕を殺したいんだろ?言ってみろよ!!」

青柳さんが大声で言った。

その時――一瞬の出来事だった。

美紗が、青柳さんの方に向かって走り出し、後ろ手に隠し持っていた包丁を振り上げた。

「はああああああああああああああああ!!!!!」

美紗は、青柳さんの右肩を思いっきり刺した。

「ぐあぁぁぁあああぁぁぁあぁぁあ!!!!!」

青柳さんは、右肩を押さえながら、獣のような叫び声をあげた。

「美紗!!!!!」

美紗の目には、明らかな殺意が見えた。

俺は、この時の美紗の行動に驚いていた。

十六年前の事件について知ってしまってから、美紗の様子がおかしかったのは、俺も幸人も気が付いてはいたのだが、ここまでの復讐心と殺意を産んでしまっていたとは、思いもしなかった。

美紗は、包丁を構え直した。

「許さない!許さない!許さない!許さない!許さない!」

美紗は、右肩を抱きながらしゃがみこんでいる青柳さんに向かって、再び包丁を振り上げた。

「美紗!!!止めろーーーーーー!!!!!」

俺は大声を出して美紗を止めようとしたが、美紗は既に包丁を振り下ろしていた。

間に合わない――そう思った時、俺の真横を何者かがすり抜け、風が吹いた。

「美紗ちゃん!ダメよ!目を覚まして!!!!!」

駆け付けたみゆき先生が、包丁を持つ美紗の手を掴んで止めた。

「どうして…?どうして、止めるんですか?幸人も、幸人のお父さんも、颯介のお父さんも、私のお父さんも、先代の施設長さんも……みんな、みんな、この人のせいでいなくなってしまったんじゃない……!!!」

美紗は、震えながら言った。

「待っ……て……僕は……まだ……生きてるよ……勝手に……殺さない……で。」

「幸人は喋るなって!」

俺は、喋ろうとする幸人を制止した。

「どうして?どうして、みんなは平気でいられるの?目の前に全ての元凶がいるというのに、どうして!?」

「あははははは!いいね、美紗ちゃん。そういうの、僕、すごく好きだよ。」

青柳さんは右肩を押さえたまま、美紗に言った。

「私は大っ嫌い!私をあなたと一緒にしないで!」

美紗は大きな声で言い放った後、気が付いたかのように、ハッとした顔をしていた。

「美紗、お前はそっち側じゃないだろ?俺たちの味方なんだろ?それなら、もう止めるんだ。」

俺がそう言った瞬間、美紗は膝から崩れ落ちた。

「美紗ちゃん!」

崩れ落ちた美紗を、みゆき先生が抱きしめた。

「みゆき先生、ありがとうございます。私を止めてくれて、本当にありがとうございます。」

美紗は感謝の言葉を伝えると同時に、みゆき先生の腕の中で泣いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ