おじさん、第二層を進む
辺りに広がる森林を見ながら考える。これは迷うと面倒そうだな。
「ヨータ様、よろしければナビを勤めましょう」
「まじか、助かるよ」
「あなたをサポートするのが私のつとめですので」
というわけで、ここからはアイのナビを頼りに進んでいく。第二層で最も怖いのはこの森林での遭難だとルリカさんは言っていた。そうでなくても、ここで丸一日以上かかる探索者は多いのだとか。
アイのナビがどの程度の精度かは未知数。だがこれまでのことから彼女のサポートを信用するぞ。何より、彼女は俺のスキルなのだ。俺が信じなくてどうするよ。
そうやって、時に草をかき分け、時に開けた場所を進む。不安が無いわけではないが、自分が正しい場所を進めていると信じる。
「……ヨータ様、前方に敵が潜んでいます」
「そうなの?」
言われてみると、なんとなく前方に気配を感じるかも。あの、しげみのあたりかな? なんて考えながらも警戒して盾を構える。
バリアがあれば安心なのだろうが、本能的に盾を構えてしまう。見えない場所に潜む敵というのは、やはり怖い。
ほどなくして、そいつは現れた。緑色の肌で一メートルほどの背丈の小鬼、ゴブリンだ。手には錆びた刃物を持っている。刃物を持った敵というのはそれだけで威圧感を放っているな。結構怖い。
「ヨータ様。ゴブリン程度の魔物が相手なら、向こうからの攻撃は通りません。安心して戦ってください」
「安心してとは言うがな……」
「これはヨータ様の精神面も改造するべきでしょうか?」
「それはやめてくれ」
「ふふっ冗談ですよ。グッドラックです」
グッドラックね。まあ、やってみよう。そう考えるのと同時に、敵の方が襲いかかってきた。俺は身構えるが、盾は必要なかった。バリアが小鬼を弾く。チャンスだ!
弾かれたゴブリンに近づき、警棒を振り下ろす。小鬼の脳天に重い一撃! 小鬼を撃破! 終わってみれば、なんてことはないな。とはいえ、怖かった~。
だって刃物だよ。錆びてるとはいえ、殺傷力はある。というか、ゴブリンは探索者から武器を奪って使うこともあるらしい。この層の魔物は人を殺す力を持っている。子ども程度の背丈だからと安心はできない。まあ、俺にはバリアがあるが。
「ヨータ様、ゴブリンと錆びた武器、回収しておきますか?」
「よろしく頼む」
獲得物を収納し、第二層を進んでいく。時々、小鬼が潜んでいて、アイに敵の位置を教えてもらううちに、なんとなく敵の位置を気配で把握できるようになってきた。ちょっと、成長してるのだろうか?
強力なスキルに頼ってはいるが、それでも少しずつ成長できてるなら嬉しい。
順調にダンジョンを進めていたが、少し面倒そうなものに気付く。
「このまま進むと、敵の気配にぶつかりそうだな」
「ええ、敵の数はそれなりに多いです。魔物の群れと考えるべきでしょう。数にして二十。迂回しますか? それとも砲撃して一掃します?」
「物騒なことを言うね。砲撃は目立つから無しだ。それに……」
「別の方向から、気配が群れの方向に向かっています。ヨータ様、どうしますか?」
「慎重に近づいて、様子をうかがう。今の俺には気配しか分からない」
「そうですね。了解しました」
足早に、かつ慎重に森林を進んでいく。木に登り、気配が群れにぶつかる様子を眺める。魔物同士のぶつかり合いなら漁夫の利を狙うのも良いかもしれない。
「……時にアイさんや、これまでゴブリンや錆びた武器をいくらか回収してきたが、これって取り出しもできるんだよね?」
「もちろんです。お好きな場所にものを取り出せます」
「だったら、こういうことも……」
アイと話し合っているうちに、茂みから少女が姿を表した。短い黒髪の、大人しそうな印象の子だ。近くにドローンが飛んでいて、配信者であることが分かる。手助けが必要か、それとも余計なお世話になるか。考える。
また、潜んでいた魔物たちも姿を表した。それぞれ手にこん棒や錆びた槍で武装したゴブリンたち。その数二十。アイの予想通りだ。
魔物の群れとの遭遇に女の子は驚き戸惑っている。これは、手助けが必要かもしれない。
「あら、女の子が腰を抜かしちゃったようですよ。ヨータ様」
「そのようだ。俺たちの動くべきタイミングだな?」
「私もそう思います。では、ヨータ様の作戦通りに始めます」
「ああ、狙い撃つ」
空間を歪ませ、俺の近くに錆びた武器を出現させる。ゴブリンから手に入れたものだ。それを手には持たず、空間の歪みから射出! 以前に見たアニメを参考にした攻撃だ! 上手くいくかな?
射出された武器は小鬼に直撃。さらに武器を出現させて射出! 小鬼を次々に撃破していく。武器のストックはすぐに無くなるが、この距離なら収納スキルで武器の回収が可能。作戦が上手くいくと気持ちいいぜ! そしてまた、射出だ!
ほどなくして、ゴブリンの群れは混乱のうちに全滅した。女の子は唖然としている。倒したゴブリンはともかく、武器は回収させてもらう。
余計なお世話、ではないよなあ。そう信じながら、俺は新たな戦法に手応えを感じていた。




