ルリカ視点、第二層の調査
私は今、渋谷ダンジョンの第二層に来ている。ハナヤギ会長とメグさんも一緒だ。二人ともSランクの探索者なので心強い。
なんでも、第二層にてゴブリンロードの目撃情報があったらしい。ゴブリンロードといえばBランクの魔物であり、私が一対一で勝てるギリギリ程度の相手。ビギナー探索者には荷が重い。
また、ロードの出現により、ゴブリンの動きが活性化しているようだ。普段より、ゴブリンの数が多い。そのことについて、会長も考えているようだ。
「……ゴブリンの脅威度が上がっていることは明らかですわね。監理局に報告して注意喚起をしてもらいましょう」
会長の意見に賛成だ。それは良いとして、今もダンジョンに潜っているビギナー探索者たちにはこの状況をどう伝えれば良いだろう?
「……そんなもの、各々になんとかしてもらうしかないだろ。あたしらも、全探索者の面倒は見られねえって」
メグさんは簡単に言ってのける。私は、どうもこの子とはあまり意見が合わないかもしれない。
「ワイバーンの出現に加え、ゴブリンの活性化、ゴブリンロードの出現も確かとなれば、渋谷ダンジョンの脅威度をあげるべきかもしれませんわね」
会長は真剣に思案している。私も、できることがあれば貢献したい。
「とにかく、第二層の調査を進めましょう!」
「ですわね。強力な魔物の活動がそれぞれ無関係ということも無いでしょうし……勘ですが」
会長の勘というものがどの程度のものかは分からないが、信じられる気がする。そんな時、メグさんが何かに気付いた様子で言う。
「東に二キロ先、それなりの規模の戦闘が起きてるみたいだぜ」
「二キロ先? よく分かりますね?」
「あん? ルリカの姉さんには聞こえねえの? 耳掃除した方が良いんじゃね?」
あ、私……今若干イラッとしてる。やっぱりこの子は好きじゃない。
「会長、私がひとっ走りして様子を見てこようか?」
「いえ、慎重に皆で進みつつ急ぎましょう。メグさんは戦闘を始めると見境がなくなりますからね。あなたは自分がバーサーカーであることを、もっと自覚してくださいな」
「……うっす。じゃあ、行きましょうぜ」
やはり、力関係は会長の方が上か。そんなことを考えながら、私は二人に続く。流石、二人とも足が速い。森の中だというのに、軽々と進んでいく。息切れもしないだろう。悔しいけれど、私がこのパーティで最も足手まといであることは自覚しておくべきだ。
十分程して、私たちは目的地に到着した。おそらく、Sランクの二人だけなら、もっと速く到着したのだろう。やっぱり、悔しいな。
辺りには死屍累々のゴブリンたちが見える。その近くで、女の子が腰を抜かしていた。短い黒髪の女の子。近くに撮影ドローンがあるところを見るにダンジョン配信者か。
「あの、大丈夫ですか?」
私が声をかけると、女の子はビクッと身を震わせた。彼女は驚いた様子でこちらに振り向き、かと思えば、その表情がパッと明るくなる。
「る、るるる、ルリカさん!?」
「はい、ルリカです。立てる?」
「すいません。腰が抜けちゃってて。立つのを手伝ってもらっても良いですか?」
「うん、手を貸すよ」
その後、少女に事情を聴くと、ゴブリンの群れに遭遇したところを謎の人物に助けられたらしい。その人物は姿を現さず、投てき物によってゴブリンの群れを全滅させたらしい。世の中には良い人が居るものだ。私まで嬉しくなる。
その後、少女が無事に帰れるように、私たちで彼女を第二層の入り口まで送った。メグさんは「そこまで面倒見るのかよ」と渋っていたが、これで良かったと思う。
「後は頑張って帰ります。ありがとうございました。それと、ルリカさんに会えてすっごく嬉しかったです! 頑張ってください!」
少女が黒い壁の向こうに消えていくのを見送り、振り向くと、メグさんが感心したような顔をこちらに向けていた。
「ルリカの姉さん、あんた人気者だとは聞いていたが、やるもんだ」
「やるもん……ですか?」
「あんたのおかげでスムーズに話が聞き出せた。会長があんたをパーティに引き入れた本当の理由が分かったぜ」
理由……私はワイバーンを倒した人物を探し出すための餌としてのみ期待されているものかと思っていたけど……私は私なりに二人の役に立てているらしい。それが、素直に嬉しかった。
「任せてください! これでも私、超人気配信者ですから!」
「お、調子が出てきたな。あんたずっと暗い顔で探索してたから、これでもう安心だな!」
メグさん、彼女は彼女なりに私のことを心配してくれていたのか。そう思うと彼女に対する印象が少し変わった。私は彼女たちに対し色眼鏡をかけていたのかもしれない。なんて思うのは、チョロすぎるだろうか。
そんな時、会長が「皆さん、少し良いですか?」と話す。なんだろうかと思っていたが、次に会長が話した言葉にハッとさせられた。
「先ほどの場所について考えていたのですが、彼女は投てき物によって助けられたと話していた割に、近くにそれらしき物は見つからなかった。これはどういうことでしょうか?」
確かに、少女は投てき物によって助けられ、彼女を助けた人物は姿を現さなかったはず……なら、近くには投てきされた物が落ちていなければおかしいんじゃないか? 気になる
「それに、ゴブリンたちの武器がないことも気になりますわ。このことについても、調べる必要があるでしょうね」




