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満月の夜に猫は微笑む  作者: 涼木あきこ
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銀行強盗事件の真相

 十六年前の件を施設長に聞かれた青柳さんは、ニコニコしながら言った。

「十六年前のこと、か……どこから話せばいいでしょうね……?」

「どうして、先代を巻き込んだんですか!?あなたが巻き込まなければ……!」

施設長は言った。

「僕が巻き込まなければ、死ななかったって?それは違うな、施設長さん。毎日毎日、借金取りが金をせびりに来て、大きなため息をつく先代の施設長さんを僕は毎日見ていた。だから、大金が欲しくないかと話を持ち掛けたんだ。むしろ、僕に感謝してほしいくらいですよ!」

施設長は何も言い返さずに、拳を握りしめていた。

当時、そのことに気が付けなかった自分への怒りと後悔だろうか――

その様子を見た俺は、施設長の代わりに、青柳さんに当時の話を聞いていくことにした。

「犯行グループのメンバーは、みんなお金に困っている人だったってこと?」

「その通りだよ。話を持ち掛けられたら、断る理由がないだろう?」

俺の質問に青柳さんが答えた。

「僕が刑事であることを、当時は誰にも教えてなかったんだ。先代の施設長さんが僕に捕まった時は、恐怖に満ちた顔をしていたよ。すっごく面白かったなぁ!今でも覚えてるよ、あの表情!」

青柳さんは笑いながら言った。

「青柳め!許せん!」

ムタは唸っていたが、もちろん青柳さんには聞こえない。

「どうして……どうして……こんなやつに……先代が……」

施設長も、今にも崩れ落ちそうなほど、震えていた。

「当時のこと、もっと聞かせてあげるよ。」

青柳さんはそんな俺たちを見て、ニヤリと口角をあげた。


 青柳さんは、十六年前のことを話し続けた。

「計画は全部僕が立てた。集めたメンバーに計画書を渡し、読んだら燃やすように言っていた。後藤だけは何故か、ずっと取ってあったようだけど。いざとなったら、あれを持って警察にでも駆け込もうと思ってたのかなぁ?警察に行ったところで、僕に殺されるだけなのにね。あははははははっ!!!!!」

青柳さんは笑っている。

「もしかして、先代の施設長も自殺じゃないの……?」

俺は恐る恐る聞いた。

「そうそう!僕が送検中の車内で殺したんだ!前に話したのは、ぜーんぶ嘘!死なれてしまった後悔があったというのは本当だけどね。例の暗号自体、先代の施設長さんが握りしめていたものだから。殺してしまってから、気が付いてさ。それをコピーして、他のメンバーに渡したのも僕だよ!」

青柳さんは、気が狂ったように笑い続けていた。

「ふざけるな……ふざけるな!!!!!」

施設長は、今にも泣きだしそうな声を振り絞って言った。

「十六年前の話はまだ続くんだけど……もう聞きたくない?」

青柳さんは、残念そうに言った。

「いや、続けて。」

俺は施設長には悪いと思いつつ、青柳さんに話を続けるよう促した。


 「計画を立ててから、銀行に押し入るまでは上手くいった。けど、銀行員が警察に電話しようとしたせいで、篠原が勝手に発砲した。大柄な大山の後ろに隠れてたから、周囲からは大山が撃ったように見えたみたいだけどね。本当は死人を出すつもりはなかったんだよ?人質を変わるって言った、あの勇敢な男も空気読めないよね。大山の腕を捻りあげて、銃を取り上げたんだ。その後ろに、銃を持った篠原がいることに気が付かずに。自業自得だと思わないかい?余計な事をしなければ、僕たちは誰も殺さずに済んだのにさ。」 

青柳さんはまるで、勇敢に戦おうとした人たちが悪いかのような言い方をした。

俺は反論したかったが、今はグッと堪えて、青柳さんの話を聞くことにした。

「最初の人質だった妊婦さん、気の毒だよね。知ってる?颯介のお母さんだよ。君を産んでから、すぐに死んじゃってさ。」

青柳さんが俺を見て言った。

「もしかして、銀行に俺の母さんが来ることも知っていたのか……?」

俺は怒りを押し殺して聞いた。

「残念だけど、それはたまたまだよ。でも、颯介のお母さんを見つけたときに思いついちゃったんだ。赤川を絶望させるいい方法をさ。人質は誰でもいいと言っていたが、計画を変更した。」

「……それって、青柳さんは、赤川刑事を恨んでいたってこと?」

「いや、そうじゃない。あいつは、僕とは正反対の人だったから、一緒にいるのが……比べられるのが嫌だった――なんてね。その話は、今するべきじゃない。」

青柳さんは一瞬、悲しそうな顔をしていたような気がした。

「颯介のお母さんは、自分をかばってくれた男性客の死を目の前で見て、気絶した。それが身体にも影響しちゃったんだろうね。かわいそうに。」

青柳さんは他人事のように続けて言った。

「当初は誰も殺すつもりなんてなかったのに、二人も殺してしまったからさ。周りのお客さんや銀行員も大人しくなってくれて助かったよ。五千万円も簡単に手に入った。でも、思ったよりも早く警察が来ちゃったから、僕たちは計画通りに分かれて逃げた。でも、数時間後に一人だけ、捕まったわけだ。先代の施設長さんがね。まさか、わざと捕まったなんてね……面白いよ、すっごく面白い。」

青柳さんが笑っている間、施設長は青柳さんを睨みつけていた。

「怖いなぁ。施設長さん。」

青柳さんは、肩を震わせるようにして言った。

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