表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
満月の夜に猫は微笑む  作者: 涼木あきこ
13/54

記憶の断片その二

 颯介と別れたムタは、路地裏のいつもの室外機の上で一人考え事をしていた。

「今日もまた、妙な事件に巻き込まれたな……」

と思いつつも、収穫はあったとムタの気持ちは浮ついていた。

あの夢に出てきた女性は、自分の恋人であり、自分は元々は人間だったのだろう。

ムタはそう推測していた。

だが、この前見た夢を、全て覚えているわけではない。

自分が人間であったというのも、絶対にそうであったという確信はない。

あの女性は、自分の飼い主であったという可能性だってある。

「何か、証拠がほしいところだな。」

ムタはそう思いながら、眠りについた。


 ――ここは一体? 

こちらを見て、笑っている女性。

「ねえ、ハネムーンはどこに行く?私は海が見えるところがいいなぁ。でも、あなたの職場からは、あまり離れない方がいいわよね。近場にしましょ。だって、あなたはみんなのヒーローなのだから。」

彼女の左手の薬指に、キラリと光る指輪が見えた。

ハネムーン――新婚旅行の計画だろうか。

ヒーロー?

何のことなのだろう?


 場面は変わって、先程と同じ女性がこちらを見て微笑んでいる。

オーシャンビューのホテルだろうか。

一面に広がる海に夕日が反射し、キラキラと宝石のように光っている。

「見て、海が光ってる。」

そう言った女性の笑顔もまた、キラキラと輝いて見えた。

――なんて美しい人なんだろう。


 また場面は変わって、先程の女性が優しく微笑んでいる。

よくよく見ると、女性のお腹が、以前見たときよりも大きくなっていた。

「聞いて!男の子だって。名前、前からいくつか考えていたけれど、あなたのように――颯爽と、たくさんの人を助けられる子になりますようにって考えたの……というのはどうかしら?」

――何だろう?

肝心の子供の名前だけが、聞こえてこない。


 そして、人だかりができている場所――

テレビや雑誌、マスコミの取材陣だろうか、フラッシュを焚いて撮影をしている。

それを掻き分けて行った先は、銀行強盗事件が起こった現場と思われる場所であった。

一人の女性が倒れこんでいる。

その近くで男性が一人、酷く血を流し、倒れている。

そこにいる他の人々は、恐怖に肩を震わせていた。

倒れこんでいる女性に駆けよった。

身体が震えているわけでも、苦しそうにしているわけでもない。

死んでもいない……恐らく、気絶しているだけだろう。

女性は妊娠していたようだ。

念のためと、そのまま救急車で運ばれていった。

――胸騒ぎがした。


 ムタはハッと飛び起きた。

呼吸がとても荒くなっており、苦しかった。

また、夢を見ていた――

今回は、はっきりと顔が見えた。

あの女性はやはり恋人で、俺と結婚していたのだろうか?

あの女性は俺を、『みんなのヒーロー』と言っていた気がする。

ヒーロー?

どういう意味だ……?

男の子を妊娠していて、子供の名前も決めたと言っていたが、そこだけ何故か聞き取れなかった。

子供の名前も、俺の記憶と何か関係があるのだろうか?

ダメだ……これ以上は思い出せない。

ムタは悶々としていた。

「そうか、今日もあいつに会うんだったな。」

早くなっていた鼓動が、落ち着きを取り戻していくのがわかった。

いつの間にか、ムタにとって颯介は大切な存在になっていたようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ